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【総評】全日本ライフセービング選手権大会

3年ぶりの開催となった全日本ライフセービング選手権大会。
10月9.10日の2日間に片瀬西浜海岸(神奈川県藤沢市)で開催され、北は新潟県(柏崎LSC)から南は福岡県(新宮LSC)まで、43クラブ、554人が参加し、中学生から社会人までの幅広い年齢のライフセーバーたちが熱戦を繰り広げた。

それぞれの種目、すべてのライフセーバーがこの困難な状況の中、水辺の事故防止のために身体を鍛え、海に慣れ親しんできたことが伝わってきた。

ビーチスプリント

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女子は田中選手(鴨川LSC)、石黒選手(下田LSC)、爲田選手(西伊豆・松崎LSC)のインカレ勢がメダルの色をそのままに表彰台を独占。
ビーチが変わってもその強さを証明した。特に石黒選手は大学1年生であり、今後の活躍に大いに期待である。

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また、全日本ユースでも活躍した高校生の荒居選手(日体大荏原高校LSC)、中学生で初の決勝となった高梨選手(勝浦LSC)、惜しくも決勝には残ることができなかったが準決勝で良い走りを見せた中学生の関選手(勝浦LSC)と若い世代が目立っており今後に注目していきたい。
男子は柿崎選手(九十九里LSC)、和田選手(淡路島LSC)、堀江選手(勝浦LSC)などの社会人実力者が決勝に名を連ねたが、こちらもインカレの勢いそのままに田中選手(大磯LSC)が制した。

2kmビーチラン

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女子はインカレ3位の小谷選手(鴨川LSC)がインカレ覇者の林選手(湯河原LSC)を抑えて初優勝。小谷選手はビーチリレー優勝、スプリント5位と距離が変わっても強さを見せた。

男子は予選からキレのある走りを見せていた社会人の中川選手(西浜SLSC)とインカレチャンプ青柳選手(神津島LSC)の対決に注目。ラストスパートで前に出た青柳選手が制した。
青柳選手がゴールする際、後ろから追いかける形となった中川選手が苦しい終盤でありながらも走りながら拍手で相手を称えた。

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どんなに厳しい場面でも冷静に他者を称える姿はライフセーバーとして見習いたい。中川選手の初優勝に期待だ。

ビーチフラッグス

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女子はインカレチャンプの田中選手(鴨川LSC)が出場枠の都合で出場しないなか、実力者が決勝に名を連ねた。
ラスト3には2016年の全日本覇者・大西(旧姓:但野)選手(勝浦LSL)、全日本ユース王者・正木選手(日体大荏原高校LSC)、レジェンド・池谷(旧姓:遊佐)選手(柏崎LSC)。
各世代を代表する顔ぶれとなった。
結果、大西選手が5年ぶりのチャンピオンに返り咲いた。
高校生でありながら2位と実力を見せた正木選手は館山SLSCのジュニアチーム出身。
4位の前川選手(銚子LSC)も柏崎LSCジュニア出身であり、下部組織からの強化が結果として現れている。

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男子は和田選手(淡路島LSC)、堀江選手(勝浦LSC)の社会人勢にインカレ覇者の前川選手が挑む形となり、堀江選手が見事初優勝を遂げた。
堀江選手の地元勝浦の海岸には学生時代に何度も練習を行っていたことで知られる通称“堀江ロード”が存在する。
継続的な努力が実を結んだ。

サーフレース

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女子はインカレのリベンジを果たし、平井選手(九十九里LSC)が初優勝2017年三井選手、2018年成澤選手に続いて九十九里LSC勢が3連覇を達成した。
2位は岡部選手(鹿嶋LGT)、3位伊藤選手(和田浦LSC)と続いた。


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男子は國澤選手(和田浦LSC)がインカレとの2冠を達成。和田浦の荒波にもまれ、自信に満ちた姿が印象的だった。
2位の志賀海空選手(西浜SLSC)は11年ぶりの同種目高校生メダリストとなった。
2位〜4位はいずれもジュニア出身の西浜勢となり、スイム力は然ることながら、インアウトやボディサーフィンの技術、コース取りなど小さな頃から身につけた技が光った。

サーフスキーレース

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女子は名須川選手(茅ヶ崎LSC)が初優勝。
スタートがうまくいかなくても落ち着いてプランを立て直し、見事に栄冠を掴み取った。
決勝には茅ヶ崎LSCから3名のメンバーが出場しており、那須川選手を中心とした今後の活躍に期待がかかる。

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男子は西山選手(湯河原LSC)、出来谷選手(九十九里LSC)によるデッドヒート。僅差で西山選手に軍配。
1.2位の並びは2018年大会から3大会連続で同じとなった。

ボードレース

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女子は市川選手(湯河原LSC)が3連覇を達成。
3位には高校生の浜地選手(西浜SLSC)が入った。

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男子は激しいラン勝負となり、榎本選手(勝浦LSC)が僅差で相澤選手(下田LSC)に競り勝ち、全日本初メダルで初優勝。
冬場の地道な努力が結果として現れた。
また、4位には布方達海選手(西浜SLSC)が入り、中学生として過去最高の成績を残した。

オーシャンマン・ウーマン

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女子はなんと高校生1年生の浜地選手(西浜SLSC)が初優勝。
2010年に高校生2年生でサーフレースを制した坂本陸選手(西浜SLSC)の記録を塗り替え、史上最年少全日本王者となった。
ちなみに浜地選手と坂本選手は所属クラブの他に幼稚園、中学校、高校が同じであるなど多くの共通点がある。
常に笑顔で全身を使ってライフセービングを楽しむ浜地選手の今後が楽しみだ。

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男子は序盤から優位にレースを進めた西山選手(湯河原LSC)が2大会ぶり5度目の優勝を果たし、王者に返り咲いた。
多くの困難を乗り越え、2009年の初メダルから長きに渡って牽引する西山選手に敬意を表したい。
2位〜5位にはインカレ勢が入り、来年以降の若い世代の挑戦に注目したい。

チーム種目

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特に活躍が目立ったのが総合優勝を果たし、レスキューチューブレスキューとオーシャンマン・ウーマンリレーで男女アベック優勝を果たした湯河原LSCだ。
若手、ベテランがうまく融合し、チーム力の高さがうかがえた。

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一方、惜しくも総合2位となった西浜SLSCはボードレスキューで男女アベック優勝。
特に男子は高校生・志賀海空選手と中学生・布方達海選手であり、今後の連覇にも期待したい。

最後に


今季リスタートとなった競技会。
コロナ禍での開催は選手、運営、全ての関係者の方々の努力なしでは実現できなかったであろう。
心より全ての皆様に敬意を表したい。

選手は競技会でこそ感じられる喜びや悔しさを胸に今後も努力を続けていってくれるだろう。
それが全国の水辺の事故防止に繋がることを期待したい。

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