「まむし」のできるまで

このブログのタイトル「まむしのくらし」の元々の主人公は慈だ。

「まむし」こと慈と結婚した2013年3月。
その時点で、二人は札幌と南相馬と、バラバラに暮らしていたため、
今後どうやって結婚生活を築き上げていくのかが大きな課題だった。
これからの暮らしをどうするか考えていこうという趣旨で始めた黄色い一冊のノート。
黄色いノートに緑色のサインペンで最初に綴った言葉。
それが「まむしのくらし」というタイトルだった。

そもそも、なぜ慈が「まむし」になったのか。
それは結婚する前年、2012年の7月に遡る。
福島の復興関係の集まりで初めて会ってから約半年。
ようやく、打ち解けて話をするようになった頃だった。

彼女は福島であるプロジェクトを発足するために、
福島市でキックオフパーティを開催した。
南相馬にいた僕も、何かで関わるだろうとそのパーティに呼ばれていた。
南相馬から福島市までは車で1時間半の距離にある。
お酒を飲むつもりでいたおれは、会場近くにホテルを予約していた。

キックオフパーティは大盛り上がりで、
時計の針が日を跨いだ後に終了。
一通り挨拶をして回ると、そこに慈と女友達がいた。

「お疲れ」
と声をかけると、おれがお酒を飲んでいたことを知っていた彼女たちは、
この後どうすんの?と尋ねてきた。
「そこのホテルとってるよ。さすがに帰れないし。二人は?」

僕はなぜ、このとき「二人は?」と聞いてしまったんだろう。
みんなで二次会的なの行くならーというニュアンスのつもりだったのだが、
想像している反応とは違った。

「ホテル?行く行くー♪」

お前ら・・・誘ってねえぞ。
そう、ご存知の方も多いと思うが、慈は(その友人も)この頃から少しぶっ飛んでいた。
ま、いいかと一緒にホテルに連れて行ってしまう僕も僕だが、始めに言っておく。
下心的なものは一切ない。断じてない。
話し足りなかった、それだけだ。
同世代の彼女たちと、今後の未来について話す時間はとても楽しかった。

予約時に1人と言っていたはずだったが、なぜか部屋はツインだった。
しかし、こうして話をする今となってはありがたい。

福島の未来の話、自分たちの未来の話、恋話など、
2、3時間話をしただろうか。

そろそろ疲れた僕は、さっぱりしたいと思い、ちょっとシャワーを浴びに行った。
彼女たちはまだまだトークで盛り上がったいるようだった。
しかし、シャワーを浴びて出てくると、部屋の中は静寂に包まれていた。
もう遅いし、眠いよな。僕も寝よう、本当にツインで良かった、と思いながら部屋を見渡すと、
すぐに異変を察知した。

一人は左のベッドに。もう一人は右のベッドに寝ていたのだ。
おかしいだろ、コレは。

「おい!!!!きみたち、どっちかに寄りなさい」

「やだー。女の子同士で寝るなんてありえなーい」
「いいよ、どっちか来なよ」

おかしいだろ、それ。
・・・ふつふつと怒りが湧いたことは言うまでもない。

左の子は彼氏持ち。
右の子はおれの知っている人と付き合っている。
・・・さて、あなたならどうする??

僕は元々慈を含め、この子たちに「怖い」という感情を抱いていた。
というのも、人たらしのうまい二人だったからだ。
一緒に仕事をしたり、友人として未来について語ったりする分にはとても頼もしいパートナーだ。
しかし、異性としては信用ならない。
「DANGER」「DANGER」
僕の中のアラートがけたたましく鳴り響いていた。

おまえら二人とも毒を持っている!
噛まれたら即死だ!
そうだ、お前は「キングコブラ」、お前は「まむし」だ。
両方とも噛まれたら死んじゃうくらい強い毒を持っているんだ。

ベッドを占拠している二人にそう言ってやった。

「うふふ、キングコブラだって」

「まむしはお酒にもなるし、薬にもなるんだよ」

えーーーっと。。
多少悪意を持って伝えたあだ名のはずなんだが、
彼女たちのポジティブパワーには敵わなかったようだ。
そんな反応をされると正直ズッコケる。
怒りはどこかへ飛ばされてしまった。

「まむし」と「キングコブラ」
どちらのベッドへ行ったかはご想像にお任せしよう。

噛まれるもんか!
噛まれるもんか!
噛まれるもんか!
そう唱えながら眠りについた。

数ヶ月後・・・
僕は、まむしの毒は強力だったということを身を持って証明することになる。
見事にまむしの毒にやられた僕は、ひたすらに結婚まで押し続けたのだから。

そんなわけで、まむしと暮らすことになった僕の視点で、
まむしとこまむしとの愉快な日々を綴っていくのが「まむしのくらし」なのだ。

※この内容は2016/2/23に書いたものです

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