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富士山の忌まわしい記憶

※性的被害の描写がありますので、読まれる場合には自己責任でお願いします。

幼稚園のバスの時間まで。
いつもおままごとから逃げて隠れていた。

クラスに背が高くて優しい、けんちゃんという男の子がよくついてきた。

数人の小学生ぐらいから同い年の男の子達に追いかけられた。
とっさに逃げたけれど、けんちゃんが捕まってしまった。
助けに戻って私もつかまった。

富士山と呼ばれるドーム型の遊具の中。

私とけんちゃんは洋服を脱がされて、体じゅう泥だらけにされた。性器にも砂をいれられたりした。

私は泣かないで無表情で耐えた。

泣くと親に叱られる。
黙って無反応でいれば、いずれ彼らは飽きる。
魂は売らない。
怖くてパニックになりそうになりながらも、生き延びる術を必死で考えた。

けんちゃんは、
やめてー!いやだー!と泣いて騒いでいた。
奴らが面白がっている。

「けんちゃん、男でしょ。泣くなー!」
思わず叫んだ。

その後の記憶は欠落している。
バスにのって帰ると、迎えに来た母が泥だらけの私を見て、またヒステリックに怒り出した。

私は起きたことを伝えて
「でも、私は泣かなかったよ。」
と伝えた。喜ばなくても、せめて労を労ってくれるんじゃないかと。

返ってきたのはビンタだった。
「子供のくせに、体を男に触らせていい気になってるんじゃない。娼婦でもあるまいし恥ずかしい。誰にも言うんじゃない。」
こんな内容のことを言われた。

私が悪いの?

とっさに、けんちゃんのことが思い出された。

辛かったね
悲しかったね

私はけんちゃんを巻き込んでしまった罪悪感と、
さらに傷つけてしまった自分に、絶望した。

けんちゃん、ごめんね。
40年以上たっても自分を許せないでいる。

せめてけんちゃんの傷を誰か大人が癒してくれていることを祈るばかり。

奴らはなんでこんなことをしたんだろう。
奴らも、似たようなことを誰かにされていたのかな。
奴らも覚えているのかな。
自分の子供が同じことをされたら、どんな思いなのかな。

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