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夜とブランコ後編

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「桜井さん、僕のこと好きなんじゃ?」恋に疎い僕でも、気が付いてしまった。なぜなら、彼女の口調が柔らかすぎるからだ。「ちょっとおしゃべりしません?」や「ブランコに座りながら」といった言葉。これはもう、「あなたと一緒に居たいです先輩」という意味なのではと脳裏をよぎった。

勇気を出して、同僚にこのことを話してみた。そうすると同期のAさんは、「お前と桜井さん、会議の時距離が近かったよね」とか、「仲いいわよね、お似合いなんじゃない」と事務の人に茶化された。確かに彼女は、少し「おっちょこちょい」で可愛い所がある。例えば、僕が彼女にボールペンを貸すと、「書けないですけど」とよく言ってくる。その声といったら実に「棒読み」だ。僕が親指で、ノックを「カチカチ」とするとしっかり書ける。すかさず僕が「親指で押すのが大事だから」と言うと、「はーい」と軽い返事をする。これはあながち、彼女が「かまってほしい」という感情を持っているという裏付けとも言える。

そんなことを考えていると、オフィスには誰もいなくなった。深夜になった。すると桜井さんがコーヒを持って来た。「お疲れ様です~。どうぞ」と彼女の優しさに、恋のキューピッドが僕の心臓を狙ってきた。少し彼女と深夜コーヒーパーティーをして、少し熱いくらいだったコーヒーも心の緊張と同時に冷め、穏やかな空間になった。

すると彼女が、「先輩好き・・・」と小声だったけどしっかりと聞こえた。そして彼女が目を逸らした僕の顔を、正面に向かわせた。「もう一回ね・・・・」「好きなの・・ね」と彼女の告白は僕にとっては嬉しかった。僕も「桜井さんが僕のこと好きなのかなと思っててさ」と言うと、彼女は赤いハンカチをポケットから出した。そして「嬉しい、嬉しい」と大粒の涙を溢した。「付き合ってくれる?」とビニール袋みたいにぐしゃぐしゃになっている泣き顔になっている彼女が聞いてきた。もちろん僕は笑顔で「いいよ」と返した。

そうすると彼女が。「今夜は一緒に何か食べようよ」と話した。「じゃあもう遅いしあの公園でブランコに乗って食べようよ」と僕が提案すると、彼女が泣き止んで「うん!!」と元気よく言った。

コンビニでお酒とおつまみを買って公園に向かった。公園についてブランコに二人座ると彼女が、手を繋いだ。「今日から彼女なんだから~」と言って肩を叩いた。少し照れくさいが、今日から彼女なんだと感じた。少し寒いくらいだったけど、薄暗い電灯を頼りにポテトサラダや角煮などを開けた。彼女の柔らかい表情が暗くても伝わる。彼女がお酒を開けると「プシュ」と音を立てた。そして彼女が「こんな感じの儚い恋は嫌だからね、よろしく」と完璧に演出したような笑顔で話しかけてきた。僕が「今の気持ちがずっと持続すれば大丈夫」と返すと、「そうか・そうだよね」と彼女が返した・・・。

ふと空を見ると月の上でうさぎが餅つきしていた。「彼女がうさぎか餅つきしてる」と同じタイミングで言った。誰かと状況を共有するのって楽しい。

その夜は、前みたいにお互いの心配事や近況について会社ではできない話を沢山した。あれから5年後、僕らは「家族になった」。子供が一人生まれて、よく遊ぶ元気な男の子だ。










































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