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「変なおじさん♪」は、おまじないだったのか。

海散歩が心地よい季節になった。

8ヶ月になるわが家の柴犬を連れて、海へ行くのが楽しい。砂を掘って、波を噛んで、大暴れする犬。その様子を眺めながら深呼吸すると、スッキリする。

最近、海散歩にも増して気分が上がる行為を発見した。

「変なおじさん♪」ダンスである。

ある晩、キッチンで夕食の用意をしていると、夫がふいに、

「変なおじさん♪ ってどうやって踊るんだっけ?」

と声をかけてきた。私は手を拭いて、掌を二度叩いてから片手を斜め上に突き上げて、「こうじゃない?」とやって見せた。

そこへ、ちょうど風呂から上がってきた小4の息子が、裸のまま、その続きを踊り出した。両拳を胸の前でくるくる回して、その場で回転したので、私は、「ああ、そうだった」と一緒になって回った。息子はさらに腰を振って、両拳を前で二度、背中に回して二度合わせるという動きを続けた。

「なるほど」

夫も納得の声を上げ、その後、家族3人で最初から「変なおじさん♪」を歌いながら一連のダンスをした。

踊りながら、私は心の底からどんどん楽しくなるのを感じた。

3人で踊り終え、大爆笑した後、私は調理、夫はテレビ、息子は下着を身に着ける という、それぞれの行動に分かれた。

調理をしながら、私は薄ら笑いを浮かべていた。面白さの余韻は、とても長かった。「変なおじさん♪」、そのダンスを一生懸命やるだけで、あっという間にハイになり、幸福感に包まれる。不思議だなと思った。

ギャグというとワンフレーズで終わるものが多いけれど、「ハイサイおじさん」が元ネタになっている「変なおじさん♪」は歌、ダンスであり、「ダッフンダ」で締めるまで、好きなだけ繰り返して踊ることができる。

改めて自分の体を動かしてみると、とにかく、無条件に愉快だ。

そこで、これからは、何か嫌な思いに囚われたとき、このダンスをしよう、と思った。一人でも、二人でも、大勢でも、「変なおじさん♪」を踊れば、たいていのことは笑って乗り越えられる気がする。

いや、実際にやらないとしても、いざという時に、脳内でこのダンスを踊っている自分を想像すれば、なんとかなるのではないか。

志村けんさんが遺してくれたものは、とても大きい。「変なおじさん♪」はギャグを超えて、それは一種の、幸せのおまじないのように思える。

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