2023年、5月6月の観ておきたい作品ズ
春先は映画館に行くにもポカポカしていて良いですね。
とか言いつつ、実はわたしは4月の間の1ヶ月、“映画鬱”になっていました。
この映画鬱には二種類があって(とはいえこの言葉自体勝手に作り出しているので、何種類もあるかも知れないのだけど)、ポジティブな映画鬱とネガティブなそれがあるのです。
ちなみに今回は少しネガティブなタイプ。
ただ意外にもネガティブなやつは、対処方法もわかりやすい。
そもそもネガティブな映画鬱とは、
「あーもう映画とかしんどいわ、ちょい休も。飲み行こ。」
みたいな怠惰な日々の連続で、気がついたら月に二、三本しか映画館に行かなくなってしまうものを呼んでいる。年に1、2回起きる。
これを吹き飛ばすには「映画っていいな」と思える良作を観ること、これに限るのです。
そして今回はといえば、ありがとう、アリアッバシ。つまりは“聖地には蜘蛛が巣を張る“を観て、「あぁ、もっと映画観なくちゃな」と思うことができ、無事に映画鬱を抜け出すことができました。
そして抜け出した先で、見逃しそうになっている映画たちを見返して再度感じる
『今の映画は今こそ観なくては』
なのでした。
ちなみに前回、“今年は芸術への回帰が起きないかな〜“と言ってましたが、当たらずも外れず、といった感じで、フェイブルマンズはすごく良かったです。
初夏に向けて、少しシリアスな作品群が続きがちなシーズンではありますが、今回も向こう2ヶ月の注目作品をご紹介します。
3月、4月の「絶対に観にいく」2作品
月に一回、映画館に行く生活がしたい人向け
11歳の少女が父親と過ごした夏休みを思い返す物語を通して、父子の姿を描く一作。今月のA24制作作品ではこれがイチオシ。
そしてなんといっても主演、ポールメスカルの美しい演技を目に焼きつけたい。
上半期、ひいては今年度のハイライトになるか。
今年は2本もフランソワオゾン作品が楽しめます。監督が好きなので熱量高めです。
上半期イチ美しかった映画“すべてうまくいきますように“に続くオゾン監督最新作。聞く限りでは、よりアート性の強調された作品になっているとのこと。
『恋人との別れに傷心する映画監督と美少年のメロドラマが、舞台を一つの部屋に絞って展開される』というだけで面白そうだが、そこにフランソワオゾンのイズムが加わりより注目度の高い一作に。
ちなみに今作はファスビンダーの戯曲“ペトラフォンカントの苦い涙”を原作としており、フランソワオゾンとファスビンダーのコラボレーションは2000年発表の“焼け石に水”以来となる。この作品もまた室内劇かつクイアカルチャーを映し出す瞬間があることから、最近のフランソワオゾンというより、かつての彼の作家性が色濃く出た、非常に先鋭的な作品である可能性が高い。
劇場でその時がくれば、画面に映るもの全てに感性を委ねたいと思う。
個人的な期待として、主演を務めるドゥニ・メノーシェの存在は無視できない。予告でもすでに溢れ出しているが、スクリーンに映る彼のセクシーさには、今のうちからワクワクが止まらない。
5月、6月のおそらく観にいく、期待の作品リスト
月2〜4(年間で24〜50本)の新作を映画館で観たい人におすすめ。
※今月はトレイラー映像のクオリティが高いものが多かったです。作品性が高く抽象度も比例して高い=とっつきにくいものも多いので、一度トレイラーだけ観て「なんだこれは」となったものから劇場に観に行ってみるといいかもしれません。個人的に注目度の高いものは印をつけています。
絶対に観にいくと思います。ロバの映画です。トレイラーの時点で一種の快感に結びつくアート性が感じられ、音響効果を最大化する意味でも劇場視聴必須作品。
イタリア映画界から非常に詩的な印象の映画が一本公開。雄大な映像と、愛に溢れるストーリーの映画、らしい。これもまたトレイラーの時点でかなり興味を惹かれる。
ミアハンセンラブ監督最新作。女性を美しく、繊細に描く映画を撮る能力において最注目の監督だと思っている彼女の最新作の主演はレアセドゥ、と。これは観にいくしかない。トレイラーも期待を膨らませてくれる素敵な仕上がり。
“アドアストラ”のジェームズグレイ監督作品。そして今月の監督自伝作品枠となる。やはり続々と出てくる自伝作品。今作については、アンソニーホプキンスを久々にがっつり観られるところも嬉しい。舞台は80年代ニューヨークらしいが、自伝系の作品を観る時には、「ノスタルジーが先行して色々なものを軽視していないか」にまずは関心を持ってほしい。
(ベルファストがノスタルジーゴリ押しの代表作)
今回の作品群の中で文字通り群を抜いて作品性が高い一作。単語で並べるだけでも“権威主義とキャンセルカルチャー“、“性的マイノリティーとポストフェミニズム“、“芸術至上主義とポリコレ”(ここに対立形式の意図はなく、ただ比較に限る)と内容盛りだくさん。ストーリーと合わせて、頭フル回転の終始張り詰めた作品に。
アカデミー賞で話題になったこと、ケイトブランシェットの怪演ということにつき、もちろん観てほしくはあるが、要求されるカロリーが相当高くなっているので、なるべく体調を整えて観に行ってほしい。
全編ワンショットでヘイトクライムをテーマに撮影して作品化する、という時点でかなり狂気的。そんなことある?と素直に思う。制作は例の如く、プラムハウス。「またプラムハウスが変なの出してきたのか」といった感じ。トレイラーだけでも陰鬱な気持ちになる。観たくない(観る)
宮沢氷魚、発達障害、気鋭監督。情報は今のところそれだけで、トレイラーだとあまり惹かれない。宮沢氷魚を観ておきたいだけと言えばそうなので、少し批評的に観にいくかもしれない。
女性初の金熊賞受賞者であるハンガリーの名監督メーサーロシュの過去作レストア版。1975年に作成されていることを念頭に鑑賞したい。
“かもめ食堂”の荻上直子監督最新作。震災、介護、新興宗教、障害者差別と、かなりヘビーなテーマが同席している本作。光石研が相変わらず好きなので観たいところだが、少し重すぎる気もするのでその時の状況と相談したい。
北アイルランドのベルファストにはプロテスタントとカトリックを隔てていた「平和の壁」が今も存在する。そんな街で小学生相手に展開されている哲学の授業をドキュメンタリー形式で記録した作品。親にいつかなりたいタイプなので、しっかり観ておきたい。
“チタン”の気配がすると聞いてトレイラーを観たら、これはなかなかじゃあないか、となった一作。日本語版のよくわからない弾幕は置いておいて、演技未経験の主演と初鑑賞となる監督の作品というところも楽しみの一つ。
おそらく私は映画を通し幾度も感じてきた「男であること、男として生まれたこと」の罪悪感、贖罪でいっぱいになるのだろうと予想しつつも、やはり必ず観にいきたい作品。ちなみに、テーマは2010年に起きた宗教コミュニティ内での連続レイプ事件が背景になっており、それゆえに決してライトな作品にはならないだろう。観るか観ないかはその時の調子と相談して、なるべく丁寧に鑑賞してほしいと思う。
原作(作:田島列島)がこの上なく秀逸な漫画であった本作。トレイラーを観た感覚、そして監督前田哲の作品的に“海街Diary“の二の舞な気がして不安だがどうなるか。
レッツ、オスカーアイザック。レッツ、ポールシュナイダー。スコセッシはそんな関わっていない気もするが、上2人でもう十分楽しみ。トレイラーもかなりエロい。あーオスカーアイザックになりたい。
新ロシア派と反ロシア派の争う世界で生きる女性の物語。ウクライナ人の女性監督により撮られたという点も含め、まさに今観ておきたい一作。
パオロダヴィアーニ監督最新作、遺灰のロードムービー。映像美に酔いに行こう。
アカデミー主演女優賞にノミネートしたアンドレア・ライズボローが演じる、宝くじを当てるも酒に使い果たし、再び退廃的な生活へと戻りかける女性の再起の物語、らしい。監督のマイケルモリスは最近何をしていたっけと調べてみればBCSの最終シーズン監督&製作総指揮をしていた。
トレイラー映像全体もいいし、「Tell me I’m good」だけでこんな素敵なんだ。問答無用で観にいきたい。
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