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ウジ虫に占領された万年床と腐敗臭の中で:遺品整理の奮闘と苦悩

6月の恐怖:遺品整理の忘れられないエピソード

6月のある日、私たちは遺品整理の依頼を受けました。依頼者は70歳を過ぎたご婦人。彼女の兄が孤独死したのです。彼は一人暮らしをしていて、死後1か月以上もそのまま放置されていたとのこと。私たちは胸の中にわずかな不安を抱きながら現場へ向かいました。

到着すると、まず目に飛び込んできたのは、万年床の布団に這う大量の白いウジ虫たち。その数はあまりにも多く、背筋が凍る思いでした。夏の始まりで気温も上がり、ウジ虫が発生しやすい状況でした。部屋中に充満する強烈な腐敗臭は、マスクをしていても頭のてっぺんまで突き刺さるようで、空気を入れ替えようと窓を開けても全く効果がありませんでした。

まずはウジ虫が這う万年床を避け、他の作業を進めることにしました。部屋中に散らばる遺品を整理しながら、私たちはこの部屋に漂う絶望と悲しみを感じずにはいられませんでした。故人がどのような人生を歩んできたのか、その一端を垣間見たような気がしました。

最終日がやってきました。残すはウジ虫が這う万年床の処理のみ。どうすればいいのか思案しましたが、ようやく一つの方法を思いつきました。一人のスタッフに大きめのブルーシートを買ってきてもらい、そのシートで布団をぐるぐる巻きにしてウジ虫ごと廃棄することに決めたのです。

スタッフがブルーシートを持って戻ってきました。私たちは慎重に、しかし手早く万年床をブルーシートで包み込みました。ウジ虫が這う布団を触るのは、想像を絶するほどの不快感でしたが、なんとか作業を終えることができました。その時、一人のスタッフがつぶやきました。

「これ、人の死体みたいだな…」

その言葉に、私たちは一瞬言葉を失いました。布団を包んだブルーシートの姿が、まるで人の遺体を包んだかのように見えたからです。

この経験は、遺品整理の仕事が持つ過酷さと、故人やそのご家族の思いを尊重することの大切さを改めて教えてくれました。どんなに辛い状況でも、私たちは故人に敬意を払い、遺品を丁寧に整理することが求められます。このエピソードは、私たちの心に深く刻まれる忘れられない体験となりました。

こうして私たちは、1か月以上放置されていた孤独死の現場をきれいに整理し終えました。4日間にわたる辛く厳しい作業の末、私たちは故人に最後の敬意を払い、その部屋を後にしたのです。


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