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チェコと2人の老婆

その時私は、チェコのとある修道院に付属する、小さな博物館の2階にいた

展示を見るのに疲れて、開け放たれた窓辺に連なる無数の細い針のような防犯センサー(おそらく)を興味深く観察したあと、そのままその窓辺から、広くはない中庭に植えられた一本の林檎の木をぼんやり眺めていた

その後、センサーを興味深く見ていたのがいけなかったのか係のお婆さんに呼び止められ、現地の言葉で注意されてしまった

言葉は分からないけれど意味は何となく伝わったので、うんうんと聞いていたのだけれど、なかなか解放されず、何となく見つめていたそのお婆さんの薄い色の瞳から目が離せなくなった

瞳の奥には、強い悲しみが閉じ込められているような気がした


また別な日

地下鉄の駅を降りて、お目当てのパン屋さんに向かうための地上への出口を探していた所、とても陽気なお婆さんに出会って出口を教えてもらった

こちらも言葉は分からないのだけれど、気持ちの良い言葉をかけてくれて、最後まで手を振って上機嫌で歩き去っていったお婆さん

2人の対照的な姿がとても印象に残った


チェコの旅を振り返る時、まず1番にこの2人の老婆を思い出す




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