αM2018「絵と、 」vol.2 藤城嘘-作品ノートその5
昨年、浅草橋(馬喰町)にあるギャラリー、gallery αMにて、藤城嘘の個展が開催されていました。本展は2013年からの5年間の展示で作られた大作5点と、2018年に制作された新作4点によって構成されておりました。
さて、このnoteでは、会期終了までのあいだに出展作を1点ずつ紹介させていただく、というコンセプトでしたが、結局中途半端なところで止まってしまっていました…。改めまして、出展作を振り返りながら解説させていただきたいと思います。作品理解の補助になる部分があるなら嬉しく思います。
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《キャラクトロニカ》 2013
S100号 キャンバスにアクリル
(撮影:木奥恵三)
2013年2月、辻憲行氏主催の勉強会「芸術係数」にてトークイベント「ダストポップ−キャラクターを描くということ」が行われ、その際に告知用のビジュアルとしてドローイングを作成した。このドローイングは「アニメアイ」を核として抽象的な描線が集まることによってキャラクターの顔が浮き上がるような見た目をしている。
人間は生理的に、二つの点があるとそこに顔を見てしまうのはよく知られた話であるが、デフォルメされたキャラクターも同様。「アニメアイ」が二つ描かれているだけで、下に引かれた水平線は輪郭に見えてくるし、上に引かれたランダムな斜線は勝手に髪の毛として認識される。
《無題》2009
キャンバスに油彩
《キャラクトロニカ》は個展「芸術係数企画 藤城嘘個展『キャラクトロニカ』」の展示用に描かれたメインの大作である。「キャラクトロニカ」は「エレクトロニカ」をもじった造語で、「エレクトロニカ」が「エレクトロン=電子」によって成り立つように、「キャラクトロン="キャラクター子"」のようなものがあると仮定して作品が作られているというイメージだ。
《「カオス*ラウンジSIX イメージの他力本願」のためのペインティング》2014
パネルにアクリル
画面にただ目が浮かぶ、それだけでパネルの輪郭自体が顔の輪郭そのものにもなるように感じられるし、今度は目のほうが増殖することによって、再び脳内が無数の顔を見出してしまう。《キャラクトロニカ》は方形のキャンバスが多数のみえないグリッドや輪郭を想起させながらも、そこに描かれるキャラクターの図像はなかなか結びつかないという、壊れた曼荼羅のような作品なのである。
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『絵と、 』vol.2 藤城嘘
キュレーター:蔵屋美香(東京国立近代美術館 企画課長)
会場:http://gallery-alpham.com/
2018年6月16日(土)~8月10日(土)11:00~19:00
日月祝休 入場無料
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