20170512_藤城嘘イベント用

αM2018「絵と、 」vol.2 藤城嘘-作品ノートその3

浅草橋(馬喰町)にあるギャラリー、gallery αMにて、藤城嘘の個展が開催中!6月中旬から始まった展示も、のこり4日となりました。本展は2013年からの5年間の展示で作られた大作5点と、2018年に制作された新作4点によって構成されており、このように大作の構成で展示がされるのはまたと無い機会。是非ご高覧いただきたく思います。ギャラリーには「作家の本棚」として私の選書コーナーもありますし、ギャラリーの方が冷たいお茶も用意してくれています。酷暑が続きますが、会場に足を運び、ゆっくりご覧いただければと思います。
さて、このnoteでは、会期終了までのあいだに出展作を1点ずつ紹介させていただこうと思います。私は自作を脳内で客観的に分析・整理してしまうクセがあるのですが、良し悪しとはいえ作品理解の補助になる部分があるなら野暮と切り捨てることもないかな、と…wまた、この作品解説を機に個展を見に来ていただけたら(むろん二度三度と足を運んでいただけたら)嬉しく思います。

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《とある人類の超風景~DAY~》2012〜2013
キャンバスにアクリル
(撮影:木奥恵三)

人間が抵抗する術もない天候や天体のスペクタクルには小さい頃から興味があった。だが実際に災害として起こってしまうと笑えるはずもなく、私たちは天災や死者と向き合うことも余儀なくされる。
本作はそもそもカオス*ラウンジが東日本大震災の翌年に発行した、『GENDAI*ART vol.1』の特集のひとつ「「受け入れ」の風景--「とある人類の超風景」」のために描かれた水彩のドローイング作品が元になっている。

「受け入れ」というのは、「我々が一度美術の無力さを受け入れなくてはいけない」という意味でもあるし、日本が地政学上にも様々なものを他所から受け入れながら歴史を作り上げてきた、という事実に即してもいる。私は見開き2面に、中央に大きく太陽の描かれた"昼"の絵と、整然と星(月)が並ぶ"夜"の絵、2点のドローイングを掲載した。これらのドローイングを描いてから、私は昼と夜の絵をセットで幾度も描いている。現在も、たびたび太陽を象徴的に描き入れたり、背景の空が昼夜入り混じっていたりという絵を描くのだが、遡ると大きなきっかけはこのドローイングなのだ。

この絵を描くにあたり、まずはじめに「普遍的なイメージ」について考え、その一つは太陽であると考えた。人類がほぼ必ずお目にかかるひとつの正円。そして、同時に不可視の危険なエネルギー。しかし地球にはなくてはならないもの…。太陽という普遍的なモチーフは多くの両義性を抱えていて、あまりに王道モチーフであるがゆえに面白い。周囲は、いわゆる「風景画」のルールを無視し、地平線が幾重にも重なったり、世界中の建物が集まったり、画面下部がまた空になったりしている。これは横スクロールシューティングゲームのフィールドをも意識した。発表時、「キャラクターが焼き消えた風景」との感想をいくつかいただいたが、つまりこれは「太陽のキャラクター化」でもあるのだ。


※『GENDAI*ART vol.1』は個展会場、一部の美術系書店、五反田アトリエ、カオス*ラウンジの各種イベントなどで現在も購入いただけます。

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『絵と、 』vol.2 藤城嘘
キュレーター:蔵屋美香(東京国立近代美術館 企画課長)
会場:http://gallery-alpham.com/
2018年6月16日(土)~8月10日(土)11:00~19:00
日月祝休 入場無料

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