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αM2018「絵と、 」vol.2 藤城嘘-作品ノートその2

浅草橋(馬喰町)にあるギャラリー、gallery αMにて、藤城嘘の個展が開催中!6月中旬から始まった展示も、来週末には終わってしまいます。本展は2013年からの5年間の展示で作られた大作5点と、2018年に制作された新作4点によって構成されており、このように大作の構成で展示がされるのはまたと無い機会。是非ご高覧いただきたく思います。ギャラリーには「作家の本棚」として私の選書コーナーもありますし、ギャラリーの方が冷たいお茶も用意してくれています。酷暑が続きますが、会場に足を運び、ゆっくりご覧いただければと思います。
さて、このnoteでは、会期終了までのあいだに出展作を1点ずつ紹介させていただこうと思います。私は自作を脳内で客観的に分析・整理してしまうクセがあるのですが、良し悪しとはいえ作品理解の補助になる部分があるなら野暮と切り捨てることもないかな、と…wまた、この作品解説を機に個展を見に来ていただけたら(むろん二度三度と足を運んでいただけたら)嬉しく思います。

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《バベルのメン》2017年 ※画像中央
M150号キャンバスにアクリル、コラージュなど
(撮影:水津拓海(rhythmsift))

漫画やアニメを前提に「キャラクター」というと、「美少女キャラクター」がすぐに思い浮かぶような偏りが、サブカルチャーに馴染みある人にはあるかもしれない。しかしむろんあらゆる創作物には老若男女そして人外の「キャラクター」がいるし、「キャラクター」を意識して作品を作るならそこに存在する差異は無視すべきでない。では、たとえばいわゆる「美少年キャラクター」表現の特筆すべき特徴とは?
意識的にアニメの"イケメン"を観察しドローングしてみたのは2013年頃であった。そのころ話題となっていたのは2011年にアニメ化した『うたの☆プリンスさまっ♪』や京都アニメーション製作の『FREE!』など。登場人物を素直に模写してみて気づいたのは、ちょっと違和感を感じる程度に長い鼻筋。鼻の設定を下め下めにしても、"イケメン"は成り立っている。つまり、垂直に長く伸びるほどに"イケメン"度合いは増していく?そしてそこから逆説的に導かれるのは、大きな眼が横並びになっている"美少女"の可愛さは、水平のデフォルメによって成り立っているのではないか?これがキャラクター水平垂直の法則である…(謎)。

《ア・ワールド・ピクチュア》 2013年 ※パネル三枚組のうち一つ
パネルにアクリル

ただここで真面目に断っておけば、意図的にキャラクターの身体パーツを極端にデフォルメしたネタ的な表現は以前から存在する。"イケメン"の顔の長さで言えば、初期pixivで熱狂的なファンを生んだ幻想夜曲氏、キャラクターの特徴的な作画をネタゲーム化した『学園ハンサム』。あるいは、人物の顔と身体のバランスに極限まで差をつけてイラストレートする、twitterで大人気のsattou氏。地獄のミサワ氏まで例を挙げるならば、それはもはやシンプソンズのようなカートゥーンの歴史にも繋がっていくかもしれない。ポップカルチャーに例を探ればキリがないのだが、しかしそもそもが、縦に伸びるような造形美は美術や工芸の世界には長きにわたって存在してきている。ジャコメッティほど極端でなくとも、モディリアニやブランクーシはその垂直美が特徴的であるし、近代美術の発展に影響を与えたであろう民族美術(アフリカやオセアニアの面、モアイ像やトーテムポール…)などなど…。このような面長の男性造形に美を見いだすのは、我々が西洋近代の美的感覚を通過したからこそなのかもしれない。。

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『絵と、 』vol.2 藤城嘘
キュレーター:蔵屋美香(東京国立近代美術館 企画課長)
会場:http://gallery-alpham.com/
2018年6月16日(土)~8月10日(土)11:00~19:00
日月祝休 入場無料

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