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αM2018「絵と、 」vol.2 藤城嘘-作品ノートその4

浅草橋(馬喰町)にあるギャラリー、gallery αMにて、藤城嘘の個展が開催中!6月中旬から始まった展示も、のこり4日となりました。本展は2013年からの5年間の展示で作られた大作5点と、2018年に制作された新作4点によって構成されており、このように大作の構成で展示がされるのはまたと無い機会。是非ご高覧いただきたく思います。ギャラリーには「作家の本棚」として私の選書コーナーもありますし、ギャラリーの方が冷たいお茶も用意してくれています。酷暑が続きますが、会場に足を運び、ゆっくりご覧いただければと思います。
さて、このnoteでは、会期終了までのあいだに出展作を1点ずつ紹介させていただこうと思います。私は自作を脳内で客観的に分析・整理してしまうクセがあるのですが、良し悪しとはいえ作品理解の補助になる部分があるなら野暮と切り捨てることもないかな、と…wまた、この作品解説を機に個展を見に来ていただけたら(むろん二度三度と足を運んでいただけたら)嬉しく思います。

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《Time / Kirara / Charat》 2015
M120号 キャンバスにアクリル
(撮影:水津拓海(rhythmsift))

本作は卒業制作であり、前回紹介した「昼」と「夜」のシリーズのうちの「夜」のシリーズ作品のひとつである。「昼」シリーズの延長にあたる《此方、来迎》も同時期に制作された。

《此方、来迎》2014
F100号 キャンバスにアクリル
(撮影:水津拓海(rhythmsift))

普遍的なモチーフについて思考した《とある人類の超風景-DAY-》に対し、「夜」の絵は個人的な体験に基づく。それは東日本大震災直後の初夏、津波で被災した地域のど真ん中に残った建物に、取材で宿泊させてもらう機会を得たときの話だ。津波の被害を受けた直後の土地は、動物も昆虫もみな逃げ出すか生き絶え、夜になると耳をつん裂くような無音が支配する。幾度か被災地を取材させていただいた中で、特に印象に残っていた体験のひとつだった。

《とある人類の超風景-NIGHT-》2013
P120号 キャンバスにアクリル

まったく生き物がいなくなり、とても寂しい世界で、それでも何か超越的力が、神仏のようなものがそばにいてほしい、そばにいることになってほしい。私は「信仰」のようなものはこういった感情から生まれるのかもしれない、と考えたりした。それは現代の我々にとって、キャラクターの「いなさ」について考える時にも通じるかもしれない。
太陽の絵に対し、夜の絵では月とも星ともとれる抽象化された円が4×12個並んでいる。これは色々な数で割り切れたり、色々なユニットで取り出すことが可能な数でもあるし、4週間×12ヶ月というようにカレンダーのような機械的な図表に見えるような数でもある。

《ア・ワールド・ピクチュア》 2013 ※パネル三枚組のうち一つ
パネルにアクリル

2012〜2013年の間に描かれはじめた「夜」のシリーズの絵は、《Time / Kirara / Charat》でキャラクターの眼を手に入れ、こちらをじっと見つめるようになった。タイトルは雑誌『まんがタイムきららCarat』とアニメ『Di・Gi・Charat』に因む。サブカルチャーのポップなビジュアルと、絵画の呪術的な神秘性を混在させた、ひとつの集大成的な作品である。

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『絵と、 』vol.2 藤城嘘
キュレーター:蔵屋美香(東京国立近代美術館 企画課長)
会場:http://gallery-alpham.com/
2018年6月16日(土)~8月10日(土)11:00~19:00
日月祝休 入場無料

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