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フリーレンの「くだらなさ(いい意味)」よいつまでも

フリーレンがおもしろかった。今季のアニメはつぶぞろい、個人的にベストは、『薬屋のひとりごと』『ダンジョン飯』そして『葬送のフリーレン』。

ネタバレしないためにレビューとかぜんぜん読んでなかったのですが、一期がおわったのでレビューや評価をちょこちょこと見ています。おおむね好評価のようですね。低評価もちょこちょこあるっぽい。なるほど、なるほど、低評価はだいたい「漫画の良さにはかなわない」「ディテールがなってない」この二つに大別できる感じですかねー。

そんなこんなで、世界の普通からさんの好きがだだもれのレビューを読んでいたら、わたしも好きなシーンをただただ語る記事を書きたくなってしまいましたww


※若干のネタバレあり。要注意。

アニメ『葬送のフリーレン』公式サイトより キャラクター紹介

漫画 vs アニメ

漫画の原作にはかなわないって評判は、アニメ放送の前(金曜ロードショー放映前後)に言われていたものですが、これむしろ漫画に興味をひかれましたね。漫画も読んでみようかなww

漫画ってわざわざ本屋で探して買ってきて、さあ読むぞ!という体制で能動的に読みに行くので、「キャラクターになりきって」没入させる。その点、アニメなどテレビ放映っていうのはそれに比べると受け身でシーンが流れてしまう。だから、より「自分ごと」として視聴者の共感へ誘導する見せ方を多様するんだそうです。

漫画の方がいいという意見がある一方で、逆にアニメ版は漫画にない視聴者の感覚をそこに投影する視点が絶妙だなんて評価している人もいて、なるほど、漫画とは別の世界線で傑作なんだと改めて思ったりもしています。特にこの物語は、「自分ごと」として味わうことがとても重要だとわたしは思うから。

ほんとうに、くだらない

フリーレンのテーマでわたしが好きなのは、「くだらない」こと。フリーレンのまわりでなんだか一生懸命生きているようにみえる人だったり趣味だったりの理由はたいてい「くだらない」ことなんです。。。フリーレンの魔法を収集する理由も、フランメの好きな魔法も、ヴィアベルやデンケンが一級魔法使いを目指す理由も、そうそう、ヒンメルが目指した旅の姿もね。

アイゼンは辛く苦しい旅がしたいのかい?僕はね、終わった後にくだらなかったって、笑いとばせるような楽しい旅がしたいんだ。(ヒンメル)

みんなくだらない。でもさ、そのくだらないことに人は人生をかけたり命をかけたりできる。魔王を倒すという輝かしい業績のモチベーションですらくだらないことに支えられていて、それが強大な目的を達成した後にも、退屈な時代にも、むしろ残り火のようにずっと心に居座り続ける。そしてそのくだらない出来事の積み重ねが偶然か必然か人と人をつなげていく。

名前も、顔も、声も、思い出せもしないそんなもののために

フォル爺が村を守る理由は、顔も、声もわすれてしまったひととの約束だった。あのヴィアベルですら、顔も、名前すら思い出せない思い人とのなんでもない約束が理由だった。このまったく「くだらない」ものがもたらす核心はなんなのか。。。と、その話をする前に、逆に、くだりもの(昔は京都から江戸に下ってきたものは価値あるものとして「下りもの」、下ってこなかったものは粗悪品として「下らない」と言ったのだそう。)が、なんだったかというなら、魔王を倒した功績であったり、ゼーリエから授与された魔法であったり、それによって与えられた地位や特権、そういった「名利」でしょうか。こういったものに価値を求める姿勢は、現代社会でわたしたちがもっている価値観にとてもよく似ています。

それに対して、物語全体としてキャラクターをモチベートしている「くだらない」ものの正体は何か、それはどこからくるのか、、、。それは人ですよね。人とのつながりや関係性です。富でも地位でもない、外見でもない、名声でもない、、、それが、戦いから平和の時代を切り開くものの正体。そして、全てが終わった後にもずっと残り続けるもの。

戦いを追い求めるあなたには魔王を殺せない。私達じゃ無理なんだよ。だってさ師匠、平和な時代に生きる自分の姿が想像できねぇだろ?(フランメ)

魔法とは人の創造力。イメージできないものは実現しない。成功だ実績だといいながら、常に強者であり続けなければならない呪縛からわたしたちも逃れられずにいる。そんな現代人に向けられた言葉のようにも聞こえます。

淡い夢のよう

これが長寿エルフの視点で、まるでひとりのキャラクタの人生すべてを包み込むように展開される。多くの人は7、80年ほどの生涯を精一杯生きて、その年月のなかでさまざまな功績を上げる。その限られた寿命の中で、ゾルトラークはたった80年で解析され一般攻撃魔法と呼ばれるまでになった。魔王を倒すという人類史上最大の功績ですらほんの10年の旅の中で成し遂げられている。それらの壮大な功績も、より大きな数千年の人類史あるいは地球から俯瞰すればとるにたりないこと。

この惑星のような視点をフリーレンの永く続く人生から想起させてくれる。すべての功績ですら、この俯瞰でみればとるにたりない、くだらないこと。それでも、そのたった数年の出来事が、そのたった一瞬の出会いが、ときとして人を変える。

人とのつながりって、そういうもの。

面白いものだな。その百分の一がおまえを変えたんだ。(アイゼン)

この物語は人生で起こるさまざまな出来事がまるで、昨日の一夜にみた夢のように儚く淡く描かれる。

印象派 vs 写実派

フリーレンは印象派のモネのような作品だとわたしはぼんやり思っています。印象派っていうのは細部を丁寧に描写するよりも、色彩や光の印象を大胆に表現することで、その情景をみるものに直接的な「印象」として伝えようとしたものです。

クロード・モネ「ジヴェルニーのモネの庭」

フリーレンって作画がめちゃくちゃ完成度が高い(アニメも漫画も)ので、ついつい忘れてしまいがちというか、ディテールにこだわった写実的な作品だと誤解されがちのように思いますが、これは決してリアリティーを求めた作品じゃない。わたしの中ではまるで印象派の絵画のような物語です。

作画がすごい!ってのはその通りで、わたしも絵が大好きですけども、その画力の裏に印象派的な要素をふんだんに取り入れリアルに表現してみせているところが最も萌えなポイントなのですよ!!ふっふーーん(フリーレン風)

ディテールがダメとか時代設定が甘い言う意見もわかります。中世風なのにガラスがあったりね、金属製のフォークがあったり、物語の展開が唐突だったりさ、、、それ黒澤映画だったらわたしも突っ込みますよ?でも、これは例えるなら1000年に渡る永き夢なんです。それを朝起きたまどろみの中で紡いでいく物語です。顔も名前も思い出せない「あの人」を追い求めている印象派作品。わたしはこの圧倒的な作画の完成度の中で心に刻まれる、この絶妙な「印象」具合がたまらなく好きなのです。

声優さんのつかいどころ

アニメ作品はやっぱり声優のつかいどころもみどころですよねぇ。わたしはあまり声優さんには詳しくないのですが、主役のフリーレンはあのアーニャ(『SPY×FAMILY』)の声優さんだとか、ヒンメルは爆豪(『僕のヒーローアカデミア』)だとか、今更ながらに知りました。キャラクターの印象とまったく違う配役。とても意外な声優さんの使い所に、あとから(今頃になって)じわじわとうーーんと唸りながら関心しております。

個人的にいちばんの萌えシーンは、魔族リュグナーがフリーレンの名前を思い出した場面。なぜタイトルが「葬送のフリーレン」なのか明かされるシーンです。このセリフを諏訪部さんに言わせたことが最高すねー。

そうか、思い出した。フリーレンだ。人類のゾルトラークの研究解析に大きく貢献し、歴史上で最も多くの魔族を葬り去った魔法使い。

――― 葬送のフリーレン

私の嫌いな天才だ。(リュグナー)

諏訪部さんといえば、最強のライバルとかイケてるラスボス声。最近で言えば『呪術廻戦』の宿儺でしょうか。アウラの部下役で諏訪部さん使っちゃうんだ?って思いましたが、もうこのシーンにやられました。。。ここの「葬送のフリーレン」のひとことを言わせるためだけに諏訪部さんにしたのじゃないかと思えてしまう配役。とても印象的なセリフでした。

心にしみる音楽:エバン・コール

テーマ曲がmiletやYOASOBIが担当していることで、霞んでしまいがちですが、アニメ版フリーレンの功労者のひとりは間違いなくエバン・コールさんでしょう。と、わたしは思っています。フリーレンの劇中曲を担当している作曲家です。

エバン・コールさんっていえば、最近だとNHK大河『鎌倉殿の13人』の音楽を担当したことで話題になりましたね。そして忘れてはいけないのが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の音楽担当をしているのも彼です。わたしは(というか、きっとすでに多くの人が)思ってますよ、未来の久石譲だって。日本のアニメ界だけでなく映画界で間違いなく今後なくてはならない存在になると思います。

アメリカでバークリー音楽大学を卒業した後、ハリウッドに行って映画音楽をやるか悩んだのですが、もともと好きだった日本のアニメやゲームはジャンルも豊富なので、成功できれば幅広く楽曲が作れるかなと思ったので、観光ビザで来ました。ただ3ヶ月間以内に仕事を見つけないと観光ビザは切れてしまうので、音楽の仕事にすぐつけなければ、英語教師をやろうと思っていました。

エバン・コール インタビュー記事

観光ビザで来日したとか、ほんとまぢ日本のアニメに関わってくれてありがとう!!

まとめると、魔法使いが魔王討伐後の世界をうろつく話、、、でしかないのだけど、この物語に壮大なテーマと、「くだらない」笑いと、取るに足りないけど忘れられない「印象」を残してくれたのは、間違いなくこの音楽によるところが絶大だと思います。


あ、好きなシーンを語ろうと思って書き始めたのに全然違う内容になってしまったw

大丈夫だよ、ヒンメル。世界はちゃんと変わってる。(フリーレン)

りなる



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