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灰色のコートを脱ぐとき(#わたしにできること)

わたしにできること、ってなんだろう?

静けさの残る朝モヤのなか、なにもない空を見上げながら、そんなことを想う。

みんな自分に「できることをしよう」って叫ぶ。なんでも構わないから、はじめの一歩から踏み出したらいい、って。一歩、そして一歩。。。まずは行動しなければはじまらない。それは、たぶん間違っていない。人生は関係性によって形作られる。だから行動することでのみ、その関係性に化学変化を起こせるんだ。

その傍ら、せわしなく溢れるように行動する人たちに、いたたまれないほどの怖さを覚えたりもする。ふとした瞬間、社会にありふれたその一歩が、なんだかとっても殺伐とした空気に向かっているように感じられるから。

ふとした瞬間 ーーー 温いコタツを囲む団らんの真ん中に、ちょこりと座る赤いミカン。真っ青な空をほわりと泳ぐ、たったひとつの浮雲。雨の日の川面にぽてぽてと揺れ動く、黄色い落ち葉。

いつものありふれた情景が、特別にみえた瞬間にやってくる生への実感のようなもの。その感覚も、たぶん間違いじゃない。

そこから垣間見る人々の様子は、どこかみんな灰色のコートに身を包み徘徊している亡霊のようなんだ。

行動…行動…じぶんにできること…。今にも、うめき声が聞こえてきそう。動いてないと死んでしまう…何かしていないと不安に駆られて押し潰されそうになる…そう信じてやまないのは、きっと心が亡霊になってしまっているから。

その一歩先に何を望むの?

レジャーをめいっぱい楽しむためとガイドブックをいっぱいに抱えて身動きがとれない亡霊。将来のためと講習会、勉強会、塾、資格研修が生業になっている亡霊。身を守るためと両腰に殺戮兵器をぶら下げている亡霊。

動いていなくても死にはしないんだよ。で、止まってみたら、ほとんどの人は、むしろ今まで死んでいたんだってことに気づくんだ。

立ち止まったその瞬間にみえるありふれた特別が、きっとあなたの生を色彩の中に呼び戻してくれる。

あなたが「しなければならない」と思っていることのほとんどは、亡霊がみる夢の中にあるんだ。そんな曖昧さを拠り所にして、あなたは生への渇望に執着する。

あなたは生まれるべくして生まれていて、在るべくして存在してよいんだ。もうそれだけで、この瞬間も、何にも寄らない自然の中に、あなたが想像しうる全てを精一杯やりぬいているんだよ。

りなる




#わたしにできること #第2回THE_NEW_COOL_NOTER賞  

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