新型コロナワクチンについてファイザーに聞いてみた

新型コロナウイルスのワクチンに関して、ワクチンを打った人の呼気からコロナに感染する可能性がある?と書いてあるネット記事を見つけました。少なくともmRNAワクチンは生ワクチンや不活化ワクチンと違って直接コロナウイルスを入れる訳ではないので、そんなアホな?と思ってファイザーの文書を呼んでみたのですが、確かに妊娠中の曝露の項目に、ワクチンを打った人と呼吸もしくは接触した後に妊娠が発覚した場合は、ファイザーに報告する義務がある。との文章を見つけたため、驚いてファイザーに質問してみました。ファイザー社との計3回のやり取りで、とても親切に回答していただきましたのでここで共有したいと思います。

私自身は一般臨床医で、ワクチン摂取はアレルギーの観点から行っておりませんが、摂取は任意ですので受ける人も受けない人も自由だと言う立場です。ただワクチンに反対している方が、ワクチンを打った人からコロナに感染する可能性があるため、親やきょうだいに打って欲しくないと説得することには違和感があります。親もきょうだいも自分の意思で打ったり打たなかったりする訳で、それを強制することは家族であってもおかしいと思うからです。では本当に「ワクチンを打った人からコロナに感染する可能性がある」のかどうか、ファイザーさんに聞いてみました。

まず、元となったファイザーの治験実施計画書はこちらです。https://media.tghn.org/medialibrary/2020/11/C4591001_Clinical_Protocol_Nov2020_Pfizer_BioNTech.pdf#page67

ネットで話題となっているのは、この計画書のp67の8.3.の有害事象の項目です。この部分をファイザー社に直接聞きました。以下はそのやり取りです。

り) (ファイザーのHPの質問ページから医師として質問)p65の8.3の有害事象の項目についてですが、英語がとても難しいため、このセクションの日本語訳をいただけないでしょうか?また今回の新型コロナウイルスワクチン接種者の汗や呼吸からスパイクタンパク質が放出される可能性はあり得るのでしょうか?またそれによって周りの人を感染させる可能性はあり得るのでしょうか?
ファイザーからの回答) 2021年5月10日時点の文献検索および社内資料の調査の結果、第三者への抗原暴露に関する情報は確認できませんでした(調査範囲:申請時資料、医中誌、MEDLINE、EMBASE)。なお、治験のプロトコルの8.3.5(「Exposure During Pregnancy」の項)の記載内容は、妊娠時暴露についての弊社安全性部門への報告要件の内容です。
この、妊娠時の曝露に関する報告基準は、本剤特有ではなく、市販後の製品、および他社品を含む他の製品と同様でございます(参考;https://www.pmda.go.jp/files/000143457.pdf)。
また、弊社として、接種後の人に近づいてはいけないという旨の注意喚起は行っておりません。
<参考:治験のプロトコル*の8.3.5(「Exposure During Pregnancy」の項)の内容>
•治験参加中または治験を中止した後の男性被験者により女性パートナーが受胎前またはその前後に曝露した場合
•環境曝露のため曝露中または治験介入後に妊娠が判明した場合。以下は妊娠時の環境曝露例である。
・女性の家族または医療従事者が、(女性が)吸入または皮膚接触によりスタディー介入を受けた後、妊娠していることを報告する。
・吸入または皮膚への接触によってスタディーに曝露した男性の家族または医療提供者が、受胎前または受胎時前後に女性パートナーを曝露する。

下の4つの文章は治験実施計画書の8.3.5「妊娠中の暴露」のセクションの日本語訳だが、とてつもなく難しい日本語だ。そこで続けて再度質問しました。

り) こちらの文章ですが、日本語としても理解が難しいです。追加での質問をお願いします。・治験参加中=ワクチン摂取と考えてよろしいでしょうか?・環境曝露のため曝露中とは一体どういった状態のことでしょうか?・スタディー介入を受けるとはどういった状態のことでしょうか?
ファイザーからの回答)

さて、このたび、お問い合わせいただきました、コミナティの海外第I/II/III相試験 (C4591001 試験)の治験プロトコル 8.3.5(「Exposure During Pregnancy(妊娠時 暴露についての弊社安全性部門への報告要件)」の項)の解釈に関する 3 点のご質問に つきまして以下に回答させていただきます。なお、当該妊娠時の曝露に関する報告基準 は、コミナティ特有ではなく、市販後の製品、および他社品を含む他の製品と同様でご ざいます。
※参考;https://www.pmda.go.jp/files/000143457.pdf
・「治験参加中」とは、治験に参加している期間(観察期間も含めて)中と考えられ ます。今回のコミナティの治験に関しては、ご認識のとおり、海外第I/II/III相 試験(C4591001 試験)に参加し、コミナティの接種を受けて観察期間(今回の治 験の場合には最終接種後 最長 6 カ月間)を終了するまでの期間を指すと考えられ ます。
・「環境曝露」の例として「女性の家族または医療従事者が、(女性が)吸入または 皮膚接触によりスタディー介入を受ける」、「吸入または皮膚への接触によって、 スタディーに曝露した男性の家族または医療提供者が、受胎前または受胎時前後に 女性パートナーを曝露する」と記載されており、生活の中で治験薬に曝露(今回の 治験の場合にはコミナティへ関与)する可能性がある場合を指すと考えられます。
・ 「study intervention(スタディー介入)」とは、治験への関与全般を指します。 当該文章(A female family member or healthcare provider reports that she is pregnant after having been exposed to the study intervention by inhalation or skin contact.)においては、“女性の家族または医療従事者が、(女性が)吸入ま たは皮膚接触によりスタディー介入(治験への関与、今回の治験の場合にはコミナ ティへの関与)を受けた後、妊娠していることを報告する。”と訳せると考えられ ます。

回答までは2、3日で返ってきました。しかしまたもや日本語が難しい。そこで、さらに追加で質問。

り) 返信ありがとうございます。                     環境曝露→生活の中で治療薬へ曝露=コミナティへ関与、スタディ介入= コミナティへ関与、「コミナティへ関与」というのは、「実際にコミナティを予防接種する」以外にも「吸入または皮膚への接触によって、生活の中で治療薬に暴露する」という意味でよろしいでしょうか?つまり、コミナティを予防接種した人の家族が、吸入または皮膚への接触によって、生活の中で治療薬に暴露して、その後に妊娠が発覚した場合は、ファイザー社に届け出る必要があるという事でしょうか?すべての薬剤においてこちらの文章が使われていると言うことは、治験中の薬剤ではすべて、上記状態になった場合届出が必要ということでしょうか?

数日後にファイザーから返信が来ました。

さて、このたび、お問い合わせいただきました、コミナティの海外第I/II/III相試験(C4591001 試験)の治験プロトコル 8.3.5(「Exposure During Pregnancy(妊娠時暴露についての弊社安全性部門への報告要件)」の項)の解釈に関する追加のご質問につきまして以下に回答させていただきます。
・「コミナティへ関与」とは、「実際にコミナティを接種する」以外にも「吸入または皮膚への接触によって、生活の中で治療薬に曝露(今回の治験の場合にはコミナティへ関与)する(=環境曝露)」ことも含む、という先生のご理解のとおりです。
「コミナティを予防接種した人の家族が、吸入または皮膚への接触によって、生活の中で治療薬に曝露して、その後に妊娠が発覚した場合は、ファイザーの安全性部門に報告しなければならない」とのご理解にも間違いございません。
・ 他社の治験薬のプロトコル上の規定についてご提供可能な情報はございませんが、例えば、弊社のワクチン“プレベナー13 水性懸濁注”の 65 歳以上の成人を対象としたプラセボ対照二重盲検試験(CAPiTA 試験)のプロトコル中 23.6.「ExposureDuring Pregnancy」の項(全 300 ページ中 73, 74 参照)にも、また、弊社の経口剤“ゼルヤンツ錠”の潰瘍性大腸炎患者を対象とした国際共同治験(OCTAVE 試験)のプロトコル中 8.9.「Exposure During Pregnancy」の項(全 932 ページ中 69, 70 参照)にも、弊社の注射剤“エンブレル皮下注”の関節リウマチ患者を対象とした試験(PRIZE 試験)のプロトコル中 25.9.「Exposure During Pregnancy」の項(全 443 ページ中 227, 228 参照)にも、妊娠中の環境曝露に関する同様の記載がございます。
この度は先生方にご心配をおかけし申し訳ございません。弊社としては今後も安全性情報を適切に収集し、お知らせすべきことが生じた際には速やかにお伝えするよう努めてまいります。

ファイザー社とのやり取りは以上です。返信も丁寧かつ素早い対応で好感が持てました。まとめると、

・ファイザーワクチンの治験実施計画書の有害事象の項目にはコミナティを予防接種した人の家族が、吸入または皮膚への接触によって、生活の中で治療薬に曝露して、その後に妊娠が発覚した場合は、ファイザーの安全性部門に報告しなければならないと言う旨の文章が書かれている。

・妊娠中の環境曝露に関する同様の記載はファイザー社の他の薬剤の治験実施計画書にも書かれている。

・2021年5月10日時点の文献検索および社内資料の調査の結果、第三者への抗原暴露に関する情報は確認できなかった。

以上になります。このやり取りからわかるのは、ワクチンを打った人からコロナに感染する可能性はほぼないと考えます。ファイザーの安全性部門に報告しなければならないと言う記載がある、と言う理由でワクチン摂取者からコロナに感染する可能性がある。と言うのは明らかなミスリードだと思います。

ワクチン摂取に関する考え方は人それぞれの人生観、死生観に関わるため、打つも打たないもどちらも強要はしてはいけないと思います。私自身は2020年に超過死亡が減った日本において、そもそもワクチンを打ってまで予防する必要があるのか?と言う疑問はあります。このファイザー社とのやり取りが少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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