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真夏のライブ三本勝負(3)花譜 3rd ONE-MAN LIVE 不可解参(狂)

こんにちは、liccaです。日記を書きます。

「真瀬立夏と2022真夏のライブ三本勝負」について


こちらシリーズタイトルの正式名称で、当記事はその3本目です。

一週間周期で襲い来る(どちらかといえば襲い掛かるのは私の方かもしれません)現地ライブ三本勝負、無事に乗り切ることが出来たら日記を書こうと思っていました。そして乗り切ったので書いております。
日記として3本まとめて1記事にする予定でしたが、それぞれ個別記事とさせていただきました。ジャンルはバラバラですが、全3記事しかありませんので気に入った方はシリーズからぜひご覧ください。

本文は次から始まります。


(その3)花譜 3rd ONE-MAN LIVE 不可解参(狂)


三本勝負最後の大舞台は8月24日、日本武道館にて開催された、バーチャルアーティスト初の武道館でのワンマンライブ。
チケット販売のスケジュール(1本目の記事参照)的に、もしも“KIRBY 30TH MUSIC FEST.”のチケットが抽選段階で当たっていたのなら申し込まなかったかもしれないライブでした。
抽選に外れ続け、現地観覧不可の文字列がチラつき始めた頃に告知された開催。
外れたらそれはそれでもっと熱心なファンの元にチケットが行くのだからいい、けれどもし当たったのならきっと忘れられない体験になるだろうな……」 なんてダメ元で申し込んだ先行抽選に、まさかの一発当選だったのでその時居たゲームセンターで叫びかけました。

初のVtuber・Vsingerライブ現地参加、そして初の武道館入場を、この不可解に捧げたことになります。武道館周りへ行くのも初めてだったので、散歩したりご馳走を食べたり。あと現地近くのゲームセンターへ行脚しにいったらそこで思い入れのある曲を初めてクリアしてしまったりも。イベント効果は存在します。

神楽坂まで散歩
『茶寮』というお店で10年振りぐらいにお抹茶をのみました


ひとしきり歩いた後に入った武道館は意外と狭く感じ、でもやっぱり規模感は大きく、見切れ席が出るのも当然、というような配置でした。
初めからA席しかないと思って(低身長ですし)応募した結果その中でも立っても後ろに支障がないような席をご用意されていましたが、みんなが座ってるなら座ったまま見ていいかもなあと、この時は考えていました。
会場BGMは物々しく狂っていて、上映された「予感」もまるで魔法の準備段階で。私たちはこの時点で騙されていた、隠された意味をしっかりと隠されていたのだと振り返るたび唸るしか無くなります。


煽られた不安を吹き飛ばすようにピアノ・オーケストラ・バンド・DJの四者が動き出し、登場した花譜さんが歌われたのは『魔女』。
夢のような3時間の始まりは、狂っていると言うよりは……確かに後ほど判明するテーマを含むような賑やかさでした。

全曲振り返るというのも焦点がずれる気がしたので、いくつかの点にスポットを当てて感想を述べていきます。

「心象」

この場において涙を零した曲が、3つあります。
命に嫌われている。』と『化孵化』そして『イマジナリーフレンド』の3曲がそれにあたるのですが……本当は泣くつもりではなかった曲が、この中に含まれています。

順を追って説明しましょう。
化孵化』はこのライブのサブタイトルが(狂)であった時点からマークしていた曲でした。元は敬愛するsasakure.UKさんの曲ということでオリジナルバージョンを聞いており、その後花譜 feat.可不のデュエットカバーに感動を覚えたものです。武道館で聴くライブバージョンの化孵化は、光という無機とダンサーという有機が激しく、動的に混ざりあい、その光景に圧倒され胸がいっぱいになりました。

イマジナリーフレンド』はそもそもゲストの存在から歌われることが確定していた曲です。大森靖子さんと さんの2人によってMVの中の世界が、ぐりんと裏返されて“こちら”が“その世界”になってしまったような広がりを見せています。その世界観と、そして2人の張り裂けんばかりの叫びに、やはり胸がいっぱいになりました。
上の2つは泣くつもりで泣いた──というより泣くだろうなあと思いながらライブに臨んで本当に泣いた、が正しいかもしれません──曲です。
すなわち泣くつもりが無かったのは『命に嫌われている。』でした。

アンセムと理解していた。歌を聞いても、“胸いっぱい”とは少し違う感覚のままだった。なのに涙腺も熱くならないまま、気付けばつうと頬が濡れていました。あれおかしいな、とまで私は思った。
あんなに不思議な泣き方は久しぶりでした。心が沈んで沈んで沈んで、それを忘れかけた頃に涙が何故か止まらなくなった、そんな体験を皆さんはしたことがありますか? あれに似ています。無意識にはたらきかけられたことに衝撃を覚えながらも、この曲が多くの人々に愛されている理由が、何となくわかった気がしました。

全然泣くつもりとかも無かったんだけど、『命に嫌われている。』に差し掛かった時、胸がいっぱいになったとかではなく、ただただ自然な現象として涙が溢れてた 生きるための言葉とか、ちゃんと生きるために吐き出すべき感情とか、そういうものを聴いていたんだと思う 無事に来れて良かった

自分のライブ当日の感想ツイートより

「実在」

今回珍しいなあ、と思ったのはペンライトの形状と仕様。光る部分がかなり軽い素材で出来ていて、更に恐らく中が空洞になっているんです。
つまり振動しやすい。
落とせば目立つし、うっかり手すりにぶつけた際にはカコンと大きめの雑音が鳴った。アイドルのライブのペンライトとかがこういうものなのかなあ、と思いつつも、デメリットを感じてしまう瞬間は多々ありました。
ただ。振動しやすい、それはつまり振動に反応するということで。
バンドサウンドの轟音、弦楽器の響き、DJのビート……全ての音を抑えて1番ビリビリとペンライトを震わせたのが、花譜さんの声でした。

あまりに出来すぎていて、それは一夜の魔法か錯覚か、なにかだったかもしれません。でも私は遠い席で立ち尽くしながら……ペンライトを心臓に当てて、何度か声という実在を、なるたけ近くで感じ取ろうとした記憶を確かに覚えています。

花譜はそこに、いる。

それを象徴する、提示可能な証拠があります。動画撮影・SNS公開可とのアナウンスがなされ、ならばとりあえずとスマホを取りだし記録した、ライブのアンセム『不可解』の動画です。

人の肉眼というのは優秀で、映像が投影されるボックス型スクリーンの輪郭は全て視認可能です。花譜さんが行ける範囲が分かるんですから、彼女のあの体は液晶の外には出られないと理解も出来る。
だから私は自分で記録した『不可解』映像を、日記を書くにあたり初めて見返し、愕然としました。
カメラは光度を落とし、花譜さんという“光”を映そうとする。その結果、暗がりにある舞台セットは見えなくなり、そこには……配信でのAR的な調整を介さずに、制約なくただそのままの姿で、武道館に立っている花譜が写っていました。

花譜は、そこにいた。

花譜と私たちの間に歌詞や演出を映す光の幕を隔てていないセットは今回が初めてだと聞きました。撮影可能なパートが存在するのも今回が初めてと風の噂で耳にしています。
──あれは“花譜”を、現実に召喚し実在を拡散する儀式であり、あの場に集まった観測者たちは儀式の共犯者だったのではないか?
ロマンがある仮説じゃありませんか。勿論これを狙ってたのかもなんて邪推こそ言い過ぎで、本当に作為的だったらおそろしい話でもありますけれど……なんて書いていたら公式で「ユーザーの撮影した動画を繋ぎ合わせたPV」なんかが出たもので、この説をちょっと確信して笑顔な自分もいたりします。

(肉眼でも“そうなる”日は近いのかもしれないと思うとドキドキが止まりません。あと次回はらぷらすもいる曲で撮影可能パートを設けてほしいです。真の意味で空を泳ぐらぷらす、観測したい……。)

「狂」

この1文字を掲げたライブに私は(何がどのように狂っているのだろう?)と期待を向けていました。予告編として、含まれている願望と比べれば随分と嫋やかな『私詩』の動画が上げられていた時点で、私の期待の対象は「外向的な狂い」にしかないと、ちゃんと気付くべきでした。反省点ですね。

外向きの狂いは、客観的に明らかな要素です。
会場から何からの雰囲気やそもそものライブの規模、演奏者のボリュームは勿論のこと、ライブ用の特別な歌唱形態「燕(壊)」や数ある花譜×可不のカバー曲から『化孵化』を採用したことなどは内容に含まれた「狂」の要素でしょう。
中でも個人的におお、と思ったのは転換(?)DJ、『K.A.F DISCOTHEQUE』。休憩時間なのかな?と一瞬思うも、歌唱セットリスト未採用のカバー曲がサイケデリックな背景と共に次々流れてきて、どうにも離席は出来ずそれどころか立ってペンラを振る始末。
個人的の中の更に個人的なポイントとしてセトリに『Bad Girl / m1dy』が入っていたとパンフレットで知った時はおったまげました。スピードコア・ダンディ、自称「あたまのおかしい音楽」を作る方、の、このタイトルの曲が挟み込まれた事実が「狂」として「正」し過ぎて声出ましたけど……。

まあそもそもDJ以前の最序盤から座って見る考えはとうに消え去っており、スタンディングでペンライトを狂ったように振っていたのですが。まさに踊らにゃソンソン、といったように。でも前の席で立っている男性がいなかったらさすがに少し恥ずかしかったと思うので、見知らぬ彼の熱気に感謝しています。

ここまでは外向的な「狂」の要素に自分がいかに狂わされたかを述べておりました。

しかし転換のDJを経た第二部以降のパート。そこで狂っていくのは、ファンサービスの量、お祭り感が生む熱“狂”、ですよね。ゲストアーティストや派生プロジェクト「SINSEKAI STUDIO」所属アーティストとの新曲含むコラボ楽曲。
V.W.Pの出演に伴った理芽さんの帰国、各メンバーがフューチャリングした曲のメドレーにダンサブルなアンセム『共鳴』の選曲。
極めつけは『過去を喰らう』・『不可解』を原点とした、象徴的なシリーズ曲の最終部作がそれぞれ初披露されるなど、そのサプライズの量は狂っていました。
けれどこれは、さっきまで話していた「狂」とは、また意味合いが違う狂いのような……?

狂/MAD/ーーーーー


……花譜さんの口からライブの裏テーマと「狂」のMADさに隠して秘めたもうひとつの「狂」が語られたのは、最後の楽曲にして “VIRTUAL SINGER SONG WRITER” 花譜のデビュー曲『マイディア』が歌われた後。その意味を理解した時にはもう、ライブ「不可解参」二部作目の副題を知ってしまっていました。

Crazy for you.  
──君に夢中になる。

外側から魅せ、誰かや世界、観念などを壊していく「狂い」とは異なる……否、“その先”の在り方。狂わされて夢中になり、想うあまりに何かを生み出そうとする(もしくは、抑えきれない想いそのものを生み出す)ような引力です。
パンフレットにて述べられていましたが、前々から作詞作曲に取り組んでいたもののそれは『自分のための曲が多かった』花譜さん自身が観測者たちに向けたメッセージを持つ歌を作り、大舞台で披露可能な形まで持っていけたのはその最大にして先駆的な実践でしょう。

──「だれか」や「なにか」を愛する事が、きっと世界を動かすクレイジーな原動力。

予感は正しかった。それでも感覚を狂わされ、化かされてしまった。
狂いを求め、狂いたくて、狂ったように暴れている間に。私はもうひとつの(狂)である「想い、愛する」を知らぬままに完遂しかけ、そして知らぬ間に次回、「不可解参(想)」への橋渡しを完了してしまうところだったんです!!
そりゃ完遂こそしましたけど、暴れてる間に理解に至らなかったのがなんか悔しいな〜〜!!! ちくしょう! 覚えていやがれください!!

……という本音は置いておいて。
バーチャルアーティストの世界と経済は今急速に広がっていますが、私はその界隈のコアなユーザーには今のところなれそうもありません。それでもこんな風に、あなたのうたが好きなだけの私もこんなに楽しませてくれるなら、この楽しみをひとつのよすがに生きていたいと思うし、リソースを分けるひとりにしたいと思いたい。このリソースにはお金と時間と、心と言葉が含まれた意味です。よく「この時間は言葉にしなくていい」と”花譜”は口にしますが、私にあげられるのはこれしかないので……。

とりあえずは(想)は絶対に、何としても見ます。どこかでほのめかされていた気がするんですが次回はバーチャル会場オンリーでしたっけ? それこそカラオケボックス抑えましょうかねえ。

──ぼくらは分断され傷ついた傷ついた世界で、それでも生きていく。

エンディングより


おわりに


ここまでお読みいただきありがとうございました!
マガジン「2022真夏のライブ三本勝負」はこちらが最終回となります。のちのち既存記事の追記・修正はするかもしれません。

8月の私へ おつかれさま


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