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「鳥かご」の演出が凄かった演劇「ハイキュー!!」ゴミ捨て場の決戦

 私が今一番好きな2・5次元舞台のひとつがハイパープロジェクション「ハイキュー!!」シリーズです。2020年10月~12月に行われた「ハイキュー!!」ゴミ捨て場の決戦は原作でも人気が高い試合のひとつ烏野高校VS音駒高校の一戦を描くもの。漫画で表現されたあの音駒高校の戦略「鳥かご」を見事に舞台上で表現していました。そしてこのシリーズを特徴づける音楽も素敵でした。


因縁をすべてつめこんだ3時間

「ハイキュー!!」”ゴミ捨て場の決戦”は第一幕因縁・第二幕約束の場所。原作でも描かれたように、初期の練習試合から合宿、そして監督同士の因縁と烏野高校と音駒高校は、最初の練習試合の相手だった青葉城西高校とは別に、多くの因縁と約束があります。それを3時間の舞台でどこまで回収できるのか――結論からいうとすべてこぼさず回収しきりました。脚本凄い。

音駒高校の猫又監督と烏野高校の烏養元監督の因縁・約束のシーンから始まり練習試合のラスト、そして全国大会へ。

試合が始まるとこれまで積み重ねてきた因縁と約束が「これでもか」というぐらいに描かれます。個人的には黒尾・研磨と月島・山口の幼馴染ペアの4人のシーンがよかった。黒尾は研磨にバレーボールの楽しさを教えただけでなくて月島にも教えたのですよねというのを思い出しました。(そして協会に入りそれを日本レベルでやっていく)

烏養元監督の「勝負事を楽しむには強さがいる」というメッセージも山口の口を借りてでてくるのですが、烏野VS音駒をみていると「楽しみが先行して強さがあとからついてきた」のが黒尾・日向なのに対し、「強さがあって楽しみがあとからきた」のが月島・研磨なんですよね。月島への黒尾の「バレー、楽しいか?」との問いや研磨の「楽しー」のセリフも全部こぼさず取り込んでくれました。

もちろん描かれるのはこれだけではなく、部長同士の因縁、田中・山本の因縁、リベロ同士の因縁と全部詰め込まれています。

「鳥かご」はこうやるのか VS音駒戦は研磨の物語

ゴミ捨て場の決戦の最大の因縁・約束は孤爪研磨と日向翔陽の間の「もう一回のない試合」なんですよね。そこに研磨が繰り出してきたのが鳥かご作戦。いかに日向の羽をもいで、音駒の勝ちの可能性をあげるか。漫画では日向翔陽を囲む鳥かごを描けましたが、舞台でどうするのだろうと思っていたら、金属製の棒と映像を使って見事に「鳥かご」を出して見せました。(舞台のわきに今回設置されたポールはそのためなのですかね?)もうこれは舞台そのものを是非見てほしいです。

そしてその鳥かごを日向翔陽はどう破るのか。カギになるジャンプを表現するのは音です。

ちなみに私はハイキューの及川さんの最終回でそれまでの全国大会の試合の結果が全部記憶から飛んでいて、VS音駒戦で烏野高校がどう勝ったのか忘れていました。舞台観て思い出しました。

とにかく音楽がいい

 演劇「ハイキュー!!」の音楽は一貫して和田俊輔さんが手掛けています。今回の公演についてもツイッターで解説されています。


演劇「ハイキュー!!」は原作もいいしその原作をもとにした脚本もすごいし、演出も役者の演技もすばらしいのですがそのすべてを包括しつつ支えつつ魅力を引き上げているのが和田さんの音楽だと思っています。「このシーンにはこの音楽しかない」という納得感しかありません。特に烏野高校が全国大会に進出してからは、田中龍之介の姉が率いる和太鼓軍団が烏野高校の音楽のベースを担っていてお祭り気分が楽しいです。

「ゴミ捨て場の決戦」では第二幕からゲーム風音楽にスイッチ。第二幕のOPは、音駒高校のメンバーがゲーム内のキャラクターとして烏野高校のメンバーを倒すパロディシーンからスタートするというおまけつき。ゲームをクリアするように研磨の主役感が出ています。床も、研磨が「いま烏野のメンバーがどこにいるのか注目している」のがわかるようにピカピカ光る。演出神。

2021年春に新作やるよー

 原作ファンの方はご存知のように、VS音駒高校の後は運命の鴎台高校との対戦です。演劇「ハイキュー!!」でも2021年春の新作が告知され、さらに「終幕へ」とのこと。鴎台高校銭のあとのブラジル編・プロ編をどう舞台でやるのかわかりませんが、正直期待しかありません。

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