【北米漫画市場まとめ】カカオが小説配信プラットフォーム買収、「アイの歌声を聴かせて」英語版上映へ、サウジのメディア企業、「Manga Arabia Youth」を立ち上げ
北米漫画市場のニュースなどのまとめです。拾い切れていないものもあるのでぜひリクエストお待ちしております。
インターネット上の話題に「呪術廻戦」「東京リベンジャーズ」
年末恒例の、「その年にインターネット上で何が話題に/何が検索されたか」企画です。
ツイッター上の話題では「呪術廻戦」が「イカゲーム」を上回りました。
日本のグーグルの検索ではオリンピックや大谷翔平に加えて「東京リベンジャーズ」「呪術廻戦」の検索が多かったようです。
「君は僕のお姫さま」の英語版、BOOK☆WALKERの海外サイトで販売1位
カドカワがBOOK☆WALKERの海外配信サイトのダウンロード数ランキングを公表しました。1位は鯨田ヒロト先生のBL「君は僕のお姫さま」でした。
ニュースサイトのING、Best Anime of 2021 Winnerに「オッドタクシー」を選出
年末ということでいろいろなニュースサイトで「Best Anime」を選ぶ記事が出ていますがひとつだけピックアップ。ゲームなどポップカルチャーの記事を配信するINGが選んだのは「オッドタクシー」でした。
Webtoon人気は作家にどう還元されているのか?
「Hellbound,Dr.Brain...いかにしてコミックスまたはWebtoonはNetflixやAppleTV+などを通じて作家の大きな収入源になっているか」というこちらの記事は、韓国発のWebtoon市場と、ドラマなどを含むほかメディアへの展開についてよくまとまっています。かつて(というかいまでも)の日本の週刊連載の漫画のように、少人数で始めることができ失敗しても影響が限られるところがテレビドラマや映画と比べた制作上のメリットして指摘されています。(実際Webtoonの制作の話を聞くと、日本の漫画よりは彩色などを含めてかなりコストと人手がかかっていそうですが)
日本の漫画市場では映像化は、単行本の販売以外は作家に金銭的なメリットが少ないことが指摘されています。Webtoonの場合は、ドラマ化となれば作家への収入はかなり大きくなるそうです。ただ記事では、Korea Creative Contenc Agencyの実施した調査で8%がほかのメディアへの権利提供で大きく収入が増えたと答えているそうです。ちなみに記事にはHellboundの共同制作者兼アーティストのコメントも引用されており、かなり収入が増えているようです。
BTS題材のWebtoon、内容が明らかに
グローバルで人気なボーイズグループ、BTS。12月に長期休暇の取得を発表しました。しばらく露出が減るのかと思いきや、2022年1月からBTSを題材にしたWebtoonの連載が始まります。そのティザーコンテンツが明らかになりました。これ、日本で読めるのでしょうかね。
韓国・カカオ、グループ企業通じて小説配信プラットフォームを買収
Webtoonなどの配信を手掛ける韓国のカカオ・エンターテインメントがグループ企業を通じて香港が拠点の小説配信プラットフォーム、Wuxiaworldを買収するというお話。Wuxiaworldはアジアのファンタジー小説を英語などに翻訳して配信しているということですが、カカオ系の出資を受けて、2022年7~9月期までに日本のライトノベルの配信も検討するとのことです。
小説配信サイトをめぐっては、ネイバーも買収に動いておりwebtoonで存在感の高い企業がさらにコンテンツ確保に動いているという印象です。
Animate、英語版の漫画配信に参入
少し前から「Animate International」のツイッターアカウントができていましたがこのほど配信作品が発表されました。「ララの結婚」は日本でも人気のBL。市場拡大を見越してでしょうか?どこの配信プラットフォームか気になります。
なお、外国語版の配信・出版作品がどう決まるかです。もちろん出版社側のリサーチや戦略もありますが、たまにこのようにオンライン上で募集されることもあります。これへの返答を見ていると、ファンの方はよく日本語版をチェックしていることがわかります。
「消えた初恋」のWatch Party 開催!
日本人気は漫画やアニメだけではありません。実写ドラマも人気で一部作品は翻訳付きで配信されており、「みんなで同時視聴」イベントも。「消えた初恋」はVIKIというプラットフォームで配信されています。過去には「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」がCruncyrollで配信されています。
「アイの歌声を聴かせて」の英語版、各国で上映へ
日本のアニメがほぼ時差なしで海外のプラットフォームで配信され始めていますが、最近では劇場版アニメの上映・配信も盛んです。しかも日本での公開から上映・配信までの期間が少しずつ短くなっている気がします。「アイの歌声を聴かせて」もそのひとつ。吹き替えで、北米では日時限定で上映、オーストラリア・ニュージーランド・英国では一定期間上映となるようです。
私が知る限り、一定期間上映となったのは「鬼滅の刃 無限列車編」と「僕のヒーローアカデミア」の劇場版。個人的には呪術廻戦の映画版がほかの映画同様、一定期間映画館で上映されるのか注目しています。
新海誠監督の新作、英語圏でも話題に
劇場版アニメという点では、新海誠作品の情報公開も英語圏で話題になりました。新海監督は「君の名は」「天気の子」が英語圏で人気作となり、次回作も期待されております。
NYPL、「ボーイズ・ラン・ザ・ライオット」「あさドラ!」などをBest books に選出
こちらも年末企画。ニューヨークのニューヨーク公共図書館(NYPL)が選んだ「Best books 2021」に日本の漫画が入りました。いくつかありますが、学慶人先生の「ボーイズ・ラン・ザ・ライオット」は主人公がトランスジェンダーということでLGBTQ+関連作品が注目を集める中でも関心が高かった作品。英語圏でもなかなか「普通にトランスジェンダーが主人公」という作品はまだ希少なのではないでしょうか。もうひとつ気になったのは浦沢直樹先生の「あさドラ!」。漫画というだけでなく、日本の歴史に触れられる一作として選ばれたようです。
ちなみに「ボーイズ・ラン・ザ・ライオット」はTeens向け、「あさドラ!」はAdults向けです。kidsに日本の漫画はまだ早いということのようです。
ランダムハウス、司法省の調査に反論
昨年、ペンギン・ランダムハウスの親会社、独ベルテルスマンがバイアコムCBSグループの同業大手サイモン・アンド・シュスターの買収を発表しました。ランダムハウスは業界1位、サイモンは業界4位ということで合併で作家の交渉力が低下するとの懸念から、作家グループの指摘を受けて米司法省は買収阻止を求めて連邦地裁に提訴していました。
これに対しランダムハウスが反論。曰く「合併は作家にもメリットがあり、反トラスト法の下で阻止されるべきではない」とのこと。
ランダムハウスはグループで日本の漫画の英語版を出しており、サイモンはViz Mediaを抱えているため裁判の行方は日本の漫画業界も無視できません。
ちなみに裁判は2022年8月だそうです。
Junji Itoの新刊「Deserter」のPV公開
英語圏では2021年からちょっとした「Junji Ito」ブームが来ております。出版社が短編集の翻訳を手掛け、これの出来が良かったのか販売も好調です。もともとUzumakiのファンはいましたが、さらにファンを広げているようで、12月には初期短編集の英語版の発売が予定されています。
もちろん英語圏における日本の漫画人気は週刊少年ジャンプ掲載作品が翻訳版でもけん引しています。しかし初めて日本の漫画に触れようという人にはあの何十巻もある連載作品はとっつきにくい。(実際図書館の方も、どこまで翻訳が続くかわからないという懸念をお持ちでした)ということでこうした短編集はまだ英語圏のファン拡大のきっかけになりえるのでは?と思っています。ファンの獲得にいつ出版されたかは関係ないので、1970-80年代の少女漫画の短編集の翻訳とかどうでしょうかね?
配信会社のAzuki、Kaiten Booksと提携 作品を独占配信
電子書籍のサブスクリプションサービスを手掛けるazukiが中堅出版社のKaiten Booksと提携するという発表です。azukiのサービス拡充は歓迎なのですが気になるのはexclusiveということ。Kaiten Booksは、つきや先生の「組長娘と世話係」の翻訳版の配信を手掛けています。ほかで読めない、となったときに作家側にプラスなのかは未知数です。
サザビーズ、アニメのセル画などをオークションで販売
オークションハウス運営のサザビーズが、アニメのセル画を販売するサイトを開設しました。その名も「Anime Go」。
サウジのメディア企業、「Manga Arabia Youth」を立ち上げへ
サウジアラビアのメディア企業が「Manga Arabia Youth」を立ち上げるというニュース。すでに「Manga Arabia Kids」を発行している現地のメディア企業が、15歳以上をターゲットに新たな雑誌を発行するそうです。現地のクリエイターの作品に加え、日本の出版社と提携し「亜人」「ハイキュー!!」「ヴィンランド・サガ」も掲載(おそらく翻訳版)するそうです。楽しみ。
「新世紀エヴァンゲリオン」題材のアニメ研究
ストックホルム大学から「In Anime Studies: Media-Specific Approaches to Neon Genesis Evangelion」と題する研究誌が出ました。全部英語なのですが、「新世紀エヴァンゲリオン」を題材に、アニメというメディアを分析するというもの。ご興味ある方はぜひ!
おまけ
日本語学習の未来はどうなるか?
直接漫画・アニメに関係するわけではないのですが、最近の日本政府の入国禁止について。いろいろと是非はありますし、感染症の拡大は防ぎたいのですが、これによって正式に日本での研究許可をとった研究者や、留学生が入れなくなっていることは事実です。ツイッター上で「#japantravelban」で検索すると多くの人の声が集まります。
いまの日本の漫画やアニメの翻訳の質の向上には、過去に日本で日本文化を研究・勉強した人の貢献があるだけ、ちょっと将来の海外での日本文化の担い手や普及者、そもそも日本語学習への意欲とかへの影響が気になります。
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