専門図書館って何?

Q.専門図書館とは何か。具体的に説明してください。

専門図書館。ふだん図書館を利用している人も、あまり聞きなれない言葉ではないでしょうか?
そんな専門図書館について今回はフォーカスしていきます。

1 定義

専門図書館は大まかにいうと、こんな感じに定義されます。

・公共図書館、大学図書館、学校図書館以外の図書館
・取り扱う資料の主題・形態や、設置目的・利用者が専門的に限定される

…なんとなく「専門的だな」というニュアンスは感じられると思います。「でも私にはあんまり縁がないな~」と思うところですが、実はそうでもありません。身近なところにいっぱい専門図書館はあるんです!

2 設置主体

専門図書館はどのような機関が設置しているのでしょうか。

①国や地方公共団体の立法・行政機関に属する機関
②国公立の試験研究機関に属する機関
③学協会、公益法人に属する機関
④大学付属の試験研究機関に属する機関
⑤民間企業・業界団体に属する機関

なんだか小難しい表現ですが、具体的に考えるとわかりやすいです。具体例を挙げていきましょう。

①一番身近にあるのが、各自治体の議会に設けられている「議会図書室」です。私も今の職場に移るまで存在を知りませんでしたが、議員さんの活動をサポートするための本・資料を収集する図書室が各議会に設けられており、市民や外部の人も利用することができます。(閲覧のみで貸し出しはできないところが多い)
 このほかには、裁判所の図書館も該当します。

②試験研究機関?というと訳わからないですが、農業試験場や水産試験場がこれにあたります。

③日本銀行の図書室や経団連のレファレンスライブラリーが該当します。

④大学に付属している専門的な分野を扱う図書館。音楽大学の図書館や、特定の学部の研究室にくっついている図書室が該当します。

⑤民間企業にも意外と図書館が設けられています。味の素・食の文化ライブラリーやトヨタの社内図書室などが挙げられます。ほかにも、鉄道博物館のや天文科学館にある図書室も「専門図書館」にあたります。

3 運営の特徴

じゃあ、専門図書館ってどんなことしてるの?というと、名前のとおり狭く深いサービスがなされています。私が勤務する議会図書室を例に解説していきます。

A 特定分野の資料や情報を収集・蓄積している。
 専門図書館は取り扱うテーマが限定的なため、おのずと集める資料も絞られてきます。議会図書室の場合、議員活動や市政に関する文献を収集しています。

B 設置・運営目的が明確である。
C サービス対象の利用者が限定される。
 特に民間企業の図書室の場合、親組織が運営・業務上の必要性から設けているものが多いので、組織内部の人や研究者などの「特定の利用者」に奉仕するという明確な目的があります。議会図書室も利用者である議員をサポートすることを目的としています。

4 専門図書館のサービス

 では、こうした専門図書館は、どのようなサービスを主に行っているのでしょうか?2つのポイントを押さえつつ、具体的に見ていきましょう。

〈ポイント〉
・資料の収集、保存よりも、利用者への直接的なサービス提供を重視
・資料の提供よりも「情報そのもの」の迅速な提供を重視

A SDIサービス(選択的情報提供サービス)

 個人やグループに対して特定のテーマに関する資料を選択して提供する「カレント・アウェアネス・サービス」の一つです。利用者があらかじめ自分の興味のあるテーマを登録しておくと、関連する新着図書が入荷した際にメールなどでお知らせするサービスです。

 公共図書館でも最近取り入れられるようになり、市川市立図書館もメールを通じた案内サービスをしています。

B 目次サービス(コンテンツシートサービス)

 新着雑誌や学術雑誌(紀要)の目次をコピーし、特定の利用者に提供するサービスです。議会図書室だと定期購読している「日経グローカル」などが該当するでしょうか。

 個人的にも、(鉄道ファンの場合)「鉄道ファン」や「鉄道ジャーナル」が入荷するたびに目次を繰るよりも、先に”こんな内容だよ!”とコピーして案内板に掲示してもらったほうが、興味のある記事が載ってるか一目でわかりますよね(^^♪

 このサービスも、近年公共図書館で広がってきています。

C 新聞記事クリッピング

 これは専門図書館ならではのサービスです。議会図書室の場合、市政や周辺自治体の動きに関する記事を新聞から切り取って、紙ファイルに綴じて保管しています。

 こうすれば、議員から「一般質問の勉強に使いたいけど、〇〇案件に関する記事載ってるかな?」と聞かれたときに、迅速に提供できますよね♬ 議会図書室でも最も需要の高いサービスの一つです。

5 専門図書館の課題

 では、専門図書館にはどんな課題があるんでしょう?

・運営基盤がぜい弱
・少人数スタッフでの運営

 前者は民間企業の図書室に当てはまります。「図書室あるけどあんまり役立ってないし、なくそっかな~」と企業が判断すれば、図書室がなくなってしまうこともありますよね。

 少人数のスタッフでやりくりしているのも多くの専門図書館でみられる光景です。1人で選書・発注・排架・レファレンス対応など、多くの業務をこなしているため、人材育成と併せて情報を扱うメディアリテラシー能力も必要になってきます。

 議会図書室の場合、運営は議会基本条例で定められているので、なくなることはありません。ですが、少人数スタッフというかそもそも常駐スタッフがいない場合も多いです。私の勤務先でも専任の司書さんはおらず、議会事務局の職員が、議員から問い合わせがあったときに対応しています。

おわりに

 最近は、田原市立図書館のように、公共図書館が「議会・行政支援サービス」を打ち出す例もみられるようになりました。市役所・議会図書室との間で配送網をつくり、行政視察の候補地えらびや「働き方改革」の事例調査といったレファレンス対応を公共図書館が協力して担っています。図書館で議会意見交換会を行っているのも、なかなか面白いですね!

田原市立図書館「図書館で議員と語ろうホリデー」(2019年実施)

 公共図書館の強みであるレファレンス・資料検索サービスと、議会図書室のニーズである専門的な情報収集。両者が協力することで、図書館の価値に多くの人が気づき、行政も議会もより良いものになるのかな、と思っています。

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