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子ども といういきもの

ランドセルを背負ったちいさい人たちが
「じゃあ公園でね!!!!」
と響かせながらかけていく
扉の先の寒空が嘘のような気がしてくるのは
ストーブのおかげだけではなさそう

表の鉢植えが影になる刻、月桃の日常

時にうちを覗きながら
「お店ですかーー?」「図書室だってー!!」
とキラキラした眼差しをみせてくれるちいさい集団が
まばらに通りを過ぎていく

今日
そのちいさい人がふたり
おともだちがくるまで 見てもいいですか
と、扉を開けた

(正確には窓の向こうから私に熱い視線を送っていたのだけれど)

これも必然か、私はちょうど
司馬遼太郎『21世紀に生きる君たちへ』を読んでいた
つい先程まで自分への言葉だったのに
そのちいさいふたりを前に私自身が司馬側にいる
24歳にしてはじめてのこと
世界の見え方が大逆転していた

道を挟んだ向かいの角で待ち合わせ中だから
外の席で読むらしい
ちいさいふたりの選ぶ本を横目に見る

『誰も知らないサンタの秘密』
『またぶたのたね』

いいなあ!そのシリーズもう一冊あったよね!と、
『またまたぶたのたね』

子どもは素直ないきものだと思った

大人が子どもに読んでほしい本は
いつだってタイトルが教育的だもんね、分かる
悲しいかな、溢れんばかりのあなたたちへの愛なんだけれど
一方通行なのはいつものこと
いいねいいね、その本面白いよ

先程ブッカーをかけようと思い準備していた本に
目を落とす
そっとうしろに戻した
こっちは他を出し終わってからゆっくりでいい
このちいさい人たちに
そのキラキラした眼差しで
月桃の書棚を眺めてもらいたい
何度も何度も手にしちゃう
お気に入りの一冊を
ここで、見つけてもらいたい

「ワクワクする場所」

いつも思い出しておきたい
自分がまだちいさい人だったとき
ワクワクする場所は
どんな場所だったか

今度もお友だちと来るよー!
と言って
さんにんになった背中を見送る


直後、沢山の建築誌を寄贈いただいた
いま山積みの建築誌を前に
おおきな人になったわたしもまた
あのキラキラした眼差しを向けているような気がする

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