欅坂46のこと

　乃木坂46の後輩グループである、欅坂46のことを書こうと思います。

　欅坂46というグループ名を初めて聞いたのはいつだったか、覚えていませんが、乃木坂を本格的に聞くようになる少し前、だった気がします。
　MVでも見てみようか、と思った時には、欅坂は既に、平手友梨奈の体調次第、というグループになっていました。シングルで言えば、『アンビバレント』の時です。
　曲もMVでのダンスも、何やら不平不満をぶちまけている、という感じで、曲の世界観を表現する力が云々と力説されても、世界観そのものに魅力が皆無だったので、
「暗いなあ」
「ただ不平だけ言われてもなあ」
　という感想で、全く魅力を感じませんでした。それは今も変わっていません。

　音楽で、体制や社会に対するアンチテーゼを訴える場合は多いですし、どんな時代でも一定の需要があります。私の少年時代には、尾崎豊という人が一部でカリスマ的な人気がありましたが、その時代も私は、世界観自体には魅力を感じませんでした。歌はうまかったですが。
　私が従順な犬で、今は社会にどっぷり漬かって飼い慣らされたオッサンだからだ、と言われても、否定はしません。たぶんそういう面もあるでしょう。

　しかし、真面目に言うのも野暮なことですが、
「不自由だ」
「嫌だ」
　と喚くだけで大人が言うことを聞いてくれるのは、せいぜい小学校低学年までです。
　社会には色々な決め事があり、それにはだいたい、良い面も悪い面もあります。良かれと思って何かを変えたら、思いも寄らない弊害が出ることもあります。まともな大人なら、それを知っています。
　だから、そうした思慮が無い者には、社会は冷淡な反応しかしません。まともな代案を示さない連中は常に、相手にされないのです。共産党が決して政権を取ることがないのと同じです。

　それでもやはり、そうした曲に対する一定の需要は存在します。大人への反抗を訴えるアイドルグループという、メジャーなアイドルグループには稀有な、強烈なブランドイメージを得たことは、大きな武器になりました。
　それ故の急成長だったと思いますが、その武器ゆえに方向性を縛られてしまったような気もします。ファンも、メンバーも、運営も、秋元康も、多かれ少なかれそうだったと思います。

　乃木坂46の『ジコチューで行こう！』は明るい曲でありMVでありパフォーマンスですが、歌詞の意味だけを追えば『サイレントマジョリティー』とそれほど掛け離れてはいない気がします。
　それなのに、欅坂46では鬱屈した苦しみばかりが印象に残ります。カップリング曲のMVをじっくり見て行けば、そうではない側面もあるのだろうとは思うのですが、正直そこまで見ようという気が起こりません。

　楽曲で反抗を歌っていても、常時それ一本で行く必要はありません。ステージ上だけでそれをしっかりと演じれば、それで良かったはずなのです。
俳優を考えれば自明のことです。
　『半沢直樹』を演じた堺雅人は、プロデューサーや監督に対して、
「倍返しだ！」
　なんて言いませんし、やりません。
　演じた役柄と俳優本人の人格や行動がリンクしていないのですが、誰も文句は言いません。それが演じるということであって、嘘つき、とかいう次元の話では無いのです。
　まあ、アイドルファンがそうした理屈を受け入れてくれたかどうかは、分かりません。
　かく言う私も、大人の敷いた強固なレールに乗って活動している彼女らが、大人への反抗を歌うことに、違和感を感じていた時期が長かったですので。

　バラエティ番組での彼女達を見ると、別に大人に牙を剥いているわけではありませんし、それは絶対的センターであった平手友梨奈も同様だった気がします。昔の映像を見ると、普通にワイワイやっています。
　それがいつの間にか、本当に苦しみを抱えるようになってしまった、ように見えます。そこまでする必要があったとは、私には思えません。それだからこそ真の魅力を感じた人もいたでしょうが、ほとんどの人は、一風変わったエンターテイメントとして存分に消費しただけな気もします。
　当時熱狂した人達は今頃、無個性な社会の一員へと、続々と加わって行ったのではないでしょうか。まあ、その辺りの答えが出るのは、もう少し先の話でしょう。

　推測しても仕方ありませんが、グループから卒業や脱退が相次ぐ昨今の状況は、誰かの悪意のせい（イジメとか）ではないと思います。
　平手友梨奈も、自分の気分で行動した面が皆無だったとは思いませんが、振り回される大人達を見て悦に入っていたとは、あまり思えません。表現したいことに対しては真剣だっだでしょうし、少なくとも、メンバー達に対しては、自分の体調が活動に影響を与えることを慮っていたというか、悪いと思う部分もあったのではないかと思います。
　卒業生の恋愛関係の情報が続々と出て来ていますが、私はアイドルの恋愛禁止はナンセンスだと思っているので、卒業前に男がいたとしても、一向に気にしません。

　何にせよ今後の欅坂46は、平手一強体制から否応なく変わって行く訳ですが、私自身は、上述のように、別の世界観を示して欲しいと思います。もちろん、いきなりキャピキャピし始める必要は無いにしても、何か希望が無ければ、聞く側は滅入るばかりです。
　ただ、これまで築いたイメージを全て捨てるのも愚策でしょうから、難しいです。

　バラエティでも二期生が積極的に前に出ようとしているようです。特別注視する気はありませんが、自然と耳に入る情報から、良い傾向が見られたら、少し真面目に追ってみようかと思っています。

　記事を書くにあたって、少しはMVでも見ようと思って見てみましたが、『二人セゾン』は凄く良かったです。こんな感じで行ってくれないかなあ、というのが、希望です。