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魚眼レンズ④『三國志』十句連作【金曜日記事】

吉川英治『三國志』二次創作
「火に負けて」

旅の青年、眉秀で、唇赤し。
黄の河の汀は澄めり八月来

母のための茶を取り戻し、黄巾賊より逃れる。
玄徳のふところに茶や青葉風

張飛は、風に鳴き星を宿す剣を劉備に還す。
宝刀に主の癖や田水沸く

劉備は橋の上で張飛に己の祖先を明かす。
翡翠来て血すぢのことを囁けり

関羽は劉備との義を果たすため、寺子屋をたたむ。
雲長は指に玉虫這はせをり

霊帝死後の混乱に乗じて董卓は権力を恣にする。
董卓に甘き臭ひの晩夏かな

董卓は呂布と丁原を離間させるため馬を送る。
赤兎馬に風あらがはず降り月

王允の策により呂布やがて董卓を殺す。
貂蝉の自死に花野の透き徹る

曹操、呂布の罠にかかり火の渦を逃走する。
火に負けて曹操の眼に星流る

吉川栄治の愛でたる花
一剣を佩きて竜胆咲きにけり


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