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『火を入れる』『足をもつ』 不思議なIT用語&ビジネス用語について

例えばの話ですが、あなたがサーバエンジニアだとします。
新しいサーバ機器が届いたので、サーバルームに設置を行いました。
その旨を上司に報告したところ、熟練のエンジニアでもある上司にこう言われました
『OK。そしたら火を入れといて』

あなたはどうしますか?
流石に火気厳禁のサーバルームへライターを持ち込むことはしないと思いますが、一瞬戸惑うかもしれませんね。

この『火を入れる』という表現は、IT用語で『電源を入れる』ことを指します。
PCに対しても使うことはありますが、基本的には一度電源をONにしたらなかなかOFFにしないような、サーバやネットワーク機器を指して言われることが多いです。

今回はそのような一風変わった(特に年配のエンジニアや社員が使いがちな)IT用語やビジネス用語をご紹介します。

IT用語

石:『石は何積んでる?』『石は4つで』

基本的にはCPUのことを指します

なので前述の『石は何積んでる?』という問には、「Core i5」とか「Ryzen 7」と答えたりします。自作PCの組立時やPCトラブル時に聞くことが多いです。

その次の『石は4つで』という表現は、主にAWS等のクラウドサーバを準備する際に使います。
これは環境を4つ用意するわけでなく、4コアCPUを選択する際に『石は4つで』といった表現をするのです。

語源についてですが、元々は半導体全般が石と呼ばれていました。
半導体の材料を辿っていくと、ケイ石という石に行き当たります。
初期の半導体では、鉱石がそのまま使われていた頃もありました。(鉱石ラジオというものもあります)
その頃からの名残で、CPUのことを『石』と呼んでいるのです。

玉:『2玉で』『1テラ玉で』

これはHDDのことを指します。CPUを石・HDDを玉という訳です。

なお、この語源については諸説あります。

  • 半導体初期は真空管=玉であり、石とセットのものだったから今はHDDが玉と呼ばれている…という説

  • HDDの記録媒体は円形の磁気ディスクであり、そこから玉になった…という説

  • HDDドライブはサーバ内に複数入れるものであり、更には交換するものでもあるため、サーバを銃に見立てて『弾』と呼んでいる…という説

正式な用語ではないため、今となっては由来も不明です。
なお、『石』に比べると若干利用率は下がる用語なので、そのうち使わなくなるかもしれません。

足:『これの足出しといて』『足が3本あるから…』

お次は足ですが、これは機器から伸びる接続経路等のことを指します。
特にルーターやスイッチングハブ等から、LANケーブル等を伸ばすとき等に使うことが多いです。
イメージとしては『タコ足配線』が近いでしょうか。

なお『足回り回線』という場合は、通信設備やデータセンターから、顧客等の利用者のもとに至るまでの回線のことを指したりします。
いずれも『本体』から複数伸びる接続経路のことを『足』と呼んでいる訳です。

焼く:『このデータ焼いといて』

これはCDやDVD・BD等の記録データに、データを書き込むことを言います。
なおUSBメモリやSSD、CD-RW等の『何度も書き換えができる媒体』の時には基本的に使いません。

なぜならこの用語は、フィルムから印画紙に『焼き付ける』ことから来ているからです。
なので『一度書いたら書き換えができない媒体に、データを焼き込む』際、使う形となります。

ちなみにこの用語は割りと一般的に使われていたので、
それなりの歳の方であれば『今"データを焼く"って通じないの!?』と驚かれるかもしれません……。

ゾンビ:『なんかゾンビがいるんだけど…』

これはバイオハザードが起きている訳ではなく、処理系の用語です。
本来処理が完了して終了しているはずのプロセスが、何もしないままプロセステーブル上に残っている状態のことを指します。

なお英語圏の場合は少し意味合いが変わりまして、
コンピュータウィルス等に感染し、回りにスパムメールや同じウィルスを撒き散らすようになってしまったPCのことを指します。

タイポ:『ここタイポってるから直して』

これはタイプミスや誤字のことを指します。

元々印刷業界用語であり、「typographical error」が語源です。
「typographical error」の元々の意味合いからすれば、内容の間違い等も含むのですが、
日本で『タイポ』と使う場合はもっぱらキータッチの間違い・スペル間違い等の、小さなミスを指す事となります。


IT以外でも使う特殊なビジネス用語

他にも、世間一般ではなかなか聞かない、職場だけの用語(特におじさんがよく使う)がいくつかあります。
上司ならその場で聞けば良いかもしれませんが、取引先の方に言われた場合等、とっさに聞き返しにくいケースもあるかと思いますので、一応頭に入れておきましょう。

テレコ:『ここテレコになってない?』

2つの要素が逆になっている・入れ替わってしまっている場合等に使う言葉です。
語源は歌舞伎用語説・テープレコーダー説・関西弁説等いくつかありますが、
『歌舞伎で2つの脚本を1幕ごと交互に進めること』をテレコと呼ぶことから来ている…という説が一番有力なようです。

鉛筆なめなめ:『ここの数字、鉛筆なめなめしといて』

基本的に帳尻を合わせること・こっそり書き換えること等を指しますが、真面目に頑張って期日に間に合わせることを指す場合もあります。

昔の鉛筆は黒鉛を湿らせることで滑りがよくなったので、映画等で書類仕事を真面目にしているシーンでは、よく鉛筆を舐める描写等がありました。
ただし、現代の衛生観念では受け入れがたい描写であり、若い子にとってはマイナスイメージしかわかない用語でしょうから、正直あまり使わないほうが良いかもしれません……。

エイヤ!・イッテコイ・ガラガラポン

これら擬音系の言葉は、何となくニュアンスで分かるかもしれませんね。
こちらはまとめてご紹介します。

  • エイヤ!:まずい状況を気合でなんとかすること

  • イッテコイ:利益と諸経費等が等しく、ほとんど得にも損にもならなかったこと

  • ガラガラポン:白紙に戻すこと。もしくは部署を解体して再編すること

一丁目一番地:『この課題はまさに当社の一丁目一番地なんだ』

最重要課題・最優先にすべき業務のことを指す用語です。
語源としては、国会議事堂で演壇に最も近い席のことを指しており、当選回数の少ない若手議員が座る席がそう呼ばれています。

全員野球:『この事態には全員野球で臨もう』

部署や役柄・日頃の業務等に関わりなく、すべての社員が一つになって物事に当たることを言います。

イメージとしては、スタメン選手だけでなく補欠やベンチの選手も総動員して野球をする感じですね。
……ただし実際に他の業務を放り出してその案件に携わるのか、単に精神的なニュアンスで語っているのかは、確認しなければわかりません。

三遊間・ポテンヒット:『なんでこの仕事、三遊間抜かれてるの?』

先程と同じく野球用語であり、この2つはおおよそ同じ意味です。
本来誰かがやらなければならない業務が、担当領域の隙間に入ってしまい、誰もやらないままとなってしまったことを指します。
もちろん放置していてはいけないのですが、責任の所在も曖昧なので、社内トラブルの原因になりがちです。

なお、プラスの意味で使うこともあり、
他社がカバーしていない需要をうまく突いた企画・製品に関して、『うまく三遊間を突いた企画だ!』と褒めることもあります。

共通言語/ジャーゴンを使うことでコミュニケーションがうまくいくかも

今回ご紹介した用語は、いずれも年々使われなくなっている用語です。
なので覚えたとしても使うケースがなかったり、たとえ使ってみても伝わらなかったり……といったことがあるかもしれません。

しかし使い所によっては武器となります。
英語圏では、このような業界・グループだけの特殊な専門用語のことを『ジャーゴン(jargon)』と呼ぶのですが、このジャーゴンには集団の結束力を高め、効率的なコミュニケーションを促進するとされています。

もし上司や取引先の担当者が、ここで紹介したような用語を使うのであれば、一緒にその用語を使うことで心理的な距離を大きく縮めることができるでしょう。一つのテクニックとして使ってみてください。

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