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永元千尋のひとりてらり

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エッセイというほど立派なモノじゃございません。ひとりでブツクサやってるだけの、そういうアレっすわ。
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2023年8月の記事一覧

乗馬と俺とオグリ1着

 1990年12月23日。有馬記念。  言わずと知れた名馬中の名馬・オグリキャップのラストランだ。  「オグリ1着! オグリ1着!」  という名実況と共に、同馬が伝説となったその時。    僕は、生涯初めてのレース予想を見事に的中させていた。  もっとも、当時の僕は16歳の高校生。当然ながら馬券とは無関係である。父親に「お前はどの馬が来ると思う?」と意見を求められたから「オグリキャップ」と答えただけ。父子ともども法に触れるような真似は一切していないのでご安心いただきたい。

生家と俺と謎の馬小屋

 僕は四国の片田舎の生まれで、両親は国道沿いで飲食業(うどん屋)を営んでいたが、同居の祖父母は米農家だった。  この辺りの解像度を上げていくと、たとえば「父親が入り婿だった」とか「母親は家業の米農家だけは死んでも継ぎたくなかった」とか「父親と祖父がまともに話している姿を見た記憶がない」とかで際限なく話が広がってしまうので目いっぱい端折るが、とりあえず生家は築半世紀を軽く超える古い木造の平屋建てで、窓はアルミサッシなどに置き換わっていたものの、梁も屋根も壁も大正から昭和初期の農

競馬と俺とキルロード

 これは(少なくとも僕にとって)超ビッグニュース!  高松宮記念2023(G1)9着を最後に中央の競走馬を引退したキルロードが、大井競馬場・的場厩舎の所属で現役復帰するらしいのだ!  中央引退後、同馬は神奈川で乗馬になるという噂だったが、しかしそれが競技としての乗馬(障害物を飛んだりするやつ)なのか、それとも観光や趣味の乗馬なのかは不明なままだった。もし後者なら自分もキルロードの背中に乗れるんだろうか、そんなことが可能なら是が非でも乗りに行くぞなどと思ってはいたんだけどね。

ヤマアラシのほにゃらら

 心理学用語で「置き換え」というものがある。  欲求不満や葛藤に対処しようとする適応機制で、簡単に言うと八つ当たりなのだが、ギックリ腰や慢性の腰痛なんかも無意識下の怒りや感情の抑圧が原因で起きている心身症であるケースが多いそうなので、これも広義の置き換えということになるのだろう。  まあ、僕は医者ではないし、大学で心理学を専門的に学んだわけでもなんでもないので、上記は話半分かそれ以下で受け止めていただきたい。ぶっちゃけ適当にぐぐって目についたワードをコピペしながら既知の知識

汝 過ちを改むるに躊躇うこと勿れ

 「この節操なし!」って言うの禁止ね。  わかってるんですよンなこたァ。自分が一番よーーーくわかってる。    だって、つい昨晩のことなんですよ。「ひとりてらり」は月ごとないし隔月の更新にしますって言ったの。わずか12時間後に撤回してこんな文章を書き始めるなんて誰より自分が予想外でしたよ。    あれから一晩経ちまして。  朝、ぐっすり眠って冴えた頭で、冷静になって考えたのね。            ○    ────諸君。    私はイーロン・マスクが嫌いだ。  私は、確か

エッセイという病

 これはまずい。  自分の病気をようやく自覚できたので、処方箋としてこの文章を書き始めた。効いてくれるかどうかはわからないが。いや、効いてくれないと困る。むしろ効かせる。  病態機序としては、以下のようになる。  まず、旧Twitter改めXを放棄。ネットにおけるレーベルの本拠点をこのnoteと定め、必要な情報を集約させて移住を完了した。  ここまではいい。何の問題もない。  問題なのは、この〔ひとりてらり〕というエッセイを立ち上げてしまったことだ。  〔ひとりてらり

めんどくさくさ

 そんなわけで〔ゴジラ -1.0〕ならぬ〔永元千尋 -1.0〕が終わりました。  自己紹介的な第0話もとっくに済ませてますんで、ここからようやく〔ひとりてらり〕第1話です。前説にしちゃ長すぎる。    順を追ってちゃんと読んでくれた人がどれくらいいらっしゃるのかわかりませんが、近年もっとも浮き沈みの激しかった2018-2020年を経て文筆業への復帰を決意した(ところにコロナ禍が直撃した)後のことも、簡単に説明しておきますね。  えーと、まず、なんやかんやあって某ゲームメーカ

“ひとりてらり”へ至る道 06 (Ep.-1)

 全6回の連載(転載)記事、第6回。  過去の振り返り編としては、これがオーラス。  第1回/第2回/第3回/第4回/第5回 2019年3月~金型工場入社 金型は、知恵と技術を結集した精密機械――――  そんなこと1ミリも知らずに「広い意味ではガンプラの生産工場と似たような職場だろ?」と期待に胸を膨らませて金型の製造会社に就職したアホの子がいたらしいですよ。あっはっはっはほんとに愚かですねえ。    うるせえほっとけ。    いやまあ、永元の認識は決して間違っていたわけでは

“ひとりてらり”へ至る道 05 (Ep.-2)

 全6回の連載(転載)記事、第5回。  第1回/第2回/第3回/第4回 まずはそのふざけた幻想をブチ壊す! 大量生産されるプラスチック製品には「温かみ」がない。    よく言われることですね。金型にプラスチックを流し込んでガッシャンすれば同じモノがいくらでも出来上がる。おもしろみもへったくれもない量産品。こんなものばかりに取り囲まれていたら人間の心は荒む一方だ。価格が安いから仕方なく使っているけれども、できることなら職人が手ずから作った一品モノの方がいい――――    もし

“ひとりてらり”へ至る道 04 (Ep.-3)

 全6回の連載(転載)記事、第4回。  第1回/第2回/第3回 Why Factory Work? 2019年3月から2020年3月までの一年間、永元がプラスチック射出成形に用いる金型の製造会社で働いていたことはすでに述べた通り。  40年以上にわたって存続してきた会社で、首都圏でもわりと規模が大きいほう、どの部署にも腕一本で食っていける技師や職人しかいない、とも言いました。    勘のいい人は、たぶん気付いていたんじゃないかしら。   「そんなの専門職以外お断りな職場なん

“ひとりてらり”へ至る道 03 (Ep.-4)

 全6回の連載(転載)記事、第3回。  第1回はこちらから、第2回はこちらからどうぞ。 前回までのあらすじ 永元千尋は、コンシューマゲーム業界の闇を垣間見た。  諦観と失望の底にあってなお、人は働かねばならぬ。食わねばならぬ。  模索する次の一歩がどこへ向かうのか、それは神のみぞ知る――――   それは全否定から始まった これまで自分がやってきたことは、全て間違っていたのかもしれない。  ちょうど一年前、2019年の3月に永元の心を占めていたのは、ただその思いのみでした。

“ひとりてらり”へ至る道 02 (Ep.-5)

 全6回の連載(転載)記事、第2回。  第1回はこちらからどうぞ。 似て非なる「開発」と「運営」 ゲームは組織で作るもの。個人で活動を続けるには限界がある。  故に、コンテンツホルダーとなる会社の社員になるしかない――――    そうして始めた求職活動が実を結び、まず採用されたのは、海外資本のゲーム運営会社でした。2018年のちょうど末ごろだったかな。  ここは本当に居心地が良かったんですが、開発会社ではなく運営会社だったことが、個人的には唯一かつ最大の難点でした。高度化し

“ひとりてらり”へ至る道 01 (Ep.-6)

 前回の「ひとりてらり」は、あくまでご挨拶みたいなもの。  次に書く「第1話」が大事だぞ、さて何を書こうか、と考えていたんですけども。    ンもうすがすがしいほどに何も出てこなくてな!!!!!!    そんなときふと脳裡に浮かんだのが、今年の11月に公開予定の映画〔ゴジラ -1.0〕のことでした。  すべての日本人にとって基礎教養以前の一般常識だと思いますが、ゴジラの第一作は1954年(昭和29年)に発表。物語の舞台も発表時期に準じておりました。  しかし、この最新作〔-

ひとりてらり

 なんか妖怪の名前みたいだよね。ひとりてらり。  小一時間くらい悩んでつけたこのエッセイのタイトルなんですけど、我ながらよく出来た部類じゃないかと思います。わりとお気に入り。 「はァ? ワレ、マガジンのタイトルに“エッセイというほど立派なものじゃありません”って書いてあったやんけ、あれはウソなんか?」  そんな風にお思いの方はたぶんいらっしゃないでしょう。なにせここはnoteなので。文章を読むのも書くのもお好きな方が集まっておいででしょうから、マガジンの説明文くらいの短