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自然と涙が溢れて、気がつくと目の前の景色が違ってみえた。「夜明けのすべて」を観て。

普段ほとんど映画館で映画を観ないのだが、
あるポッドキャストで絶賛されていて気になってみてきました。

映像美、キャストの演技、全てが素晴らしくて。
起承転結のわかりやすい映画ではないけれど、
優しい物語がそのまま映画になっていて気がつくと何度も涙が流れていた。

名作「夜明けのすべて」を見た後の興奮をそのまま羅列していこう。

◽️夜明けのすべてのあらすじ

月に1度、PMS(月経前症候群)の影響で激しいイライラを感じてしまう藤沢美紗(上白石萌音)は、転職してきたばかりの同僚・山添孝俊(松村北斗)のささいな行動をきっかけに、ストレスを爆発させてしまう。 その後美紗は、やる気がなさそうに見える孝俊が実はパニック障害を患っており、生きがいや気力も失っていることを知る。

https://www.cinematoday.jp/movie/

終始、涙が止まらなかった


自分の心と体なのに、自分で思うようにコントロールできないもどかしさ
ひとに迷惑をかけていると自覚しながらも感情をコントロールできないふがいなさ
病気と向き合う苦しさ
周りのひとに支えられることの葛藤

同じ性別の人間(女性)として、PMSにおける気分の抑揚に振り回される精神的な疲労が痛々しかった。

映画を見ながら、前職で疲弊していたときの記憶の蓋が開いてきた。
頭と体は泣きたくなくても、気づいたら涙が出ていたり。
何にそんなに苛立っていたのか、「気づいたら」怒っていて「感情的な人」というレッテルを貼られた。
そんな自分に嫌気がさすとともに「女性は感情的だ」と大まかにまとめられ、職場の他の女性たちの足を引っ張っているようで心苦しかった。

主人公のふたりが、病気を嘆き悲しむのではなく、絶望しながらも、淡々と受け入れる演技が現実的で感情移入できたのだと思う。

自分の体と心がままならない理不尽さに、ずっと涙が止まらなかった。

そして単純に、上白石さんのナレーションが素敵すぎて、心に沁みた。
登場人物みんなの表情も声も言葉も素敵だったな。

映画の世界線が、どこかに実在する安心感、「街が主役」の意図とは。


松村北斗氏が、テレビのインタビューで「この映画は街が主役」と言っていた。
本意はわからないが、「街が主役」を頭の片隅に映画を観ると、視点が変わって引き込まれるなと・・・。


パニック障害で苦しむ方の言葉で、こんな言葉があった。
「自分の生活範囲は徒歩圏内。生きるのが苦しい。だけど死にたくない。」


みんななにかしらの傷を背負って生きている。
第一印象ではわからない、人とのつながりや思いやり。
同じ職場の方々の病気を特別なものにしないやさしさ。
気遣いを素直に受け取るおおらかさ。
そんな街に住む人の優しさと包み込む街の空気感が素敵だった。

登場人物みんなに愛があって、こんな世界がきっとどこかに存在していることに安心感があった。フィルムの映像が本当に綺麗で、優しい世界がずっと続くように願ってしまう。

物語で描写される主人公の心の動き、映像での余白が素晴らしい

原作「夜明けのすべて」では、PMSで苦しむ藤沢美紗(上白石萌音)の心情を細かく表現している。一方、映画では言葉少なめに描いている。

そんな映像での余白が、観る人に想像させることを許しているのだと思う。

映画のラストシーンでは、移動式プラネタリウムの解説を担当していた。
上白石さんのナレーションが素敵で引き込まれていって、
一言一句すべて記録して持ち帰りたいくらい紡いだ言葉が素敵だった。

他人からの支えで生きてこれたし、他人に寄り添える人間になりたい。
いろんな感情が昇華して、やさしさだけが残った気分。
映画が終わったあとは心がふわふわしていた。

世界観を集中してみるためには映画館がいいんだなって実感!
優しい世界をながら見したら、優しさ感じないかもな!

ということで、これからはもっと映画館に行こう!




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