ここからゴールド(金)投資はありなのか?元ファンドマネージャーの見解


今回のテーマはゴールド投資です。

高値から調整(下落のこと)したものの、
2019年末からゴールド価格は急騰していることで
個人投資家を中心に注目が集まっています。

ゴールド価格の上昇はトレンドとなり得るのか、
このタイミングから新たにゴールド投資を開始すべきなのか、

先に結論を言えば、
過去の平均リターンを根拠に
資産形成中の個人にとって優先度は低い
と判断します。


そもそもゴールドにはなぜ価値があるのか?

ゴールドにはなぜ価値があるのでしょうか?

それは我々が価値があると思うから価値があるのです。
太古の昔からその輝きに人々は魅了されてきました。

さらにはその希少性も価値に影響しています。

ゴールドは地球上にある絶対量が決まっており、
その量は世界中でおよそ17万トンです。

これは50Mプールおよそ3杯半くらいの量であり、
かなり少ない量との印象を受けます。

また、その特性によって産業途で強い需要があります
特性とは高い導電性と酸化による腐食に対する強い耐性です。

金メッキ加工したものは、年月を経ても錆びないため、
電子部品の電導体やコネクタの部品として広く利用されています。

銀・銅の方が導電性は高いのですが、
空気中で表面が化学反応を起こし導電性が低下するため、
コネクタの材料としてゴールドが主に使用されます。

産業向けとして確固とした価値があると言えます。

しかしゴールドの全需要の中で
産業用が占める比率はわずか10%程度(2017年実績)に過ぎず、
大半は宝飾品で使用
されます。

そうです、ゴールドは我々が価値があると思うから価値があるのです。


ゴールド投資は報われない

ゴールドに長期投資をしても報われません。

米国の有名大学院、ペンシルベニア大ウォートンスクールの
教授ジェレミー・シーゲル氏は、

1802年から直近までの主要アセット(資産)の
リターンを計算
しています。

筆者の手元には、2016年までの検証結果があるのですが、
公表されている1997年までの実績を紹介します。

・米国株(S&P500指数)
・米国長期債
・米国短期債
・ゴールド
・物価上昇(CPI)


を比較しました。


Stocks For The Long Run ーThe Definitive Guide to Financial Market Returns and Long-Term Investment Strategiesー
https://www.riosmauricio.com/wp-content/uploads/2013/05/Siegel_Stocks-For-The-Long-Run.pdf
(P5、FIGURE 1-1参照)


足もと注目されるゴールド投資は、残念ながら最下位です。

なんと物価上昇に劣後しているのです。


=========================
【1802年に1ドル投資した場合の1997年時点の成果】

  ■S&P500····························· 7,470,000ドル
  ■米国長期債························ 10,744ドル
  ■米国短期債························ 3,679ドル
  ■物価上昇(CPI)············  13.37ドル
  ■ゴールド·························11.17ドル
=========================

1910年から1920年、1970年から1980年のように
物価上昇を大幅に上回る成果を挙げる期間もあるのですが、
長期で見るとお世辞にも良好なリターンとは言えません。

ゴールドを資産形成のメインに据えるのはリスクが高いと言えます。

ゴールド投資の位置付け

ゴールドは他の資産と値動きが逆相関になる傾向を持っています。

そのため分散投資の中の味付け的な存在として加えると
リターンが安定する効果があります。

世界最大のヘッジファンド創設者であり、
著名投資家であるレイ・ダリオは、
個人投資家の保有するポートフォリオとして
次のオールシーズンズ・ポートフォリオを推奨しています。

オールシーズンズ・ポートフォリオ

その名の通りどんな季節(相場環境)でも
安定したリターンを挙げることを目的としています。

そのために特性の異なる5つのアセット(資産)を組み合わせており、
ゴールドもその一つに加えられています。


【4つの季節】
 インフレ 
 デフレ 
 景気拡大期
 景気後退期


【オールシーズンズ・ポートフォリオ】
 米国株····································································· 30.0%
 米国債(超長期(20年以上))·················· 40.0%
 米国債(7−10年債)······································ 15.0%
 ゴールド································································· 7.5%
 商品·········································································· 7.5%

このように絶妙なバランスで組み合わせることで、
あらゆる局面でいずれかのアセットが活躍
安定的にリターンを得られるようなっています。

例えばリーマンショックがあった2008年は、
S&P500指数がマイナス38.49%だったのに対して、
オールシーズンズ戦略はマイナス3%台に留まっています。

長期リターンは株式100%に軍配が上がるものの、
2008年でもほとんどマイナスにならなかったのは
個人投資家にとって魅力
でしょう。


ゴールドへの投資比率は小さくて充分

オールシーズンズ 戦略の安定性に貢献しているのはゴールドです。

しかし,、その投資比率はわずか7.5%に過ぎず、
メインの投資先ではありません。

ゴールドを組み入れることによってリターンの安定性は増しますが、
大きくし過ぎるとリターンの水準自体を下げる危険性が増します。

投資資産の成長を重視する資産形成を開始したばかりの層にとって
ゴールドへの投資は極めて優先順位が低いと言えます。

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