普通に生きていると聞きなれない『リバタリアン』という言葉。いったいどこから来た、何を意味する言葉なのでしょう。もちろんオバタリアン（中年女性）でもバタリアン（ゾンビ）でもありません。
その意味するところは「自由を追及する考え方」。こう説明されると、無政府主義（アナーキズム）や共産主義（コミュニズム）の一種かと思う方もおられるでしょうが、それも違います。
リバタリアニズムは多くの人に共感を持ってもらえる考え方です。例えば漫画ワンピースの主人公ルフィの考え方はリバタリアンに近いと言われています。また織田信長の楽市楽座はリバタリアニズムに満ち溢れた経済政策です。
今回はリバタリアンの言葉のルーツを紐解くとともに、どのような考えかたかご紹介したいと思います。
１，リバタリアンという言葉の意味を探る
リバタリアンあるいはリベルタリアンは [ Libertarian ] と英語表記されます。この[ Libert- ]は、『自由の女神像』[ Statue of Liberty ]あるいは『民衆を導く自由』[ La Liberté guidant le peuple ] と同じ意味です。前者は当アカウントのアイコン、後者は本稿のサムネイルですね。
[ Liberty ]は自然発生的な自由を意味する [ freedom ]とはちがい、「戦いを通じて勝ち取った自由」「抑圧からの解放」という意味があります。
同じ語源から発達したリベラル [ Liberal ]が「寛容」を意味しやわらかなイメージを持つのと比較して、[ Liberty ]は主体的でエネルギッシュな印象を持つかと思います。
それもそのはず、リベラリストが自由を政府を通じて配給されるものと考えるのに対し、リバタリアンは「政府は必ず腐敗し、いずれ自由を損なう原因となる」とみなし、「自由は自分自身の手で勝ち取り、不断の努力で維持しなければいずれ失われるもの」と捉えています。
そういった考えを網羅的にまとめたのがハイエクの『隷従への道』で、リバタリアンの教科書とも言えます。
２，右派でも左派でもない新しい価値観
つまりリベラリストが税と再分配による経済的結果平等による社会的自由を目指すのに対し、リバタリアンは経済的自由と社会的自由は同義であると考えています。
一方で伝統的価値観や権威を尊重する保守主義に対抗し、多様性や自由な表現を尊重するのはリベラリストと同じです。
既存の左派（リベラル）と右派（保守）との相違について図示したのが下記のノーランチャートです。リバタリアンの対偶には独裁主義・計画経済が位置付けられています。
既にご存知のように私有財産を禁止し再分配に振り切った共産主義は失敗しました。理由の１つは再分配を差配する政府に権力が集中して独裁国家となったため。もう１つの理由は私有財産の蓄積を禁じ計画経済に傾倒した結果経済成長が阻害されたためです。
そもそも私有財産とはあなたの限りある人生と情熱を消費し、対価として得た自由裁量の権利です。それを最大化しようと創意工夫することが国全体の経済成長へとつながります。
つまりリバタリアンは税や規制を減らすことで個々人の問題意識・アイデア・欲求を最大限発揮させ、自由市場を活性化させることが結果的に国民所得の向上や貧困の減少などへとつながると考えています。
これはまさに信長の楽市楽座に近いコンセプトと言えます。
３，リバタリアンにも色々いるよ
古くはこの括りに無政府主義も含まれていましたが、そういった考え方ならばアナーキストやアナコキャピタリストと名乗ったほうが分かりやすいのではないかと思います。また近年では反動右派（オルト・ライト）がリバタリアンを自称しますが、彼らは名前の通り右派の亜種でしかないのでご勘弁願いたいところです。
そうはいうもののリバタリアンという考え自体に「自由にやろうぜ」という意味が含まれているので、ここまでお読みいただいてリバタリアニズムっていいなって思ったらあなたも広い意味でのリバタリアンの一員です。
じゃあ筆者はと言うと「とても穏健なミナキスト」を自認しています。ミナキズム（最小国家主義）というのは、国家を極限まで縮小したときその役目として残るのは国家間および個人に対する暴力犯罪を抑止し、私有財産と自由市場を守る安全保障であるとするめちゃくちゃシンプルな考え方です。
「とても穏健」というのは、極限まで削ぎ落した骸骨のような国家を実現させようとするのではなく、社会保障を始めある程度の肉付けは自由な幅で検討可能。ただし「現状が最大規模」であり一貫して小さな政府を目指すというスタンスを表しています。
自由主義は寄付文化と密接な関わり合いがあります。この記事が貴方にとって価値があると感じたら、その気持ちを著者に伝える最善の方法がコチラです！