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「ゆるキャン△」で学ぶキリスト教知識

■はじめに


こんばんは。皆さん、待降節をいかがお過ごしですか?

ちなみに待降節は「アドベント」ともいいます。両方を経験したからわかるのですが、基本的にカトリック教会は日本語、プロテスタント教会は英語を使う傾向が強く、例えばカトリックでは「復活祭」「ご復活」というのが一般的ですが、プロテスタントでは「イースター」というのが一般的。同様にカトリックでは「四旬節」「洗礼」「キリスト者」というものを、プロテスタントでは「レント」「バプテスマ」「クリスチャン」というのが一般的です。

こういうところの違いも面白いですよね。

■アニメ「ゆるキャン△」とは

さて、第2回の今回は、アニメ「ゆるキャン△」で、キリスト教の知識を学んでいきましょう。

「ゆるキャン△」は、キャンプや野外活動を楽しむ女子高生たちの物語。アニメのヒットにより、舞台となった地域の聖地巡礼に行く人や、実際にキャンプを始める人も増え、昨今のキャンプブームの火付け役となりました。今最も熱いアニメの一つです。来年2021年1月からはアニメの第2期もスタートします。

僕もこのアニメは大好きで、今は第2期を見ることだけを楽しみに生きていると言っても過言ではありません。(そんなところ太字で強調するなって感じですよね(笑))

ちなみにタイトルの△は、キャンプには欠かせないテントを表しています。今日のキリスト教を成立させるのに大きな役割を果たした使徒パウロは、テント職人をしていました。パウロはかつてはイエスの教えに反発し、信者を迫害していましたが、ある日イエスと出会い、回心してイエスの教えを様々な地域に広めていきました。新約聖書は27の書物から成り立っていますが、そのうち実に13の書物がパウロによって書かれたものです。「キリスト教って、実質『パウロ教』なんじゃね?」という人すらいます。テント職人の仕事は、パウロが宣教活動を始めてからも続けていたようなので、キリスト教の広まりの裏にはテント作りがあった、といえるかもしれません。

さて、ゆるキャン△のあらすじはこんな感じです。

一人のキャンプ(ソロキャンプ)が趣味の、山梨に住む女子高生、志摩リン(しま りん)はある冬の日、いつものようにキャンプをしに本栖湖の湖畔のキャンプ場に出かけます。そこで、静岡から引っ越してきた女子高生、各務原なでしこ(かがみはら なでしこ)と出会います。自転車で本栖湖から富士山を見に来ていたなでしこは、すっかり寝過ごしてしまい、帰れなくなってしまいました。そこでなでしこはリンに助けられて一緒に焚火に当たりながら、富士山の絶景を見ます。それ以来キャンプに興味を持ったなでしこは、転校先の本栖高校にある「野外活動サークル」に入部。部長の大垣千明(おおがき ちあき)や、犬山あおい(いぬやま あおい)らと一緒に、またソロキャンプを愛するリン、リンの友人の斎藤恵那(さいとう えな)らとも交流を深め、アウトドアの世界にのめりこんでいきます。

■キャラクターで学ぶキリスト教知識。リンちゃんの生き方はパウロそのもの

主人公の一人が、志摩リンちゃんです。

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リンちゃんはキャンプ好きな祖父の影響でキャンプを始めました。一人で静かに過ごす「ソロキャンプ」を好みます。今年の流行語にもなったソロキャンプ。流行語大賞の授賞式に登場したのはソロキャンプyoutuber芸人のヒロシさんでしたが、リンちゃんにも賞をあげたいですね(笑)ちなみにヒロシさんは、ドラマ版のゆるキャン△で、本人役として出演して話題になりました。

リンちゃんの影響で、冬キャンプやソロキャンプがブームとなり、元来は「キャンプは夏にやるもの」というイメージは覆され、キャンプ場は冬でも大盛況になりました。ネット上の一部ではリンちゃんは「(キャンプの)シーズンオフを終わらせた女」と称されています(笑)

リンちゃんはあくまでソロ派なので、みんなでワイワイやるキャンプには苦手意識がありましたが、なでしこたちと交流していくうちに「グループのキャンプもそれはそれで面白い」と感じるようになりました。

先述のパウロはコリント人への手紙で、「わたしとしては、皆が私のように独りでいてほしい。しかし、人はそれぞれ神から賜物をいただいているのですから、人によって生き方が違います」(コリント1 7:7)と著しています。パウロは生涯独身を貫き、神に仕えました。カトリックの司祭(神父様)が独身を原則としているのはこの聖句が影響しています。しかしパウロは、できるならみんな独身でいるべきだが、それぞれが賜物を生かして生きるべきであると言い、すべての人に独身であることを強要はしませんでした。

これはゆるキャン△という作品の最大の魅力であると思っているのですが、今までの漫画やアニメなら、「孤独な主人公が、みんなとの出会いを通して仲間の大切さを知り、個人行動を辞めて団体行動にシフトしていく」という内容になると思うのですが、ゆるキャン△は違います。あくまでもリンちゃんは「ソロキャンプが好きで、孤独を愛する」人物であり、「グループキャンプも悪くはないと思うようになったに過ぎない」のです。なでしこや野外活動サークル(通称:野クル)のメンバーも、リンちゃんに自分たちのサークルに入るよう強要はせず、リンちゃんの趣味嗜好、考え方を否定せず受け入れているのです。大げさに言えば、「生き方の多様性」を認め、尊重しているのです。ここがこの作品の特徴であり、魅力なんだと思います。そしてこの考え方は、上記の「人はそれぞれ神から賜物をいただいているのですから、人によって生き方が違います」というパウロの言葉に通じるものがあります。

ちなみにリンちゃんは主に原付バイクにキャンプ道具を積んで移動します。将来の予想図では本格的なオートバイに乗っています。聖コロンバン修道院長は、「オートバイ」の守護聖人です。

■野クルメンバーは個性派揃い

もう一人の主人公・なでしこは、天真爛漫で好奇心旺盛な女の子。リンとは正反対で、みんなでワイワイ過ごすことが好きなタイプです。

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なでしこは食欲がとても旺盛で、大食いエピソードに事欠きません。イエス・キリストも、「見ろ、大食漢で大酒飲みだ」(マタイ11:19、ルカ7:34)と周りから評されていたようです。イエスは神の子ながら、こういった実に人間臭いエピソードも多く、多くの人が親しみを持てる人物だったのでしょう。

「野外活動サークル」の発起人で部長の大垣千明。

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ボーイッシュな言葉遣いで、行動力のあるタイプ。リンやなでしこに比べるとファンが少ないという指摘もありますが、僕的には一番の推しキャラです。

千明はキャンプの知識も豊富で頼りがいがある性格です。キャンプは何かとお金がかかるため高校生にはハードルが高そうですが、千明は持ち前の行動力で打破していきます。ネットで激安のテントを探したり、寝袋の代わりに段ボールや梱包材を体に巻いてみたり、飲み終わった空き缶でアルコールストーブを作ったり・・・と、資金不足をアイデアで補っていきます。

キリスト教界屈指のアイデアマンといえば、あのマザー・テレサ。かつてのローマ教皇・パウロ6世がインド滞在中に乗っていた高級車をマザーにプレゼントしましたが、彼女はなんとその高級車を一等の商品にした宝くじを開催し、くじの売上金を貧しい人々の収容施設を建てる費用にしてしまいました。この案には反対の声もありましたが、「貧しい人のためになるのなら教皇様もお許しくださるでしょう。それに私は歩けますし」と言ったそうです。さすがマザー。凄すぎます。

ちなみにマザー・テレサは2016年に現教皇・フランシスコにより列聖され、聖人となりました。聖人としては「コルカタの聖テレサ」というのが正式な名前です。

千明の親友で野クル発起人の一人であるあおい(通称・イヌ子)。

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おっとりとした性格でみんなをまとめるお姉さんタイプ。関西弁ののほほんとした喋り方が特徴です。しっかり者に見えますが、実は冗談が好きで、よくホラ話を吹いてみんなを騙します。騙されたところで、「嘘やで~」とおどけて見せるのが定番。

旧約聖書の続編(カトリックと正教会が正式に旧約聖書の含めている)の「シラ書」は教訓話が多く載っていますが、その中には「ほら吹きと無分別なものは、時をかまわず、しゃべりまくる」(シラ20:7)とあります。口は災いのもと、的なことでしょうか。冗談はほどほどにしましょう。

イヌ子は劇中のキャンプですき焼きを作りましたが、すき焼きなどの鍋料理で連想するのはやはり救世軍「社会鍋」でしょう。救世軍はプロテスタントのメソジスト派から派生した一派で、慈善活動に力を入れているのが特徴です。組織が軍隊に倣っているのが特徴で、信者は「兵士」牧師は「士官」教会は「小隊」と呼ばれます。

社会鍋は、元々はアメリカの救世軍がスープ鍋を三脚に吊るし、街頭で募金を呼びかけたことに端を発するもので、日本においても現在に至るまで年末の風物詩として定着しています。

■恵那ちゃん、鳥羽先生で学ぶキリスト教と動物とお酒

リンの友人の恵那は、帰宅部で、キャンプもしていませんでしたが、野クルメンバーにクリスマスキャンプに誘われたことがきっかけでキャンプに興味を持つようになりました。

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社交的な性格で、人づきあいの苦手なリンをよくサポートしています。恵那は「ちくわ」という名前のチワワを飼っています。昨年の10月4日、「世界動物の日」には、メキシコにあるアッシジの聖フランシスコ教会において、チワワが司祭の祝福を受けました。ちなみにアッシジの聖フランシスコは、「ペット」の守護聖人でもあります。

野クルの顧問を務める鳥羽美波(とば みなみ)先生は、「グビ姉」と呼ばれるほどの無類の酒好きです。

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酒は飲んでも飲まれるな、ということでお酒はほどほどにしましょうね。ちなみによく誤解されがちですが、キリスト教では基本的に酒を禁じていません。プロテスタントの一部、ペンテコステ派や救世軍などは禁酒が原則のようですが、少なくとも、伝統的教派のカトリックや正教会、聖公会、ルーテル教会などは飲酒は罪としていません。そもそもミサで司祭が葡萄酒をキリストの血として飲んでるわけですからね。

以上、ゆるキャン△で学ぶキリスト教知識をお送りしました。

第2期の放送が待ち遠しい。早く年が明けてほしいです。

ではまた!

2021.4.12一部修正

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