無力タービン

錆ブリキのタービンは何処ぞの悪趣味孕む手が拵えたらしい。風力の代替には重油雨天を欲す姿よ、憐れに遭われる無様、醒む狭間。
燃料を喰わせればキイキイと歓喜の泣きを携え其れは次第に円を描く。我身に縁無き差出す手は、嘸や甘かろう、旨かろう。
靴裏を喰らおうと虎視眈々、泥濘は風車とは補色関係に在り。黙した目視を此方に寄せては孵す残像。
過去の梯子を遡る如き所作。手首から二の腕へ向かい徐々に薄み消え掛かる傷、ふた指を足に見立てて僅かずつ、登る、昂る。
だが決して忘却に暴虐を記憶鍋にて蒸化させられやせず、此の身を庇護してはくれまいかと面を上げた。錆ブリキは揚々、北風を満喫しているらしい。目下、(彼の相貌に双眸は窺えぬが)惨めを撒散らすヒトモドキには興味の端切に棲む筈の直角も掴ませては貰えぬ。
錆付く茶けて絶えず快さげにキイキイ唄い躍る姿に嫉妬、羨望、悲観、希死。嗚呼あれのように、指の先から、新く剃刀で裂く血管、血潮の溢れた所から、錆付き一息、月夜に尽きない思い付き。

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