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ノンアル・ライフ

 いわゆる「酒」を飲まなくなって、7年になります。アルコール類の摂取に関して、ドクター・ストップになったためです。今となっては、飲みたいという願望は無くなりました。しかし、様々な場面で、ありとあらゆる酒類を飲み尽くしたという思いは、その強烈さ故に今も残っています。

 まず、一晩で飲んだ酒量記録!職場全体の宴会の後に同僚と行った居酒屋。一次会でも散々飲んでいる状態なのに、2人で2升半!これが、最高記録です。飲んだ後、自宅に帰り、普通に寝て、翌日は普通に授業、部活をしていました。その朝は、完全なる二日酔い状態であり、今なら逮捕、懲戒免職ものだったはずです。豪快な飲みっぷりでした。

 さて、ホッピーという飲み物を、ご存知でしょうか?大ジョッキに氷を入れて、気抜けビールの味のホッピーと大量の焼酎を入れてかき混ぜた超安酒。これを2杯飲んだら、もうベロベロになる、実にリーズナブルな飲み物でした。通称「千ベロ(¥1,000でベロベロに酔っ払える)」と呼んでいました。

 地元にUターンする前は、ただ気楽に飲んで騒いで、楽しい思い出ばかりでした。しかし、地元での飲み会は、あんまりいい記憶がありません。週に3回は、先輩たちのワガママで飲み会はルーティン化。それにフォーマルな飲み会が入れば、更に増えて、月曜日から金曜日まで5日連続の飲み会も、珍しいことではありませんでした。嘘だと思うのは、そんな経験がないからですよ。

 思い出すのは、大きなヤカンでお燗された日本酒。これを盃ではなく、ビール用の小コップで飲むんです。それに、先輩たちの長い説教が付随します。そんな会は、世代交代とともに消えていきました。悪習をストップさせたのは、我々の世代です。仕方なく続けられていることは、どんどん破壊して、うまい酒が飲める環境にしていきました。

 飲み会は、日頃の緊張感を緩め、何も役に立たない話をして盛り上がるのが、王道だと思います。つまり、飲んでしゃべって、カタルシスを感じられれば、それでいいのです。飲み会に理由やタイトルなど不要です。しかし、職業柄、フォーマルかつお祝いをする飲み会の数々も、思い出に残っています。

 それは、中3の教え子たちとの、節目節目の再会です。まずは成人式のお祝い。酒の飲み方も知らない連中。急性アルコール中毒もどきの介抱は、いつものことでした。何を飲むかと聞かれて「日本酒」と答えると、ビールの大ジョッキに燗酒お銚子2本がドドド入れられて、「どうぞ」ときたもんだ。それを平然と一気飲みする私。イタズラな教え子たちの、びっくり仰天の目が、可愛いこと。

 次は女性の厄年33の歳祝い。中学生だった女の子たちが、ググッと色っぽくなって見えました。しかし、話せば当時のまんま。ぶりっ子していた頃が、ただ懐かしい。話題としては、主として子どもの話でした。子育ての悩み相談に早変わりということも、よくありました。適度に騒いで、楽しい時間を過ごしました。

 次は、男性の42の歳祝い。既に社会の中枢で働いている頼もしい男たち。シブいと言うか、頼もしいと言うか、物腰も落ち着いてグラスを傾けている姿には、貫禄さえ感じられました。一番厄介かけた奴が起業して、社長の椅子にふんぞり返っているなどという話を聞き、機嫌良く盃を重ねました。

 目の前に「平成元年度卒業生一同と記された焼き杉のミニ箪笥があります。行く先々の職場のマイ・デスクに、これを必ず置いていました。社会人40年目の今も、薄汚れつつも、机の上に置いてあります。今年は、平成36年です。あの時15歳だった教え子たちも、50を越えました。次は、還暦です。それまで生きていたらと思うことしきり。

 このように、中3の教え子たちとは、一生の付き合いです。まさに、教師の醍醐味と言える幸せな立場です。卒業生を出す重みをズシリと感じます。こうしたお祝いに招待されるのは。高校でも小学校でもなく、中学年の担当者です。それぞれの人生のステージを共にできるなんて、他にはあり得ないことなのですから、たまりません。

 このように「ハレ」の時も、「ケ」の時も大酒喰らってきました。もう飲み尽くした感じと断言できるほど飲んで、遂に肝臓を壊してしまいました。

 主治医は、こう説明してくれました。

「コップに注ぎ続けた水が、やがてお溢れるように、酒も飲む量にリミットがある。それを超えてしまったんですよ」
「あなたは大きな川を渡らずに済みました。肝臓には、特別な薬も治療法もありません。要は、自分の生活を律するか否かどうかにかかっているんですよ」

 言われた言葉が、心にストンと落ちたのと同時に、アルコール飲料は一滴も飲まなくなりました。もちろん、ノンアルコール・ビールすら飲んでいません。決めたからには徹底するのが、私の信条です。

 夜が長くなりました。その分だけ、生活が豊かになりました。飲酒している時などは、思いもつかないアイディアが湧き出て、自分のやりたいことが、ボヤけることもありません。改めて、考えることの楽しさを満喫するようになりました。

 数々の駄文は、こういう経緯で生み出されました。「酒・タバコ、そしてオンナ、3つとも縁のない生活が、こんなにいいものなのか。少年の感性に戻ったような、清々しい気分で生活しています。そして、自己表現しています。こんなノンアル・ライフを、心から楽しんでいます。依存症のような生活は、もう二度とあり得ません。

 酒を飲まないと夜を感じられなくなっている、依存症のあなた。酒飲んでいる人は、思考停止状態に気づき、豊かな生活に変えてみませんか??お誘い申し上げます。



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