現実と夢と

ふわふわと浮いているみたい。雲の上でも歩いているのかと錯覚してしまう。隣にいる君がこちらの顔を覗き込む。会話はない。ただ、見つめ合うだけ。赤くなった事に気付かれないように顔を逸らしてしまう。君はこちらに近づき私の頬に手を当てる。冷たい。心臓の音が煩い。
理性なんてとうに無くなっている。君の全てを奪えたら。私を見つめるその顔も、甘ったるい声も、血管が浮き出て骨ばったこの手も、全部独り占めしたい。
ああ、これは夢だろうか?いつもの君は私のことなんて興味無いみたいにあしらうのに。このままずっと今が続けばいいのに。明日になればいつもの2人に戻るのでしょう?私だけの君に、なってはくれないのでしょう?
だったら、忘れなれない日にしてあげる。ずっとずっと、私のことでいっぱいになればいい。
君の身体を抱き寄せて、そっとキスをする。君は目を見開いた。顔が赤い。私が笑っていると君はムッとした表情を見せ、手を繋いできた。精一杯の反撃のつもりなところも愛おしい。
君の表情も緩み、そのまま歩き出す。
家に着き、挨拶を済ませて中に入ろうとすると腕を掴まれ、考える暇もなく君の顔が目の前に現れる。君はまた照れた様子で、でも満足気に来た道を戻って行った。
やられた。これでは私の方が君を忘れられないじゃないか。

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