見出し画像

南の島も笑ってる 第5回

2日目。
この日から本格的な探検が始まります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日、2人の間抜けな探検隊はカヌーを漕いでいた。
天気は昨日に引き続き超快晴。昨日と同じ抜けるような青い空に白い雲がベタっと張り付いている。今日も一日暑くなりそうである。
今日は沖縄一の大瀑布と名高いヒナイサーラの滝への探検だ。船浦湾からヒナイ川という川をカヌーで遡っていく。途中の船着き場でカヌーを降り、そこから徒歩で滝へ向かっていくとお目当ての滝に着くというコースである。
船浦湾は湾内を歩いても移動できるくらいの浅い浅い海である。干潮時は干潟になりカヌーが漕げなくなってしまうため、移動をするのであれば満潮時を狙わなければならない。
なので我々が漕ぎだしたのは9時というやや遅めと言ってもいいくらいの時間であった。カヌーは近所の民宿で借りた、2人乗りのカナディアンカヌーである。

湾を抜け、流れのない川をカヌーでゆるゆると進んでいくと川幅が次第に狭くなり、左右にマングローブのジャングルが迫ってきた。
いよいよヒナイ川に入ってきたようである。
マングローブは植物の名前でなく、ヒルギという植物の仲間が作る群生森林のことである。ヒルギは気温が高く、海水と淡水の入り混じった場所にしか生えない。よってこんな熱帯の島でしかお目にかかれない貴重な植物というわけである。細かい根が縦横無尽に張り巡らされており、泥で濁った川からもウネウネと突き出ている。
上を見上げれば空を覆い隠すような濃い緑。けたたましいセミの鳴き声の中、薄暗いジャングルの中の細い川をカヌーで進む我々、ムード満点である。これでワニでも出てくればいうことなしだが、さすがに野生のワニは日本にはいない。

俺は持ってきた一眼レフカメラ、ミノルタα7700iで写真を撮りまくった。
このカメラは去年西表島に行った後に買った代物である。島の景色にいたく感動した俺は今度来るときは絶対にもっといいカメラでこの景色を撮ってやるぞと誓ったのであった。
カメラは少々高かったが、奮発していい物を買った。世界初のオートフォーカスを一眼レフに採用したミノルタのカメラだ。
いわばこのカメラで写真を撮ることもこの旅の目的だったわけである。
ただ1人が真面目に漕がずにすぐに撮影会に入ってしまうため、カヌーはあっちへ行ったりこっちへ行ったり。蛇行しながらなかなかまっすぐ進まないのであった。

川の水が次第に澄んできた。そろそろ船着き場に着くようである。
かわもゴツゴツした岩が増えてきたようなので、これ以上の遡行は無理なようである。
杭にカヌーをもやい、カッコよく岸に飛び移ろうとした俺であったが、見事に川に転落してしまった。
あっという間にピラニアの大群に襲われ哀れ骨だけに、、、とはならなかったが、危うく自慢のカメラを水没させるところであった。西表島を撮るために買ったカメラを、撮った写真を見ることもないままおしゃかにしてしまっては洒落にもならない。

我々は滝壺へと向かった。

(続く)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?