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(#12)脱神経したラットの筋の質量と力を維持するための収縮回数


【是非こんな方に読んでほしい】

この論文は、筋萎縮や筋力低下に関心がある理学療法士、リハビリ専門家、スポーツ医療従事者、および電気刺激療法に関心を持つ研究者に有用です。特に、筋の脱神経に対する電気刺激の効果や、その最適な刺激パラメータを知りたい方に役立ちます。

【論文内の肯定的な意見】

  • 200〜800回のテタヌス収縮を行うことで、脱神経した筋の質量と力が維持される。

  • 電気刺激により、筋萎縮と筋力低下を抑制する効果があることが確認された。

  • 一部のプロトコルでは、筋繊維の断面積(CSA)が増加し、筋肥大が観察された。

※強縮(テタヌス, tetanus)
 頻回の活動電位に対して, 持続的な収縮が起こる

【論文内の否定的な意見】

  • 200回以下の収縮では、筋の質量や力を十分に維持できなかった。

  • 800回を超える収縮では、筋力が低下し、過剰な収縮は有害である可能性が示唆された。

  • 動物モデルに基づいているため、ヒトへの応用にはさらなる研究が必要。

論文の要約

Background

脱神経した筋肉は、質量の減少、筋力低下、筋繊維の断面積(CSA)の縮小を経験します。電気刺激によって筋収縮を引き起こすことで、これらの筋萎縮を抑制することが可能であることが示されています。本研究の目的は、1日に行われる筋収縮回数が、筋肉の質量や力の維持にどのように影響を与えるかを調査することです。

Method

79匹のラットを使用し、脱神経した筋に対してさまざまな収縮回数(1日あたり25回から5000回)を適用しました。電気刺激は1日24時間行われ、筋肉の質量、最大力(Po)、CSAなどを5週間後に測定しました。収縮の間隔や刺激の強度は一定に保たれ、各収縮は100Hzの20パルスで構成されました。

【ラットの脱神経手術】
ラットの後肢にある長趾伸筋を脱神経するため、坐骨神経を切断しました。この操作によって筋が神経支配を失い、筋力が低下し、筋萎縮が進行するモデルを作成しました。

【電気刺激の設定】
脱神経した筋に電気刺激を行うため、筋に電極を装着し、特定の周波数や強度で電気的に筋収縮を誘発しました。

  • 収縮の周波数:100Hz

  • 刺激の構成:各収縮は20パルスで構成

  • 収縮回数:1日あたり25回から5000回の収縮を行う群に分けました。

  • 刺激期間:筋収縮は1日に24時間かけて行われました。

これを5週間継続し、収縮回数の違いが筋の質量や筋力、筋繊維の断面積(CSA)に与える影響を調査しました。

【測定】
実験終了後に、各グループの筋肉について以下のパラメータを測定しました。

  • 筋肉の質量:脱神経した筋肉の重量を測定し、筋萎縮の程度を評価。

  • 最大力(Po):筋肉が発揮できる最大の力を測定し、筋力の低下を評価。

  • 筋繊維の断面積(CSA):筋繊維のサイズを測定し、筋肉の萎縮の程度を確認。

【実験グループ】
実験では、収縮回数の違いに基づいて以下の6つのグループにラットを分けました。

  • 1. コントロールグループ:脱神経したものの、電気刺激を行わないグループ。筋萎縮や筋力低下が自然に進行する状態を確認。

  • 2. 25回収縮グループ:1日あたり25回の収縮を行ったグループ。

  • 3. 200回収縮グループ:1日あたり200回の収縮を行ったグループ。

  • 4. 800回収縮グループ:1日あたり800回の収縮を行ったグループ。

  • 5. 2500回収縮グループ:1日あたり2500回の収縮を行ったグループ。

  • 6. 5000回収縮グループ:1日あたり5000回の収縮を行ったグループ。

各グループでは、収縮回数が異なるだけで、他の条件(電気刺激の強度、周波数、期間)は統一されていました。

この方法により、筋収縮の回数が筋肉の質量、力、断面積に与える影響が評価されました。

Results

200〜800回の収縮を行ったグループでは、筋の質量と力がコントロールグループと同等に維持されました。収縮回数が200回以下の場合、質量と力は大幅に減少し、特に25回の収縮では筋力がコントロールの54%まで低下しました。一方、5000回の収縮を行ったグループでは、筋力の低下が見られましたが、質量やCSAは依然として維持されました。

Conculusion

200〜800回の筋収縮は、脱神経した筋の質量と力を効果的に維持するための最適なプロトコルであることが示されました。過度の収縮(800回以上)は筋力低下を引き起こす可能性があり、また少なすぎる収縮(200回未満)は筋萎縮を十分に防げないことがわかりました。これにより、電気刺激を使用したリハビリテーションにおける適切な収縮回数の重要性が明らかになりました。


限界点

  • 動物モデルでの研究であり、ヒトへの適用にはさらなる検証が必要。

  • 5000回以上の収縮が筋力に与える影響については、さらなる研究が必要。


読者が得られるポイント

  • 1日に200〜800回の筋収縮が、筋萎縮と筋力低下を効果的に抑制する。

  • 電気刺激による筋収縮は、適切な回数で行うことで、脱神経した筋の質量と力を維持できる。

  • 過度の収縮は筋力低下を引き起こす可能性があるため、収縮回数の適切な設定が重要。


ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

Dow DE, Cederna PS, Hassett CA, et al. Number of contractions to maintain mass and force of a denervated rat muscle. Muscle Nerve. 2004;30:77–86.
DOI:
10.1002/mus.20054.


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