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お馬さんがキューピット

1998年7月12日。
競馬界のドリームレース、宝塚記念の日だ。
私たちは阪神競馬場へ出かける前に、市役所に寄った。婚姻届を出すためだ。

「宝塚記念の日に婚姻届を出そう」と決めていたのには、訳がある。

2年前、参加していたネットの競馬サークルで、初めてのオフ会が行われた。この日が宝塚記念の日だったのだ。阪神競馬場のグッズショップの前で集合したが、顔も本名も知らない人と会うのは緊張した。

関西近郊から集まったメンバーが中心の中、一人だけ関東から遠征してきたメンバーがいた。
私は「よっぽど競馬好きなんだな」としか思っていなかったけれど、向こうは私のことが気になっていたらしい。これが、のちの夫だ。

その年の有馬記念のこと。「中山競馬場まで見に来ないか」と誘われた。有馬前日にお台場でデート、告白されたのもこの時だ。

翌年のダービーで、「毎年一緒にダービー見ようね」とプロポーズ。私は大阪在住、彼は東京在住。遠距離恋愛が続いていた。

正直、このままのお付き合いは辛かった。「はい」と答えたものの、私は生まれてこのかた大阪を離れたことがない。常に不安が付きまとっていた。

結婚話が進むにつれ、いつ婚姻届を出すのか相談した。
「宝塚記念しかないよね」

1998年の宝塚記念、勝ったのはサイレンススズカ。

あれから今年で25年。ケンカばかりだったけど、よくやってこれたと思う。テレビを見ながら、よく夫婦でレースの検討をしている。
勝った方は、負けた方に「ドトール」でおごるのが、最近の定番だ。

JRAには心から感謝している。とても足を向けて寝られない。

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