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TAM DAOと出会った話。

ディプティックの香水で、最初に出会ったのはタムダオだった。
神社仏閣巡りが好きなので、お寺の匂いとか神社っぽい香りみたいなレビューを見るとどうしても気になった。特にウッディーだのアコードだのよくわからんぞい、という頃はそういった身近な香りを挙げてくれるレビューの方がわかりやすく、そこで偶然見つけて気になったのがタムダオ。そして未知のブランド、ディプティックだった。
次の休日にはもう店舗へ向かっていた。今まで香水を試しにブティックに入るという経験が全く無かったため、お店のお姉さんには借りてきたキヌゲネズミ(※ハムスターです)みたいな客に見えたと思う。でもめちゃくちゃ優しく色々教えてくれたしもういいよっていうくらいムエット吹いてくれたので、だいぶ敷居が低くなった。お姉さんその節はありがとうございます。
そしてドキドキしながら初ディプティックでタムダオのODPを嗅いでみた……のだが、こやつ、恐ろしくクセの強い香りだったのだ。その時点では購入第一希望だったので右腕に吹いてもらい、おおお……となって早々に他のものを色々試させてもらった。タムダオと重ね付けするのが怖くてあとは全部ムエットにしてもらう。今思うとこれで正解だった。電車とか乗るし。
結果お店を出た後には体臭がタムダオになっていたわけだが、時間が経っても香りが印象的すぎたのでそのあとカフェに入って誰も読む予定のないレビューというか経過観察をだらだら書き殴った。

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ねっとり。しっぽり。それでいてスルスルと逃げていくイメージ。
掴みどころがない。安置がない。掴ませない。流行は追わない。周りに合わせる気はない。ただそこにいて、存在感を放つ。
気になって突いたら最後、向こうの思う壺、みたいな危うさがある。
内面が変質的で執念深い。あえて花の匂いを外したセクシーさ。それは自分の容姿と経験からの底無しの自信かもしれない。でも華やかではない。内側から静かに湧き上がる自信。

具体的に言えばギリっとした香りの花。百合とかそういう、重厚なやつ。もしくはウッディ。これサンダルウッドか?暑い地方で出されるミルク。寺院……日本で言う寺院の線香とか抹香臭さをベトナム版にした感じか。インドの寺院……とも少し違う。これがベトナム感なのかな。
突然出てくるバニラっぽい甘さ。そして凝縮された木材の香り。これ林業の方じゃないと嗅げないやつ。そのくらい濃い木材。濃すぎて普段手にする木材の香りだとは一瞬気づかなかった。あえていうならとろりと溶けた樹木。樹液ではなくて樹木。あんなに透明でサラサラした液体から濃縮されたヒノキの角材の香りがするの面白い。焦茶。直線ではなく曲線がいく層にも重なった年輪みたいな模様。

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大体お店で拭いた直後から1時間後くらいの感想がこれ。ほぼ無編集である。褒めてない。褒めてないんだけどなんかすごい複雑で嗅いだことのない香料が入っている気がする……みたいな、冷静に見てみると「お前にはまだディプティックは早いんじゃないの?」って言われること請け合いな感想だった。
まさかこんな形でネットの海に流すとは思わなかったけど、なんとなくこれを機に自分の直感を文章にすると面白い(※当社比)ということがわかった一件だった。

ちなみに、その場でお姉さんに頼んでODTの方も試させてもらった。これは家に帰ってから記憶を頼りに書いたもの。

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タムダオ ODT

やはり少し香りが薄い?(Pに比べて)
膜がかかったような香り方。はっきりしてない。甘さが前に立つ感じ。万人向けなのはこっちだが強烈な個性はODPの方。ODPをまろやかにした感じ。場所をえらばないのは良いですね。
アンバーグリスはなんと竜涎香でした。(訳注・お姉さんにメイン香料を聞いた)まじか……今度しっかりラストを感じたいな。憧れのリュウゼンコウ。
トップの香りが好きくない気がする……付けてしばらくした香りはそこまで抵抗がないというか、なんか近くで嗅ぎすぎた?最初に香るのはサンダルウッド・・・?ローズウッドではないのか。とにかく最初に感じていた生々しい感じというか生物の体臭感はトップなのかな。

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リュウゼンコウ、はるか昔に名前がカッコイイという理由だけで憧れていた。何の匂いがメインなのか全然わからなかったので素直にお姉さんに尋ねたら、憧れの香料の名前が出てきて感動した。

ODPとODTを比べてどうこう、というのは、その時の私にはいまいちピンとこなかった。今思い返してみると深さが違うのだろうか。タムダオ自体はディプティックの中でも人気の銘柄らしくいろんな方が嗅ぎ比べレビューをしてくれているので、まだ嗅いだことがなくて興味のある方はこんな辺鄙なところじゃなくてそういうしっかりした嗅覚と頭脳を持ったレビュアーさんを探してください。というかなぜここに来てしまったのか。読まない方がいいですよ。

思わず卑屈になってしまうくらいに、タムダオは初心者の自分にとって奇怪で独特な香りだったのだ。
漫画で言うと諸星大二郎系(※個人の感想です)。香水素人の自分には妖魔に近い妖艶さと複雑怪奇さ。これは正直もっともっといろんな香りをこの身で経験してから改めて嗅いでみたい香りだった。ディプティックの店舗で真っ先に試すにはマニアックすぎた気がする。

しかし、せっかく普段は行かないエリアの店舗まで来たのだ。手ぶらで帰る気はあまり無かった。次回はムエットで試したものと購入したものの話をしよう。


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