見出し画像

東大先端研創発戦略研究オープンラボ(ROLES)設立のご挨拶

創発戦略研究オープンラボ=ROLES

 東京大学先端科学技術研究センター(先端研・RCAST)では、グローバルセキュリティ・宗教分野(池内恵教授)が主導して、2020年度の開始から、先端研・創発戦略研究オープンラボ(RCAST Open Laboratory for Emergence Strategies)の開設を準備してきました。必要な行政的手続きを済ませ、この度、9月から正式に発足いたしました。皆様、なにとぞよろしくお願いいたします。

 先端研・創発戦略研究オープンラボ、略称は、英語名称の頭文字を取って「ROLES」。

 ROLESの運営主体は教授が1名、特任助教が1名に、特任研究員が4名(9月1日現在)のまだまだ小所帯ですが、来年度までには、准教授が1名加わる予定です。若手の特任研究員も、順次加わっていただくことになっています。

 ROLESではリアルタイムの成果発信やプロジェクト推進報告のために、専用のウェブサイトを設立するべく、ただいま準備を進めています。はい、そのために予算思いっきり積みました(威張ってます)。

 さまざまな機能を完備したウェブサイトを作るのには、それなりの時間がかかるので、完成するまでの間、最近はやりのNoteなるものを用いて、臨時の、簡易なウェブサイトとして、設立過程の研究組織の活動報告をしていきたいと思います。

何故、「オープンラボ」なのか

 さて、ROLESとは。

 これは大学が真の意味でのシンクタンクとして社会で役割を発揮するための、舞台設定です。

 そもそも大学とは、元来が、本来の意味でのシンクタンクであるはずです。しかし現在の日本で、大学のシンクタンクとしての役割はそれほどよく見えていないのではないでしょうか。

 ROLESは、東大の附置研究所である先端研の豊かなリソースを活用し、大学の社会の中での役割(Roles)を問い直し、本来の意味での「シンクタンク」として、そのあり方を再確認し、再定義します。

 これは「オープンラボ」として設定しました。

「オープンラボ」とは、すなわち部局(大学用語で、「何々学部」や「何々研究科」あるいは「何々研究所」といった自律的な基本構成単位のことを指します)でもなく、学科や研究室でもなく、あるいは大学院の専攻でもありません。それらの諸単位やそれらに属す研究者が、研究上で自由に交差し、協力することのできる場です。

 気分は一つのシンクタンク。ただし、きわめて風通しの良い、ほとんど壁もないような、平たい広い床、あるいは大きな大きな作業机を用意した、そのようなイメージです。

 人文社会系が中心ですから(理系との連携の可能性もありますが)、共通の実験施設などを設けることはあまりないでしょうが、普段は行政的・制度的理由で協力がしにくい研究者同士が、自由に交流し、情報を集め、ものを考えていく、そのための「場」を設定しました。

 この「場」に、大学の外から、今現在の緊急な国際問題に密接に結びついたさまざまなプロジェクトを呼び込み、社会との接点と相互交流を、積極的に生み出していきます。

 関係先は国内の官庁や企業はもちろん、諸外国の大学やシンクタンクを想定し、各国の政府機関や企業との関係も、積極的に作っていきます。

 複数のプロジェクトが、十分に余裕のある大きな作業机の上で(ソーシャル・ディスタンス!)、お互いに邪魔にならないように、けれども必要な時や、有益な時には気軽に連携できるように、部局や大学全体の組織的意思決定、官庁や企業のしがらみやしきたりを最大限外した、緩やかな開放的な組織を、東大先端研内に設立しました。

ROLESが挑戦する「創発」

 ROLESという平場に集まってくる研究者たちが取り組むのは、「創発(Emergence)」です。

「創発を戦略的に研究する」とは、何かが発生すること、その何かが起こる瞬間を見届け、そこから生じる緊急事態(Emergency)を見落とさず、そこに現れる機会を見逃さず、つかみ取ること。ROLESをそのための場とします。

 大学とは本来、そのような期待と不安に満ちた場であったはずです。

 発足時点で、ROLESが実施するプロジェクトには、外交・安全保障調査研究事業費補助金(総合事業)に採択された「体制間競争の時代における日本の選択肢:国際秩序創発に積極的関与を行うための政策提言・情報発信とそれを支える長期シナリオプランニング」や、インペックスソリューションズ株式会社と共同で設立し運営する中東地域情勢研究会があります。

 さらに、ROLES所属の研究者が東京大学大学院総合文化研究科の「グローバル・スタディーズ・イニシアティヴ(Global Studies Initiative, GSI)」構想に基づいて東京大学グローバル地域研究機構(IAGS)が推進するプロジェクト「GSIキャラバン」に応募して採択された「中東国際政治における主要地域大国と域外大国の関係をめぐる実施調査と対話」も、ROLESを舞台に部局を横断し、国際的に連携する事業です。

 その他、池内研に所属する研究者が科研費等で実施するプロジェクトも、次々にROLESといういわば「作業台」の上に乗り、相互に協力しながら、羽ばたいていきます。

 これらのROLESに集うプロジェクトには、先端研のグローバルセキュリティ・宗教分野に属する研究者が、先端研内の文系・理系を横断し超越したさまざまな分野の研究室と共に、東大の学内の諸部局、例えば総合文化研究科、東洋文化研究所、人文社会系研究科などに所属する研究者・研究室と協力しながら、取り組んでいきます。

 なお、ROLESに集まる外部資金、あるいは部局横断の予算によるプロジェクトでは、何よりも優先して「若手研究者の人件費」「研究推進を補助するための人件費」を計上し、持続的な研究態勢の構築と世代間継承のモデル化を図っています。

 ROLESへの皆様のご注目、そして幅広い分野での参加とご協力を願って止みません。


2020年9月1日
ROLES代表、池内恵



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?