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朝の月を見る

当直の仕事を終えて、朝の空に月を見る。朝の月は白く見えます。
以前勤務していた病院の性格上、大抵は夜間当直医の間に看取った患者さんのお見送りです。
数名のスタッフと家族と一緒に患者さんを乗せたストレッチャー、これは葬儀屋さんが持ってきてくれたものなのですがを一緒に押してお車へ移動します。
ヨイショっとなど声をあげずに、今までお疲れさまでした、安らかにと祈りながら車中へ、そして病院スタッフは最後のあいさつに深くお辞儀をして車を見送ります。
車が敷地外へ出た後、空を見上げると朝の空に月が出ています。
お月様も患者さんを見送りに来てくれたのか、静かな朝の時間でした。

今朝、6時前に実家から飛行機の時間に合わせて出たときも朝の月を見ました。
早起きの両親はすでに起きていて、母はベッドから父はその隣の椅子に座って、「また来てね」、「遠いところをご苦労さん」との声に見送られて、太陽が昇る前の静かな時間に家を出たのです。
来週の週末にはまた来るのに少し寂しい気持ちになりました。
外に出ると満月から少し欠けてきた月が大きく見えました。

朝の月は私には生命の終わりを連想させます。

タクシーの車窓からは、しばらくすると京浜工業地帯の煙突の向こうに朝日が昇ってきました。
生きている、町が人が活動を始めました。


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