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家族の力を信じる支援

行動したいAさんと家にいてほしい奥さんへの支援を考える


Aさんは高次脳機能障害があり、記憶の障害があります。
体力がある壮年の男性です。
また、周囲の状況にかまわず自分なりの考えだけで行動してしまうところがあり、奥さんは禁止されている車の運転をしないように常に気を配っていなければなりません。
もともと事業をしていたAさんは顔も広く、マヒがなく歩くことができるので、出来ることも多いのです。障害を得てからは、今は仕事をしていません。

奥さんはAさんが外出して事故に遭うのを恐れて、外に出るのをやめさせてくれと言います。
でも、車の運転をあきらめたAさんは公共の交通機関を利用して、あるいは自転車で外出を楽しみたい。

以前は遠くに行きすぎて奥さんに迎えに来てもらったこともありました。
最近、Aさんはときどき、奥さんには言わないで遠出をすることがあります。
奥さんはウソをつかれているように感じています。
それなので、支援者に外出しないように言ってほしいと相談してくるのです。

最初の、お迎え事件からは数年たっています。
外出を禁止して自宅にだけいてAさんが楽しく生活できるのでしょうか?

奥さんからは相談は
○○させないように言ってください。私の言うことは聴かないから。
けんかになってしまう。
先生から話してください。
毎週のように奥さんの心配事はあります。

支援者が奥さんの意向に沿ってAさんに行動制限をかけていて良いのでしょうか?
それが私の今の疑問です。
家族関係は事故が起こってから変わるはずでした。
障害を得る前、Aさんは奥さんの意見は聞かずにいろいろな事業を行ってきました。
奥さんは不満があってもAさんが働いていたので我慢していたのかもしれません。

今はAさんは仕事をしていない、奥さんは仕事をしています。
奥さんとしては、私が安心して仕事ができるように、せめて心配かけないでほしいというところが本音かもしれません。

ただ、奥さんの代わりに、支援者が一方的にAさんに行動制限することが本来の問題解決にならないと思っています。
奥さんとAさんが話し合いができる関係になれるように助けることが必要です。
奥さんは
自分がAさんのことを心配していること、
大きな病気から回復して元気になったので健康を大事にしてほしいことを話す。
Aさんは自分が今やりたいこと。
自分ななぜ行動制限されているかわからない、
自分としては車の運転はやめた、自転車や歩きで外に出かけるのも禁止されている理由を聞く

時には言い合いになりながら、何とかやっていくことが必要な時期です。
奥さんも以前の奥さんではないはず、
Aさんも数年前の発症直後のAさんとは違います。
家族の形が変わっても家族の力を信じたいと思っています。

支援者が命令のように禁止してしまうのではなく、時間がかかっても家族の新しい関係構築を後押しする支援を考えていきたいです。

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