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ハイブランドの効用 セリーヌのカバファントム

「おのさんには絶対にセリーヌ。セリーヌのカバファントムが似合いますよ」
と、バッグフリークの人に言われた。これまで数々のバッグをコレクションし、気に入らなくなったら容赦なくメルカリで売り捌いてきた人だ。

鞄は、服よりも買うのが難しい。
服は試着して少し動いてみれば、着心地がわかる。
鞄はそうはいかない。店頭で持たせてもらって鏡で自分に似合っているか見ることはあるけれど、まだ買ってもないバッグに普段持ち歩く私物を遠慮なく詰め込んで使用感を確かめるわけにはいかない。
なので、店頭ではすごくいい感じだと思ったけど、実際に荷物を入れて使ってみると、案外使いにくいな、重いな、細いベルトが肩に食い込んで痛いなとか、実際に開け閉めしてみるとファスナーがスムーズでないな、というのとがようやくわかる。

なので、鞄選びは、そのバッグを実際に使ったことのあるバッグフリークに利きバッグをしてもらうのがいちばんだと思う。

バッグフリークがわたしにセリーヌのカバファントムをおすすめした理由

セリーヌのカバファントムは、通勤バッグやママトートとしてよく名前が上がる。つまり普段使いするには大きいのだ。

だがわたしにとっては鞄は大きさこそ重要だ。なぜなら単行本を持ち歩くから。わたしのことを知ってるバッグフリークももちろんわたしが本を持ち歩くことを知っている。

大きい鞄はだいたい重い。が、鞄は軽いほうがいい。
カバファントムは大きめの本革トートバッグとしては非常に軽い。というのも、カーフスキンで作られているからだ。
カーフスキンというのは、生後6ヶ月以内の仔牛の皮から作られる。これは牛革の中では最も若い革であり、薄くて軽くで柔らかい。

柔らかさもわたしにとっては重要だ。
わたしのバッグはだいたいオフィスに連れて行かれるが、そこで床に置かれて椅子のキャスターで轢かれるなどの憂き目に遭う。硬い素材には傷がつくが、柔らかい素材にはつきにくい。

大きい、軽い、柔らかいの3点で、カバファントムはわたしのバッグとして理に適っていたのである。

デザインが上品なのもいい。
わたしはあまり派手な服を着ないので、華美なデザインのバッグは浮く。バッグを持たされている感が出てしまう。
そもそもバッグは小物だ。どれだけ高級でも、何百万とするバッグでも、小物は小物だ。鞄を持つ本人よりも鞄のほうが目立っては意味がない。その鞄に負けている感じはかえって人を貧相に見せる。なので、わたしの考えではバッグは控えめなカラーやデザインであるほうが使いやすい。
カバファントムは、ブラック、グレー、そしてトープの3色展開だ。どれも控えめな色で、買うときはどの色にするか迷った。

ハイブランドの効用 セリーヌのカバファントムを便所の床に置くわけにはいかない

ハイブランドを使うと、高揚感の他にも思わぬ効用があることがある、という話をたびたびしている。

価値の高いものを雑に扱うのは難しい。
セリーヌのカバファントムは、新品ならばスモールサイズでも30万円を超える。そんなバッグを粗雑に扱おうとしてもなかなかできない。外出先の床に無造作に置く気にはとてもなれない。

わたしはどちらかというとバッグを雑に扱うタイプだし、だからこそキャスターで鞄を轢くことがあったわけだが、ハイブランドのバッグとなると、さすがのわたしでも扱いが丁寧になる。

これを窮屈と捉えるかは人それぞれだが、わたしはむしろよいことだと思う。持ち物によって行動が制限されるのは窮屈だが、行動が矯正されるのはよいことだ。矯正力なき環境では人はどこまでも怠惰で醜く下品になっていく。
思うに、上品なひとが高級品を持っていると同時に、高級品が人を上品に振る舞わせるのではないか。カルティエの腕時計でも同じ話をした気がする。

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