ひとり旅はいい
ひとり旅はいい。全部自分でやらなければいけないから。
ひとりで海外旅行に行くのが好きだ。
今年の夏はギリシャに行った。
海外旅行にひとりで行くと、いつも自由と責任の関係について考える。
ひとり旅行は自由だ。
どこにどんなタイムスケジュールで行ってもいい。
ある場所が気に入ったのならそこに一日中いてもいい。
逆に気が乗らなければずっとホテルにいてもいい。
とにかく自由だ。気の赴くままにできる。
それは裏を返せば、何が起こっても自分でなんとかしなければいけないということでもある。
イミグレーションを通るときはひとりだ。
ホテルで何かトラブルがあったら、自分でフロントに伝えなければならない。
ぼったくられないように気をつけなければならない。
貴重品から目を離してはいけない。
交通手段は自分で調べて、必要に応じて手配しないといけない。
表裏一体の自由と責任は気持ちがいいものだ。
自分の行動によって引き起こされることの責任をすべて自分だけで取れる、というのは気持ちがいい。誰にも迷惑がかからない。
私はアメリカで10年弱過ごして日本に帰ってきた。
日本の社会はあまりにも過保護だな、と感じるときがたまにある。
そして、過保護と引き換えに、社内や集団への貢献を強いられている感じがする。
アテネのアクロポリスは大きかった。
街のどこからでも小高いアクロポリスが見えた。
アテネには東京のような高層ビル群はない。
そのため空が大きい。
空気が乾いているので、空はちょっと信じられないくらい青い。
地中海の夏は、昼は暑いが夜は涼しい。
夜になるとアクロポリスはライトアップされる。
ライトアップされたアクロポリスが見えるテラス席でウゾを飲んだ。ウゾとはギリシャのお酒だ。
翌日は朝からアクロポリスに登り、パルテノン神殿に行った。
今や白亜の宮殿となったパルテノ神殿だが、古代ギリシャ時代、アテネがポリスだった時代のパルテノン神殿は極彩色に飾られていたらしい。日光東照宮くらい。
アクロポリスからはアテネの街が一望できる。
率直に言って、きっちりと整備された街ではない。端正とは言い難い。
ものすごくごちゃごちゃしている。道は狭いし、日本のように駐車場がそこらにあるわけではないから路上駐車がとても多い。
建物は古い。
街を歩けばそこらへんに遺構や遺跡がたくさん転がっている。
大人になったわたしは責任と引き換えに自由を得た。
だからその気になればひとりでギリシャに来て、アクロポリスを望ながらウゾを飲んだり、パルテノン神殿からアテネの街を一望したりできる。
わたしが望みさえすれば、わたしはどこへでも行けるだろう。
ひとり旅はわたしをそういう気分にさせるからいい。
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