DJの繋ぎと調性理論

 社会人になって、半年が経とうとしてます。いざこうやって時間が経ってみるとやっぱりあっという間だったなって。まだまだ自分の能力不足を感じるような場面が圧倒的に多くて歯がゆい思いをすることもたくさんあるけど、これからもっと頑張っていきたいなって思います。
 つまるところ、DDJ-400を買ってDJとしてスタートを切ってからも半年が経とうとしてます。6月に「One Step!」で初めての現場に立ってから3ヶ月間、ありがたいことに多くの現場を経験させてもらうことが出来て、とても嬉しさを感じています。

 そんなこんなで、半年DJに触れてきたわけですが、その中で特に研究したのが調性に対する意識でした。元々楽器を習っていた幼少期から調に対する感覚は人一倍あったんですけど、DJをやってる今が今までで一番それをフル活用してるような気がします。これは僕個人の考えなんですけど、調って曲のジャンルと同じくらい、セットに流れや緩急を持たせることができる要素だと思っていて、これ意識するだけでだいぶ聴き映えが変わるなって思ってるんですよね。たかだかDJ歴半年で何を偉そうにって思われるかもしれないですけど、楽典的な話も混ぜながら自分なりの繋ぎと調に対する考え方をここにまとめておきます。

近親調について

五度圏表(er music theory 「すぐ分かる【5度圏表】の解説!仕組みと6つの使い方まで把握しよう」より)

 まず、DJで繋ぎを考える上で最も重要なのがこの近親調の理論。それを図に示したものが上の五度圏表と呼ばれるやつです。これがDJだとキャメロットシステム、Alphanumericといった記号化された情報として表現したりしますが、あれは見たって丸暗記的な理解しかできないので今回はおまけ程度に留めます。

 まず、同じ調同士で繋げば綺麗に繋がるのは当たり前ですよね。それに最も近い繋ぎは、この五度圏表上だと同じ直径上にあるもの。これは平行調って呼ばれるやつ。外側の五線譜のト音記号の右側についてる♯や♭を調号っていうんですけど、この調号が同じで、長短が異なる関係です。Alphanumericだと数字が同じで長短を表すアルファベットが異なる関係。表で見るとCメジャーの平行調はAマイナーということになります。音階を構成する音は同じなので、やっぱりこれも綺麗に繋がる。
  続いて、表で見ると横に隣り合っている関係。それぞれ右側を属調、左側を下属調と呼びます。属調は完全5度上の調で、調号が♯が1つ増えたもの。下属調は完全5度下(完全4度上)で♭が1つ増えたものです。Cメジャーを基準に取ると属調はGメジャー、下属調はFメジャーって感じになります。Alphanumericだと数字が±1したものですね。

ダイアトニックコード (L3project「【実演】主要三和音(コード3つ)だけで1曲書いてみた!」より)

 では、なぜこれが綺麗に繋がるのか?という点については理由が主に2つあります。まず一つは「完全」という呼び方が示す通り4度、5度という位置関係は異なる2音が最も綺麗に重なる位置関係であること。そしてもう一つが、上の図にあるダイアトニックコードの理論です。このダイアトニックコードの中でも特に使われる赤枠で囲まれた3つのコードを主要三和音と呼び、主音の和音をトニック、5度上をドミナント、4度上をサブドミナントと呼びます。このドミナント、サブドミナントは日本語に訳すとそれぞれ属音下属音となります。どういうことかお分かりいただけたでしょうか。つまり、この5度での繋ぎは今かけている曲を次にかける曲のドミナントもしくはサブドミナントに見立てて繋ぐことができるわけです。なのでDJではこの調関係が非常に重視されるんですね。

 このように、ある調と同じ、もしくはその平行調、属調、下属調の曲で繋ぐことをハーモニック・ミキシングと呼んでいます。これ以外にもう一つ、主音(最初の音)が同じで長短が異なる同主調というものも存在します。CメジャーであればCマイナー。AlphanumericではAの場合3を足したB、Bの場合3を引いたAの調ということになります。これについては後ほど言及します。。

掟は絶対ではない

 DJにおいて自然な流れを生み出すことを意識するにはこのハーモニック・ミキシングの考え方は必要不可欠。ただ、ずっとそれを意識していると、今度は緩急をつけることが難しかったりします。時には遠い調で繋ぐことも大事。そこで、それぞれの度数関係に応じた自分なりに意識していることや実践しているコツをまとめてみたいと思います。

2つ隣(全音)繋ぎ

 まずは五度圏表上で二つ離れた関係同士の繋ぎ。音階は1音異なる曲同士になります。一見不協和音っぽいんですけど思ったほどひどくはぶつかり合わない印象で、多少重ねても問題ないし、極端に流れを変えるわけでもなく一定の流れの中で繋げる、というのが所感です。ただ両方MID全開だと普通にぶつかります。重ねる中でじわじわ調節しながらやると綺麗に繋がります。

3つ隣(1音半)繋ぎ

 次が3つ離れた曲同士の繋ぎ。ちゃんと読んでくれた方だと3つ離れたっていうところに既視感を持ってくれてるかもしれませんが、そう。さっきの近親調理論で行くと「同主調の平行調」という関係になります。なので普通に相性は全然悪くないです。何なら歌モノとインストを混ぜたりしても全然様になってくれます。あんまり長く繋ぐのはお勧めしないですが… それであってそれなりに変化もつくので個人的にはかなりおすすめです。ちなみにJ-POPのサビ転調で最も頻出する転調もこのパターンです。

4つ隣(2音)繋ぎ

 個人的に綺麗に決まるとかっこいいなと思ったのがこの繋ぎ。これのポイントはさっきのダイアトニックコードの、片方のトニックコードの第3音ともう片方の主音が共通していること。トニックコードを構成する1,3,5音は旋律においても重要な働きをするので、そこで響きが重なり合うのを利用します。最初はMIDを絞っておいてジワジワ調節していく。これがハマった時の爽快感はすごいです。ここぞの場所で一気に雰囲気を変えたい時におすすめ。
 J-POPでこの転調を使った曲として真っ先に挙げたいのが西野カナ - GO FOR IT!!。中学時代Mステで聴いてとにかくこの転調で一撃でインパクトを残された曲。サビでFメジャー→Aメジャーの転調をしており、一気に明るくなるのを感じてもらえると思います。こんな感じでDJでも一気に緩急をつけれます。

半音繋ぎ

 続いては半音繋ぎ。リスキーですがコツさえ守ればちゃんとやれます。MIDをギリギリまで絞った上で素早く切り替える感じにすればちゃんと違和感なく行けると思います。出来れば8小節以内でスパッと繋いだ方がいいのと、あとこれは完全に一個人の意見なんですけど半音上で繋ぐ方が好きかなって思ってます。
 あと半音のままマッシュアップとかダブルドロップとかやるのは絶対やめた方がいいです。というよりやめてほしいです。「半音くらいクラブのデカい音なら分かんない!w」って言われたことあるんですけど余裕でバレます。あと普通に雰囲気変わるので多用するのは良くない気がします。合間に半音違う曲入れるとかならキーシフトしちゃうのをおすすめします。。。

対極(増4度)繋ぎ

 最後は五度圏表上で向き合っている一番遠い調同士の繋ぎ。これは完全に奥の手。完全に流れを切って作り直すくらいの気持ちでやるか、もしくは半音上げ下げして5度の関係にするとかでもいいような気がします。。。何回かやったことはあるけど普通に難しいです。

まとめ

 何か駆け出しDJの分際で偉そうなこと書きましたが、別に説教垂れるつもりとかは全くないです。ただ自分はこんな感じでやってるよ!っていう紹介ぐらいのものだと思っていてもらえるとありがたいです。あと、Alphanumeric上の記号的な理解だけじゃなくて自分の感覚として理解しながら繋ぐと楽しさも爽快感も増すと思います。なのでぜひ、これを機に調が持ってる雰囲気とかにちょっと興味持ってくれたらな~なんてことも思って書いてみました。以上、調性敏感オタクの戯言でした。DJ頑張ってもっと上手くなります!!

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