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僕とPorter Robinson ~The Nurture Liveを終えて~

3月18日。
ずっと憧れてきた、Porter Robinsonのライブに行った。
僕のPorterとの出会いと、あの時味わった夢を、ここに書き残しておきたいと思う。

序幕 ~Porter Robinsonとの出会い~


僕とPorter Robinsonの出会いは、僕が高校生の頃に遡る。当時はアニソンばっか聴いていて、EDMなんて単語すら覚えたての頃だった。そんな自分がその頃名前を知っていた数少ないクラブハウス。新木場ageHaともう一つが、秋葉原MOGRAだった。なぜ知っていたかと言えば、当時から今に至るまでずっと尊敬しているトラックメイカー・kz先生がそこでよくDJをしていたから。そんな時、そのPorter RobinsonがMOGRAに現れ、当時大好きだったClariSの"irony"のリミックスをプレーした動画が、Twitterで回ってきた。

自分の知っている好きな歌が、全く違う音楽に変わる。その凄さを最初に自分に植え付けてきたのは、紛れもなくあの時の彼だった。それから、僕はアニソンリミックスという文化に魅せられた。今のようにダンスミュージックにはまり、自分がDJになる未来なんてその時は想像もしてなかったけど、今の僕を形作る要素に、間違いなくPorter Robinsonという存在がいる。

EDMとの出会い、Porterとの再会


そして、大学生になってしばらくして、僕はダンスミュージック、Kawaii Future Bassというジャンルを中心にしたインターネットの電子音楽に深くはまり込むようになった。そしてそこで、僕とPorterは再会を果たすことになった。

2020年2月にリリースされた"Get Your Wish"、3月にリリースされた"Something Comforting"。その美しさに息を吞んだ。EDMフェスで流れるような派手なサウンドとは対極に位置する、ある意味では日本的ともいえるような、旋律的・器楽的アプローチから生まれた電子音楽。彼の作る音楽に完全に心を奪われたのはこの時だった。

そして、2021年4月。アルバム「Nurture」が発売された。EDM作品というより、フォークトロニカやハイパーポップなどの文化圏を取り入れた、一つの芸術音楽作品に触れたかのようだった。紛れもない、21世紀最高の音楽作品のひとつと言っていいように思う。これを超える音楽には、そう何度も出会えない。それくらいの感動をこの作品はくれた。

ステージでの輝き、そこに感じたもの


そしてそこからさらに2年経った今回。日本で彼を見る、またとない機会が訪れた。当然行かないはずがなかった。そして、ついにその日が訪れた。

18時45分。満員に埋め尽くされたステージの上に、彼は現れた。3年前に僕に衝撃を与えたSomething Comforting。そしてSecret Skyで世界を繋いだ"Look at the Sky"。初めて見る本物の彼は、今まで見てきた誰よりも、自分がやりたい音楽を全力でやっているように見えた。その純粋な気持ちに観客もつられて輪ができ上がっていく。自分がライブという空間に求めてきた、その全てがそこにあった。

ただ音楽を聴くだけじゃない。音楽で、空間と、隣の全く知らない人とも、演者とすらも、この瞬間、一体になれる。それこそが、ライブの、音楽の、根源的な力だ。昨日のライブは、まさしくそんな、音楽を愛する者たちのために用意された、最高の空間だった。

でも、そんな彼ですら、このNurtureを生み出すまでの間には、音楽を作ることすらままならないほどの苦悩があったそうだ。音楽を作るのを辞めてしまおうと思った瞬間。音楽を自分から取ったらもう何も残らないと感じた瞬間。僕は彼と比べれば取るに足らない存在だけど、自分にもそう感じることがあった。数年前、音楽でステージに立つことがなくなって、自分が思っていた以上に今まで音楽に生きがいを依存していたか、初めて自覚した。音楽をやっていない自分に、微塵の存在価値も感じられず、生きててもしょうがないんじゃないかって、そう思い続けていた時期が、自分にもあった。でも、彼はそんな苦しみを乗り越えたからこそ、あの輝きを放ってみせたんだと思う。少なくとも僕は、そう確信している。ステージに立つ彼の姿は、間違いなく自分に勇気を与えてくれた。ありがとう、Porter。

終幕 ~現在地、これから~

今、自分は、DJをしている。子供の頃思い描いた形とは違うけど、今もこうして、音楽でステージに立っている。そして、そうしていることで、僅かながらでも自分の存在価値を感じることができている。

でも、絶対に1人でそれは為しえなかった。音楽を作っているアーティスト達。自分にたくさんの音楽を教えてくれた友達。先にDJとしてステージで輝く姿を自分に見せてくれた仲間達。たくさんの周りの支えがあるからこそ、ステージに立つことができている。きっとそれはPorterも、今まで見てきたどのアーティストも同じだ。だからこそ、Porterは自分のやりたいことを全力でやって、その支えに報いたのだろうと思う。

そして、自分もそうありたい。

自分を形作ってくれた音楽に。自分をステージに立たせてくれる人、それを見に来てくれる人に、自分の好きなもので何か影響を与えたい。それはDJだけじゃなく、今まで音楽をやるモチベーションはずっとそこに求めてきたと思う。でも、昨日のPorterのステージを見て、もう一度それをちゃんと自覚できた。頑張ろうって思えた。

Thank you so much, Porter Robinson.

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