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空気を読まなければいけない

僕が10代後半の頃、正道会館東京支部にテレビが来た。
落語家Sが実戦空手を体験するというロケだった。

練習風景の撮影をすることになり、組み手の相手に僕が選ばれた。
体格が落語家Sには丁度良かったのだろう。

先輩から「Sさんは大学でボクシングの経験もあるから」と言われた。
眼鏡を外すとなるほど鋭い眼光だ。

まず前蹴りを出して距離を取ろうとしたが、小柄なSが踏み込んできた。
危険を感じた僕は右肩でSをブロックして、ボディショットを叩き込んだ!
Sさんが背中を向けてしゃがんだ。

小さな「止めて」の声がかかり、その場にいた全員から凄い顔でにらまれた。
先輩が来て「お前、分かるだろ?…な?」と僕の胸を拳で叩いた。

Take2の無難な組み手にOKが出た。その後Sさんが、襲いかかる佐竹先輩を護身術で組み伏せる姿を見たとき、テレビの怖さを知った。
同時に、空気を読みたいと心底願った。



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