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DTMerはヘッドホン制作の夢を見るか - OLLO Audio S5X レビュー

久しぶりにヘッドホンを新調しました。
昨年ibasso audioのSR2やAKGのK701を手放してT1 2nd一つになっていましたが、定位感は素晴らしいもののローの見えにくさと、やはり制作用のものがいいだろうということでお店で色々聞いてみました。

まずは箱~製品を見ていきます。

▶外箱
非常にシンプルな箱に入ってます。オーディオ向けの絢爛なパッケージはテンションも上がるし所有欲も満たされますが、でかいヘッドホンのパッケージは想像以上にでかい。機材を色々買ってるとそろそろ箱を置いとける空きスペースがなくなってくるので、最低限のパッケージは助かります。

段ボールに直接印字。日本人の大好きな"これでいいんだよ感"があふれてます。

▶本体とポーチ
開けると本体とポーチが入ってます。
ポーチはぺらぺら、、程ではないですが薄いです。クッション性は無し。
これに入れて移動はちょっと怖いかもですね。

ちょっと頼りなさげ

Beyerdynamicのヘッドホンにはハードケースが付属していて、正直デカくて邪魔ではあるのですが、スーツケースに入れて飛行機移動に耐えられるが必要条件な私の環境だとそのまま荷物に入れられて便利でした。
ちょうど入るくらいの汎用ハードケースが必要そうです。

▶キャリブレーションシート
製品一つ一つに対して周波数特性を測定しているようで、シリアルと測定結果、担当者サインの入ったシートが導入されていました。


対抗馬たち


今回比較として聞いたものが
ノイマン NDH30
Phonon SMB-01
OLLO audio S4X
でした。

ウルトラゾーンやFocalは過去に聞いたものの音や価格が希望と合わなかったので今回はパスで、、

ざっくり感想をば、、
▶Neumann NDH30 : ローの見え方は素晴らしかったです。以前密閉型のNDH20を聞いたことはあるのですが、若干記憶が怪しいものの鳴り方自体少し違う気がします。
ソニーのMDRとかヤマハのMTとか、、2万前後のモニターヘッドホンによくある"耳のすぐ近くで音が鳴ってる感"のままめっちゃ高音質にした。みたいな鳴り方に感じました。

▶Phonon SMB-01:音は結構遠いです。昔べイヤーのAmiron Homeを聞いた時を思い出しました。ローが強烈です。とにかく下がドーンと出る。
かといって籠るとか他を邪魔することもないのはさすがという感じです。
制作中にかなりテンションが上がる音だと思います。
もう1台買う!ってなるとこれ行っちゃうかも。

▶OLLO Audio S4X: この中だと定位感は抜群。音がどこにあるのかがしっかり見えます。この手のやつは自分の慣れてる環境と音像がかみ合わないと違和感を感じることが多くて(個人的にAustrian Audioなんかは若干センターが抜けたようなのを感じたり)好みの差が結構出る印象ですが、この子はドンピシャでした。
ただ以前まで自分が使っていたやつから乗り換えるかといわれれば悩みました。

▶OLLO Audio S5X:お店の方から「全然違いますよ!」といわれて聞いてみましたがちょっと驚きました。S4Xとの価格差は1万ちょっとしかないものの、明らかに違いを感じます。
抜群の定位感はそのままに、ダイナミクスの表現がかなり向上しています。アタックやリリースの見え方が全然違いました。

結果としてS5Xをそのまま購入しました。
これまで使っていたBeyerdynamicのT1 2ndは定価としてはS5Xよりも高価ですが、細かな解像度や何よりダイナミクスの表現は完敗です。結構古いモデルなので仕方ないね、、
今は軽作業時やリスニング中心に活躍してくれています。
今は中古で定価の半額くらいで手に入りますし、非常に繊細な高音の表現とナチュラルな音場感は現行3rdでは得られない傑作ヘッドホンだと思うので、もし程度の良い中古を見つけたらアリかもしれません。

色々書きましたが他のモデルがダメとかではなくて、今回試聴した子たちはどれも非常に優秀で、正直どれを選ぶかは各々の好みかなと感じました。
私は音楽を始める前はヘッドホンが好きで、他にも人気のAustrian Audio, Tago Studio, ULTRASONE, AKG, ゼンハイザー, Shure, Focalや、オーディオ系のiBasso audio, Hifiman, Final、、その他たくさんのヘッドホンを聞いてきました。
音楽家としては素人なので、プロの方になるとまた違った基準があるのかもしれませんが、ヘッドホンは製品によって本当に音の鳴り方が違うので、購入前に可能ならぜひ試聴することを強くお勧めします。
オークションサイトを見ると聞いてみたけど好みじゃなかった、みたいな出品の20~50万クラスのヘッドホンがごろごろしてたりします。

実際ヘッドホンで音楽制作はできるの?

私を含め、多くの初心者DTMerが気になるポイントだと思います。
Twitterに生息するセミ~ガチプロの方が上げてるおうちスタジオの写真をほえ~と眺め、サンレコのような雑誌の写真をはえ~と眺め、自室のなんの変哲もないPCデスクに置かれたPCと格安オーディオインターフェイスを眺めて寂寥感に押し流されそうになった人は私だけではないと思います。

広い部屋をばっちり吸音処理して、大きなスピーカーをガンガン鳴らせれば最高なのでしょうし、本職のエンジニアさんたちがちゃんとスピーカーでやらなきゃ!ヘッドホンなんてだめだ!という気持ちもとても分かります。
ただ本職が別にあり、趣味として楽しんでいる場合、住宅や家族環境によっては非常に難しい問題でもあったりします。
私が現在使っているスピーカーはIK Multimdiaのi Loud Micro Monitorという、おそらく低価格コンパクトでは最も人気のある製品ですが、マンションであればなかなか音を出して鳴らしにくいというのが実情です。音量を上げていって床が揺れ始めると、苦情は来てなくとももう少し下げようかな、、という気持ちになります。
洗濯機を回したり子供が少々騒いでも問題のない分譲マンションですらこれですので、賃貸なんかになるともっと厳しいのではと思います。

iLoud MTMは価格とサイズからは信じられないほどのクリアな音質とパワーのある低音を吐き出しますが、T1とS5Xを併用しているとこのスピーカーで作業するのは無理だと感じてしまいました。
あれだけ素晴らしいと思っていた音場はいつの間にか滲んで分かりにくいし、何よりダイナミクスが非常に見にくく、パンやボリュームの処理が分かりません。きっちり部屋を作って、もっと大きなスピーカーをガンガン鳴らせるなら話は別かもしれませんが、なかなかそういう環境が作れないのであれば、20万くらいでちょっと良いヘッドホンとヘッドホンアンプを買うのが良いのではないかなと感じてしまいます。
特にダイナミクスについては、所謂定番と言われる2万前後のヘッドホンと10万前後のちょっと高めのモデルとでは雲泥の差だと思います。
でもプロはみんなMDR-900STを使ってるよ?と言われますがそれは巨大なフルレンジスピーカーと高品質なニアイアーモニターをガンガンに使えたうえでの使用ですので、、

勿論安価なモニターで素晴らしい曲を作る方はごまんといますが、もし自宅制作でモニタリング環境に納得できてないのであれば、良いヘッドホンとアンプを導入する、というのが一つの光明になるかもしれません。
各楽器店やヘッドホン・オーディオの専門店、ヨドバシのような専用コーナーを抱えている電気屋さんなど試聴できる環境は探せば意外とあったりします。
個人的には下手なプラグインや音源よりも投資に対するリターンがある部分だと思いました。
何より音楽が好きなら、良い音質で音楽を聴けるのは最高に楽しいです。

参考: ヘッドホンMix (T1 2nd Generation)

ヘッドホンMix: S5X

楽曲の出来は置いておいて、ローミッドの処理とダイナミクスの感じがかなりわかるようになった気がします。

LLSY music


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