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鈴木実貴子ズ、ホリプロ所属に「いいの?っていう気持ちがまだある」二人のマインドを変えた大型フェスへの出演

愛知・名古屋を拠点に活動する二人組ユニット「鈴木実貴子ズ」。一度聞いたら忘れられない名前の二人は、音楽もまさにそうで、「ただただ歌いたいこと」をアコギ一本とドラムで、ライブですべて表現してきた。2012年の結成以来、つかず離れずの距離感でやってきた鈴木実貴子(Vo./Gt.)とズ(Dr.)に結成経緯などを聞こうと思ったところ、冒頭から“いつもの掛け合い”が繰り広げられるインタビューとなった。

■「本当はバンドがやりたかった」

ーーいきなりなんですけど、先日の下北沢でのライブにドラムのズさんが「何も持ってきてなかった」というのは笑いました。
 
鈴木実貴子「なんでそんな大事なものを忘れ物するんだよって話ですよね」
 
ズ「物販とかを持ってくるのに意識を向けてたら、自分の機材ワンセットを丸々持ってくのを忘れちゃって……」
 
鈴木実貴子「小学生だったらランドセル忘れて登校するぐらいの話ですよ(笑)」
 
ーー改めてなんですが、この『リーズンルッカ』というのがホリプロが運営するWebメディアでして、取材する人は所属かマネジメントされている人たちなんです。そこで鈴木実貴子ズを取材するのは、以前から知っている者にとっては違和感……というか「ここまで来たか!」と。
 
ズ「本当そうっすよね。うちらも未だに何でここにいるのかよくわかってないんで」
 
鈴木実貴子「『いいの?』みたいな気持ちはまだありますよ」
 
ーー『リーズンルッカ』には初登場ということで、ご存知ない方のために、結成当時のことに触れたいんですが、他のインタビューでも語っているところによると「ズさんが実貴子さんの演奏に感銘を受けて声をかけた……」という。ざっくりですが。
 
ズ「感銘を受けたのかな……(笑)。そのとき大学生だったんですが、若いとき特有の暗い時期みたいなのがあるじゃないですか。いろんなことに悩んでるみたいな。そういうときに一番暗い曲をやってる奴がいて、それがこの人だったんですよね。聴いていて安心したというか」
 
ーー鈴木実貴子ズの拠点は名古屋ですが、ズさんの出身は鹿児島でしたよね?
 
ズ「大学が名古屋だったんですよね。ライブを見たときは休学中で、一番病んでた時で、スッと心のスペースに入ってきたんです。それが運のツキでしたね(笑)」
 
ーーそれで声をかけたと。もともと二人ではなかったんですよね?
 
ズ「別のドラムの人と一緒にやったり、ギターの人と一緒にやったり、ソロの活動でやったり、いろいろ経た結果、僕と実貴子さんともう1人ギターの3人でしばらくやってました。その時は名前も違っていて、ギターの人が辞めたタイミングで完全に『鈴木実貴子ズ』っていう名前になって」
 
ーーこれもよく語っていますが、実貴子さん的には、アコギ一本でやっていきたいわけではないんですよね。
 
鈴木実貴子「本当は“バンド”がやりたいですね。『音が足らん』っていつも思ってるし。なんですけど、自分には他の人がついてこんかった」
 
ズ「この人の人望の問題です(笑)」
 
鈴木実貴子「バンドマンに対して憧れがあって、他のバンドのステージは羨ましいって思いながら見てます」
 
ズ「ずっと言ってるよね。リハ見ながら『エレキ最高〜』って」
 
鈴木実貴子「でも、できない。エレキを持つと『これには頼れない』っていう感じになるんですよ。結局自分にとって収まりがいいのはアコギなんでしょうね」
 
ズ「音源を聞くと、ライブのシンプルさとは違っていろんな音が入ってて、そこで憧れを体現している形にはなっています」

■『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で“ドリーム”があることを実感

ーー歌がストレスのはけ口になっている、とは実貴子さんもよくおっしゃってますけど、もうずっと変わらない感じですか。
 
鈴木実貴子「変わらないけど、ちょっとだけ怒りじゃない感情も乗るようにはなりましたね。ただ、まだ明るくキラキラとした歌は無理かな。ホリプロはこっち(キラキラ)のイメージめっちゃ強いから、今後大丈夫かなって。悪口になってない?(笑)」
 
ーーまあでも、最近では小さいライブハウスからスタートしているようなバンドマンも所属し始めているわけですし。
 
鈴木実貴子「そっか。泥水も引くようになってきたのかな(笑)」
 
ーーそんなことはいいつつも、鈴木実貴子ズは結構順調にステップアップしている人たちだなと思っていて。『RISING SUN ROCK FESTIVAL』(以下、ライジング)や、『FUJI ROCK FESTIVAL』(以下、フジ)への出演があって、そしてホリプロにも所属という。
 
ズ「うちらとしては、ライジングに出演した2022年がきっかけだった気はするよね。そこで初めて、ミュージシャンドリーム的なのがあるんだって思った」
 
鈴木実貴子「本当にこんなことあり得るんやって感じしたね」
 
ズ「でかいステージで、お客さんも、ステージに関わった人もこんだけいて、フェスってこんな規模でやってんだと、未知の世界を見たときに、開けた感じがしたというか」
 
鈴木実貴子「バチバチに思った」
 
ズ「それまで、そんな景色を知らんかったからこそ、地下にずっととどまっちゃってるんだろなって思いましたね。意識が変わったし、もっとこういうとこに立てたらなって目標ができた」
 
鈴木実貴子「欲が出たね。もう一回あそこに立ちたいって」
 
ーーインディバンドを取材することが多いんですけど、皆さん大きなフェスへの出演応募はしていて、でも何千組も応募してくるから全然通らないっていうことは言っていて。その点、鈴木実貴子ズが選ばれているっていうことは、運営の人に強く刺さってるっていうことじゃないですか。
 
ズ「それはラッキーなことですよね。『みんなに自分たちの曲をわかってもらおう』と思ってやってこなかったけど、それでも広がる道はあるんだなって。だからこれからも変わらずやっていこうと」
 
鈴木実貴子「根拠みたいなのはできたね。『うちらこれでええんや』っていう」
 
ーーとは言いつつも、実貴子さんのXを見るとつい最近「バイトを探していた」という。
 
鈴木実貴子「どっちも現実ですからね(笑)。おかげさまでバイトは決まりましたけどね。居酒屋とガソリンスタンド二つ」
 
ーーなので目標としてデカいステージに立つっていうのもあるし、「音楽で食べていく」っていうのもありますかね。
 
ズ「そっか、バイトはやめたいんよな」
 
鈴木実貴子「やめれるもんなら。音楽でやっていけるんなら最高やな」
 
ーータイアップとかあったらいいなとか思ったりします?
 
鈴木実貴子「そりゃもちろんですよ」
 
ズ「結構イメージ的に、鈴木実貴子ズはそういうの興味ないって思われるんすけども、ただ使われないだけで、やる気はあるんですよ」
 
ーー『ミュージックステーション』とか、テレビでスポットが当たる鈴木実貴子ズは一回見てみたいです。
 
鈴木実貴子「むず痒くて見てられないかもしれないですよ(笑)」

【リーズンルッカ’s EYE】鈴木実貴子ズを深く知るためのQ&A

Q. 最近のハマっていることを教えてもらえますか?

A.
鈴木実貴子「焼き芋とリンゴ!なんかゴリラみたいですけど(笑)。いろんなスーパーとか立派な焼き芋とか食べてるんですけど、結局ドン・キホーテのやつが一番美味しい。リンゴはこれから極めたい感じですね。テレビの前に、まな板と包丁を置いて見ながら食べています」
 
ズ「ここ1〜2ヶ月ぐらいハマってるよね」
 
鈴木実貴子「先日のライブにも持ってきてました。家からラップにくるんで」
 
ズ「ハマっていることか。僕はあんまり……」
 
鈴木実貴子「忘れ物にハマってるね〜!」
 
ズ「ちょいちょい……あ、映画見に行くようになりましたね。もともと『趣味が欲しいな』ってのはずっとあったんですけど、ようやく見つかった感じです。映画を見るしかない状況になるのがすごい好きで、いわば『没頭する時間を買ってる』感じです」
 
鈴木実貴子「うち映画館苦手やねん。じっとしてなきゃいけないのと、見なきゃいけないのと、理解しなきゃいけないで、全部規制されてる感じがして」
 
ズ「前に『スラムダンク』を一緒に見たんですけど、結構無音の時間があって、みんな息をのんで集中してたんですけど、横でひとりポップコーンムシャムシャ食べてました」
 
鈴木実貴子「『これ一試合目?』ってずっと聞いとったな(笑)。家でいつでもトイレに行けて、寝ながら見れるぐらいのほうがリラックスできるんよな。そういう意味ではうちらはいい組み合わせだと思うよ。全く同じもん同士やったら収まり悪いから」
 
ズ「うん……」

<編集後記>

インタビューというか雑談になってしまったが、これが鈴木実貴子ズらしいところで、ちょっと固めなことを聞いても、だんだんと道がそれていくのだ。ただ考えられた発言より、つい口を突いて出てしまった言葉のほうがその人の本質がわかるし、そもそも鈴木実貴子ズの音楽を綺麗な言葉にしようとすると皆目検討違いになりそうで、正攻法だと思っている。「キラキラ」の逆サイドにある、普段の生活で気づいた淀みや怒りなどを言葉にする“むきだし”の音楽は皆さんも一度は体験してほしい。

<マネージャー談>

ライブハウスで噂を聞き出したのが2018年初頭。初めてライブを観たのは2019年の京都だったと記憶しています。初見の日に、もう喰らいすぎて、気になりすぎて。すぐ掴まえて、2人が得意ではない打ち上げに残らせて、いろいろと質問攻めしまくった覚えがあります。
そこからリリース、展開アドバイスや企画について話してもらったり、イベント出演を持ちかけたり。ウェブインタビューに一緒に参加したこともありました。そんな流れから発展して、今があります。
日々、生活していく中で見つけたちょっとした感動、フラストレーション、やるせなさ、そういう1つ1つの些細な感情の揺れ、を逃さず積み重ねてきたことで、じわじわと、バンドに何かを想ってくれる人が増えて、ここまで来れていると思います。
どうでもよくなる夜と、かけがえの無い夜を積み重ねて、歌にして曲にして、鈴木実貴子ズは今も進んでいます。
引き続き、ライブハウスでお待ちしています。

<撮影の様子はこちら!>

【プロフィール】
鈴木実貴子ズ(すずきみきこず)
言葉が強烈に飛び込んでくる、心の深くまで刺してくる。歌とアコギ、ドラムの2人編成、2人でもロックバンド「鈴木実貴子ズ」。名古屋在住の鈴木実貴子とズの2人組。
2022年、フジロックフェスティバルとライジングサンロックフェスティバルの新人オーディション・ルーキー枠に同時選出、衝撃を与える。オハラブレイク2023出演。ARABAKI ROCKFEST 2024 東北ライブハウス大作戦ステージ出演。2人編成なのでフットワーク軽く貪欲に、全国飛び回ってライブしている。新作リリース予定有り!

取材・文/東田俊介
写真/溝口裕也


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