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気軽に落語を。真打昇進、春風亭昇々が送る”笑い”の極上時間

2021年5月に真打興行を控える今注目の落語家春風亭昇々
とにかく笑っていたいという昇々に落語との出会いから真打に昇進するまでの事や1人の過ごし方など聞いてみた。

落語との出会い

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中学生の頃ラジオが大好きで「ラジオ深夜便」を寝る時によく聞いていたんです。それが落語との出会いです。
いつも途中で寝てしまうので最後まで聞いた噺は無かったんですけど(笑)
大学で落研サークルに入るんですが、理由は一番最初に勧誘を受けたからだったんです。テニスサークルにでも入ろうかなぁなんて思っていたところに、楽し気に勧誘してくるんですよ。落語やってます!感を出さずに。
それでなんとなく入部したら「はい落語覚えてきて!」みたいな笑
いきなり厳しい!!

大学の伝統でまず覚えるのが「つる」でした。「つる」って基礎的な部類に入る落語なんです。1年生はテープを渡されてひたすら覚えるんです。みんな「つる地獄」と呼んでましたね。
そして1番最初にOKをもらうことを「つる王」になるとそのサークルでは言っていました。毎日毎日練習するのでもう頭は「つる」に洗脳されているからみんな必死になって覚えるんです。「つる王」になると、そのただ一人だけが老人ホームで披露が出来る権利を得るんです。
もしあの時テニスサークルに最初に声掛けられていたら今頃プロテニスプレイヤーでしょうね(笑)

弟子入り

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元々お笑いは好きで、実は大学在学中に先輩とコンビを組んで漫才をしていました。もう毎日大喧嘩ですよ(笑)。これは人とやるのは無理だなと思いました。でも1人でやるにしてもコントも一発芸も出来ない…そんな時に、1人で座布団の上で語るというスタイルの落語がカッコ良いと思ったんです。そこで噺を作って話せばいいじゃん!って。

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誰の弟子になろうか考えた時に、古典落語も面白い、まくらも現代的で面白い、そして新作落語もやっている…創作落語をやりたいと思っていた自分の理想のスタイルを持っていたのが春風亭昇太だったんです。あとは優しそう(笑)。末廣亭で出待ちして弟子入りをお願いしました。
一門によって様々ですが、うちの師匠は家に通わせても面白くなるわけじゃないから時間がある時は映画を観たり、演劇を観たり、本を読んだりそういう時間に充てなさい、という自由な感じでした。努力しなければ破門というルールはありましたけど。

師匠はとても優しいんです。笑点でみなさんが見ているのが正に師匠なんです。でも、前座に対しては厳しく接していました。仲が良すぎると周りから舐められるからあえて師匠らしく厳しく接していたんだと思います。ただ僕は前座時代、師匠に1度も怒られたことがないんですよ。師匠が「昇々はちゃんとしてるわけじゃないんだけど、顔見ると怒る気が失せるんだよ」とよく仰っていました。師匠から預かった家の鍵を持って帰ってしまって電話で謝っても怒られなかったくらいで(笑)

入門から真打への道

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入門してから真打になるまでに大体14~5年かかります。
最初の4年間くらいは前座といって修行の日々です。寄席に行って師匠方の落語を聞かせて頂く代わりにお茶を出す、着物をたたむ、高座返しといった落語以外の事をする。これを僕らは修行といいます。
2007年4月に入門した時に携帯のカレンダーの2011年4月に「二つ目昇進」と入れて、毎日スクロールしてはまだこんなにあるのか…と思っていましたね。
落語家になるには青春を捨ててやるしかないという気持ちでした。

僕らが「稽古」というのは「噺を教えてもらう事」です。
こちらから師匠に「〇〇」という噺を教えて下さいとお願いして、師匠の落語を録音して文字起こしして覚える。それを師匠に聞いてもらい、アドバイスを頂く。これを稽古というんです。
前座時代に師匠が自ら教えてくれた噺が3つあって、「子ほめ」「牛ほめ」「雑排」。二つ目に昇進する直前に稽古してもらったのが「ちりとてちん」でしたね。

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真打昇進は師匠からの電話で知りました。
とは言っても理事会の日も分かっているし二つ目の上から2番目だったし、そろそろ真打の話が出る頃だなとは思っていました。
その時「フィロのス亭」という番組の収録をしていたので師匠からの電話は出られなかったのですが、「収録中だから後にして欲しいなぁ」って思ってましたね(笑)。
師匠からはおめでとうとかではなく「来年の真打決まったから諸々準備含め頑張れよ」と言うようなお言葉を頂きました。
真打興行はパーティー会場を押さえるところから扇子、手ぬぐいの手配、口上書きなどやる事が細かく、たくさんあるんです。

寄席

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寄席ってなんの知識も準備もいらないんです。いつ入ってもらっても良いしいつ帰っても良い。お客さんには気楽に来てもらいたいけど初めて行くとなるとどうしても敷居が高いと感じる方もいらっしゃるのも事実です。

こちら側がもっと若い方にも来てもらえるようにスマホで決済できる様にするとか、冊子を配るとか、若者が来るような場所で落語をやる努力は必要ですよね。時間を区切って何時以降は値段を安くするとかを末廣亭ではやっていますけどそういった工夫も大事ですよね。

寄席には明治時代にディズニーランドがあったらみたいな特有の異世界感の雰囲気もあるのでそういった部分も一緒に楽しんでもらいたいです。

落語は自由でいい!

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古典落語とか新作落語とか関係なく、その時やりたいと思った噺をパッとやってめちゃくちゃウケる。これが理想ですよね。

座布団の上に座る、着物を着る以外は自由でいいかなと思うんです。
落語はセリフしかないから「今日は暑いなぁ」とか説明し過ぎるんですよ。映画みたいにぼんやりさせる部分があっても良いのではないか、と思ってやったこともあるんですけどつまらないと言われました(笑)。
セリフで全て説明するので、説明がない部分を自分で解釈するなんて概念が落語にはありません。だから「なに意味わかんない事言ってるの?」みたいな反応で。そのあとブログでこのセリフはこういう意味で、と全部説明しました(笑)

落語は伝統芸能という部分で遅れてしまっているのかもしれません。
文化が変われば落語もそれに合わせて変わっていく事も必要だと思います。説明しすぎず、心の中を全て言わなければもっと広がると思います。

喫茶店にいる時が至福の時間

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時間がある時はどう過ごしても良いので、だからこそ自分で自分を律すると決めて行動しています。
8時間寝ると決めていて、起きるとまず子供と遊びます。1時間くらい遊んでからシャワーを浴び、それから10キロ走るんです。2年前くらい前に鏑木毅さんのドキュメンタリーを観て感化され、走り始めました。いずれ100マイルトレイルランのレースに出たいと思ってます。
戻ってきたら稽古。最近は子供の前で稽古するのですが不思議と子供が泣き止むので奥さんから落語を教えてくれと言われます(笑)
その後、家族で行きつけの喫茶店に行くんです。お店の人には落語家とは言っていないので「この人仕事なにやってんだよ」って思われてるでしょうね(笑)
家族と分かれた後は1人で別の行きつけの喫茶店に行きます。そこでネタを書いたり本を読んだりします。本を読まないとバカになると思っているので必ず図書館で数冊借りてきて読みます。喫茶店って色々な人がいて、人間観察しているとネタの参考にもなるし楽しいんですよ。コーヒー1杯で2~3時間長居するので申し訳ないですけど…。喫茶店にいる時間が1番好きな時間ですね。

笑うって特別

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5月1日新宿末廣亭を皮切りに真打興行を打ちますが、真打に昇進するからといって特別変わる事は無いんです。真打興行は打ち上げ花火なんです。みんなの注目を集めてたくさんの方に来てもらって楽しんでいただくお祭りですね。
落語を観たことが無い方や何から観て良いか分からない方には入門編としてもおすすめです。盛り上がるし、有名な噺家もたくさん出る。黒紋付での口上は観ていて面白いと思います。

自分も気負わずにやる事を重視しているので来て頂くお客様にも力抜いて楽しんでもらえれば嬉しいです。15分で入れ代わり立ち代わり噺家が出演するのでぼんやり楽しんでもらって、僕の出番だけ集中してもらえれば(笑)

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基本笑っていたいんです。自分で面白い事をして笑いたい。人の噺を聞いて
笑いたい。お客さんもそれで笑ってもらいたい。

みんなで笑いましょう!

アバンギャルド昇々

最後にYouTube「アバンギャルド昇々」というチャンネルをやっていて
「トロピカル*ストロー」という歌があるので是非見てみてください。
僕がどんな人間か分かってもらえると思います。

真打昇進披露興行

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【公演スケジュール】

公益社団法人 落語芸術協会
真打昇進披露興行


【プロフィール】
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)
1984年11月26日生まれ。千葉県出身。2007年4月 師匠の春風亭昇太に弟子入り 入門。前座名「昇々」。2011年二つ目昇進。出囃子はだんじり。その後、テレビ、ラジオの出演やナレーションなどの他、YouTubeも日々更新中。今年5月、真打に昇進。Twitter

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