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[マティス展]思い出混じりの私的感想

マティス展に行ってきました。と言うより行っていました。
だいぶ前に時間をつくって行ったんですが、まとめる余裕がなく時間がかなり経ってしまいました。5月はやけに忙しかった(え?もう6月?)。

話題のマティス展、きちんとした解説は詳しい方に任せるとして、私は例によって脱線しがちな個人的(すぎる)感想をつらつら書いてみようと思います。

少々とっ散らかっていますがご容赦を。

そもそもマティスってどんなイメージ?

なんとなく日本人はマティスが好きだという印象があるんですが(ですよね?)、それじゃあマティスと聞いてパッと思い浮かぶ絵ってどれなんだろう?と思うと、いくら考えてもわからない。(ピカソだとゲルニカとか泣く女とか?)

ふと思いついて以前母が実家から送ってくれた小学校4〜6年の図画工作の教科書を見てみたんですが、マティスは出てこない。私はいつマティスの絵を知ったんだろう(中学か高校かなあ?)。

私はどうだろうと考えると、デザインを学んで職業としてきたせいか、ヨーロッパに旅行するようになる前はマティスというとグラフィックな切り絵の印象が強かったと思います。明るくて、なんとなくハッピーで、だから野獣派(フォービズム)と聞いてもあまりピンとこない感じがずっとありました。(実は今でもあまりピンときていない)

一人の画家の軌跡を追うということ

パリでピカソ美術館に初めていった時に実感したんですが、代表作だけでなく初期からの作品を流れで見ていくと、テーマや描き方を変えていった気持ちさえ共感できる気がしてとても面白い。

パリやニース滞在中にマティスの作品に触れてはいたんですが、今回のマティス展はそういう意味でも見応えがありました。

最初のセクション。この辺最初はまだ割と淡々とした感じながら、それでもところどころ惹かれるポイントが。「ベル・イル」の空や雲の筆致や「ホットチョコレートポットのある静物」の細部の塗り方。いずれも印刷ではなかなか再現が難しいので現物を見られる幸せを感じます。

「豪奢、静寂、逸楽」は唐突に点描画ぽい作品。点というよりタイルっぽい色の集まりで線とか点線ぽさがあって、解説を読むとこの方向性はちょっと中途半端で終わったふう。こういうものも見られるのはひとりの画家を追っている展覧会の楽しいところかなーと思います。なんとなくスペインで見そうな絵だなあと変な感想を持ちました。

マティスの描く室内

マティスの描く室内はなにか不思議な魅力があります。こってりくどいくらいの室内もすっきりシンプルな室内も。

展覧会会場の白い壁に飾られた「金魚鉢のある室内」を少し遠くから眺めていたら、窓の外の光景と画家の視点である室内をその画角の外から鑑賞する私まで取り込まれてしまうような、あるいは描かれた世界がこちらまで侵食しているかのような、3つの空間がつながるような印象をふと受けました。

うまく言えないけどこういう感覚は図録やネットでは味わえないことなので、足を運んだ甲斐があるというもの。

室内のちょっとしたファブリックや装飾の独特の色合い、柄使いも妙に心惹かれます。撮影OKゾーンにあった絵を少しばかり置いておきましょう。

全く落ち着かなそうだが、こんな部屋にちょっと住んでみたい。

ニースの室内、シエスタ
グールゴー男爵夫人の肖像

エキゾチックな女性たち

「アルジェリアの女性」や「赤いキュロットのオダリスク」。実を言うと、マティスの作品の中で一番好きなのがこのあたり。

前述の通り、私のマティスのイメージは切り絵だったんですが、初めてパリで見た時に「え、こんな絵描いてたんだ」と思わず笑ってしまったのがオランジュリーにある「グレーのキュロットのオダリスク」。完成されたマティスのイメージが、この絵を見たらなんだか身近に感じてしまって。優等生のマティスの違う面を見た感じというのが近いかも……。

今思うと巨匠に対してだいぶ偉そうな感想なんですが、当時は私も悩める若者。なんかね、こう思ったんです、「なんでもありなんだな」って。この出会いは私を少し楽にしてくれた気がします。

妙に気に入ってしまって、ドイツ滞在中には弾丸旅行で何度も見に行きました。

今回来たのはポンピドゥー・センターから同じシリーズの「赤いキュロットのオダリスク」。こちらもパリでの展示の様子、うっすらと思い出させてくれました(グレーの方が好きなんだけど)。

赤いキュロットのオダリスク


それはさておき、マティスに限らず、こういう他の文化やモチーフを取り入れたみたいな作品のどことなく奇妙な、あるいは未完な雰囲気(自文化じゃないから当然といえば当然)は、ちょっと力が抜けるような感じや違和感も相まってわりと好きなんです。

彫刻もたくさん!

今回の展覧会では彫刻がたくさん来ており、彫刻と絵画ということでまとめられていました。

マティスの彫刻は絵画とリンクしていて、絵画がそのまま立体になったイメージでこれはとても面白かったです。周りをぐるぐる回ったり、同じモデルの違う彫刻を見比べたり。すごい独特なフォルムなんですよね、もしかしたら絵画より好きかも(オダリスクは除く!)。

半立体の「背中I〜IV」が並ぶ展示は圧巻。思わずスターウォーズのハンソロを思い出してしまったのは内緒です(後ろ向きだったけど)。

切り絵と礼拝堂

晩年のマティスが打ち込んだのが切り絵の作品群とヴァンスの礼拝堂。

私が持っていたマティスのイメージは晩年のものだったんですね。デザイン学生だったからかもしれません。雑誌や書籍の表紙デザインも展示されていました。

単純化された色の画面構成の世界。

そこでふと思ったのが、人は歳をとると明るいハッキリした色を好むようになるということ。微妙な色が判別しづらくなるということもあると思うんだけど、巨匠マティスもそういうところがあったのかなあ(もちろん体のこともあっただろうけど)。それともいろんな色を長年扱ってきた到達点なのか。いずれにしてもとても力強いのは確か。体に制限ができても、方法を見つけてさらに表現の場を広げていくところは素晴らしい。

そして色に加えて光を自在に扱った大作、ヴァンスの礼拝堂。

パリに滞在していた時、小旅行でニースからここを訪れたことがあります。礼拝堂で聞いた説明では何度も「lumiére(光)」という言葉が出てきましたが、その話の通り、礼拝堂の中は明るい光で満ちていて、色とりどりの透過光が美しく輝いていました。これは反射光で見る絵画とはまた違う美しさです。

そうして室内に映し出された光は時間の経過とともに表情を変えていきますが、観光で訪れただけでは見るにも限界があります。今回の展覧会では朝から夜までの映像が流れていて、その移り変わりを見ることができました。(夜の光景が大変かっこいい!)

ヴァンスの礼拝堂に足を踏み入れた時、対照的に思い出したのがパリのノートルダム寺院でした。広く暗い空間へ外からの光がかなり限定的に、神秘的かつ効果的に差し込んで、特にクリスチャンでもないのに「神様いるかも」と思わず信じてしまうような感銘を受けたのですが(そのように設計されているんでしょうが)、ヴァンスの礼拝堂はそれと正反対。神のための空間というよりは、そこに集う人々のための癒しの空間という印象を強く受けました。

図録と展覧会グッズ

大きな展覧会だけあってグッズがたくさんありました。

マティスの作品は非常にグッズと相性がいいですね、かなり映えます。私は定番のクリアファイルとポストカードを購入しましたが、他にも衝動買いしそうなものがいっぱい。いいなあ、私もマティスのグッズ、デザインしたい。

図録と朝日新聞記念号外

図録は色の違う表紙で数種類あったので、図録にしてはちょっと変わってるなと思った少しスモーキーなペールピンクのものを買いました。時間がなくてまだあまり見ていないんですが、パラっとめくったらオダリスクのモデルのセットの写真などもあり、読むのが楽しみです。

出口付近にはピンズのガチャもあって、せっかくなので私もガチャッ。お金を入れたはいいけど出し方がわからなくて近くの人に聞くという和やかな一幕も(結構みんな聞いてた)。

ガチャは1回500円。

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