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おすすめの美術図書(?) カラーコーディネーター検定試験2級公式テキスト

1月から参加しているnoteのメンバーシップ「オトナの美術研究会」の月イチお題記事執筆企画。今月のお題は「おすすめの美術図書」。

前回まではお気に入りの美術館とか思い出の展覧会とか、自分中心で暴走できましたが、「おすすめ」となるとちょっとニュアンスが変わってきますね。

たまには真面目におすすめしてみようと思います。カラーコーディネーター検定試験2級公式テキスト(美術図書と言えるのかどうかはちょっとわかりませんが)。


資格試験

いきなり余談から入りますが、ここ10年ほど、いろんな資格に挑戦しています。資格を取ることで就職に有利に、とかいうことはさすがになく、きっかけがあって受けてみたら意外と良かったので、興味がある分野のものがあれば受けてみています。

良さというのは、まずその分野を一通り知ることができるということ。大抵の場合、テキスト1冊を勉強すると流れや全体像が掴めるんですね。あとは試験がないとなかなか勉強しないのでモチベーション維持のため。

合格すると忘れてしまうことも正直多いんですが、一度勉強したことなので、何かの時にはそういえば…と調べなおしたりすることもできます。

全然違うことに取り組んでいく中で知識が急につながっていくことも。

改訂前のカラーコーディネーター


東商のカラーコーディネーター試験は数年前に改訂となり、2つのコースに集約されました。私が受けたのは改訂前。3段階に分かれていたせいか、色についての教養もだいぶ含まれていたと思います。

3級は色を認識する仕組みなどから入る基本知識。最上級の1級は3分野に分かれており、ファッション、商品色彩、環境色彩(私は商品色彩を取りました)で、より専門的な内容でした。ここはたぶん色に関わる仕事についていなければいらないレベルかも。

中間の2級のテキストがいろいろ網羅されていて面白かったので、書いてみたいと思います。

デザインとカラーの歴史

5章あるうちの1つでボリュームは1/4弱なのですが、読み物として一番面白かったのが第2章の色彩の歴史的展望と現状

近現代のデザインとカラーの歴史では、19世紀の建築物やオートクチュールから始まり、アールヌーボーなどの装飾的な芸術、20世紀の自動車のデザインなどなど、各分野にわたって、もちろん色にも着目しながらざっと流れがつかめるようになっています。

先史時代から近世までの色彩文化史も別途まとめられており、こちらは前の項よりも色彩に特化した内容。「黒は17世紀の流行色であった」とか、「18世紀のフランスでは白が流行色であった」とか、絵画などを取り上げながら、その時々の流行色も紹介されていて、絵を鑑賞するときに思い出すと楽しめそうです。

それぞれの視点から色を見る


2級テキストではこのあと、生活者の視点、生産者の視点、カラーコーディネーターの視点、と3方向から色について考えていきます。

生活者の視点では、主に色の見え方。色(の状況)が見え方にもたらす影響はトリックのようでとても面白いです。わかりやすいところで例えば小さなサンプルから選んだ壁紙を実際に貼ってみると印象が違ってしまったという面積効果などは、実生活でも活かせるところ。他の効果も図版付きで解説されており、ちょっとわかりにくいものもあるんですが、受験しないのであれば面白そうなところだけつまみ読みできます。もちろん、カラーユニバーサルデザインについても書かれています。

生産者の視点の項では、少々マニアックな世界に突入します(東商の資格だから実は王道なんですが)。色の測定などはテキストだけで理解するのはちょっと難しいと思うし、普通の人は必要ないと思うので、ここで読むとすれば染料顔料についての色材の項でしょうか。覚えなくては!というプレッシャーがなければ、面白く読める箇所と思います(マニアックなので個人差ありそうですが!)。

カラーコーディネーターの視点では、いきなり調査の方法や心理測定法が出てくるので(変数とか関数とかいう言葉も出てきて、受験の時は苦戦ポイント)一瞬本を閉じたくなるのですが、色彩の心理的効果は突然読みやすくなり、誘目性視認性可視性など、普通に仕事をしていくだけでも着目すべきポイントが並んでいきます。

実際にデータや日本色彩研究所の資料も示されており、色の連想語国別嗜好上位色の表は興味深くじっくり見てしまいます。日本人の色の好みの傾向、年齢や性別での色の好まれ方についても触れていて、個人差はあるとは言え参考になります。配色についても整理されて、写真と共に紹介されています(この辺が一般に「カラーコーディネート」からイメージする知識ですよね)。

色を把握するガイドとして


前述の通り、資格は改訂してしまったので、これで合格を目指せるというのはなくなってしまったんですが、逆に興味のあるところだけを気楽に拾い読みするのがおすすめ。以前のテキストなので、資料がちょっと古いなどあるかもしれませんが、文化や産業の中での「色」の全体像を把握するには良い一冊だと思います。(私に何が似合うかしら…という内容はないのでご注意を)

Amazonでもまだ売っているようですが、資格勉強が絡まないとちょっと高く感じるかも(読まないところも多そうだし)。メルカリでも結構出ているようで、こちらは1,000円以内でも買えるみたいです(改訂前のだからかな)。

改訂後はどうなんだろう?と思って目次を見ると、2つに統合されてより実務に寄った印象が。もしかしたらいろいろ端折られているのかな?という気もしますが、1級の内容(ファッション、プロダクト、環境)も少し入ってきているようなので、おおまかに把握するにはこれはこれで良いのかもしれないですね。

(目次を見た限りでは以前より普通の資格ぽくなったような気もします。今度本屋で見てみよう……)

おまけのもう1冊

都立職業能力開発センターで受けた3級対策講座で教えていただいたんですが、「日本の269色」という本もおすすめ。

これはJIS規格の色名の色見本を文庫サイズにまとめたもの。卵色や若草色、小豆色など、よく使う色が実際にどんな色か確かめられる便利な本。カーキやベージュなど、認識がずれやすい色も載っています。1ページに2色ずつの見やすい構成で、JIS規格だから対外的にも基準にしやすいです。(ありがたいことにCMYK値も載っている)

色についてのサクッとした簡単な解説もついているので、疲れた時にぼんやり見るのも良いかも。

日本の269色―JIS規格「物体色の色名」 /小学館文庫(絶版と思ったら電子書籍も出ているみたいです。中古も安く出ています)

会話に色名がよく出てくる人(特殊?)にはおすすめ。

カバーはコテコテなのでとってしまいました…


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