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おばあちゃんへの手紙14-1


翌朝、
朝食をバイキング形式でとると
早々に支度をして出発した。



本日最初のお寺は、
言わずと知れた四十五番札所岩屋寺だ。

眼前に聳え立つ岩峰の麓を
分け入るように登っていく。


堂々たる岩肌が天高く視界を埋めている。


朝日を受けて煌々と輝くその様に、
神妙の感がふつふつと湧いてくる。

歩を進めつつ、
辺りを包む樹々を見上げれば、
かすかに揺れる枝葉を抜けて
光の粒子が降ってくる。

境内の入口、山門に到着するまで
大人の足で20分ぐらいはゆうにかかる。

ちょっとした山行のようなものだった。


いよいよ山門をくぐる。


この寺の由来によると、

元々は法華仙人が行場としていた岩山だったが、

仙人は仏法に帰依してこの山を献上し、
往生したいと弘法大師に伝えたところ、

大師は木像と石像の二体の不動明王を刻み、
堂を建て一山を開基。
これに応えたという。


ゆえにこの岩峰には
弘法大師の名残が数多くあるらしい。


石段を登り、
不動明王像、地蔵尊とゆかりの石仏を眺めつつ
しばらくすると、
右手に穴禅定と呼ばれる洞窟が現れる。



ここに、
弘法大師自らが掘られたという
「独鈷の霊水」と呼ばれる清水が湧出しており、
手水場に引かれているため、その清らかな水で
ありがたく手先と口元を清め参拝に向かう。


さらに石段を登りつつ歩を進めると、
本堂、大師堂が並び立つ敷地へと誘われる。

いつものように
勇一をはじめ子供達は
どんどん先に進んでいて、
すでに本堂前に到着しているようだ。


私は細君とその境内をゆっくりと散策しながら
悠長たる面持ちで、

時に神域の静けさに佇んだりしながら
進んだため、だいぶ遅れて本堂に登りついた。


「おやっ」思わず私は細君と顔を見合わせた。

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