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おじいちゃんありがとう

あとがき




小学生の少年勇一は、

生粋のおじいちゃん子だ。



友達と流行りの遊びをしてはしゃぐことよりも、

日々を物静かに過ごし、
淡々と生活をくりかえす
おじいちゃんのそばにいることの方が、

何よりの喜びだった。



そんなおじいちゃんとの思い出を巡りながら、

勇一の心がじわじわと広がり、
成長していく様子が描かれている。



第一章では、

夏の水元公園の森の中、
セミの幼虫の羽化と出会うことで、

未だ自分の知らない世界があることを
知っていくと同時に、生命の
生きることへのひたむきさを目の当たりにする。


第二章では、

南蔵院しばられ地蔵の
ぐるぐるに縛られたその御姿から、

お願い事の本質を垣間見る。



第三章では、

すべてを静寂に包み込む雪の中で
祖父と勇一の心がシンクロする。



最後の章では、

祖父の死に際して、
祖父の少年時代に起きた
東京大空襲について聞くことで

自分の命への自覚を強く持つに至る。


祖父との友情が勇一に残してくれたものは、

何物にも代え難い人生の宝物だった。




あらゆる出来事に良いも悪いも存在しない。



あるがままに受け入れ、
そのものとひとつになっていくことで


時間の世界を超越し、
すべてがかけがえのない存在に変わっていく

という魔法のような感覚であった。

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